この輝きは主人公補正であろうか?
「ユウミンを助けて下さりありがとうございます!」
光り輝く花に囲まれた中庭。円卓には肉を小麦粉で蒸した料理や、魚介類が入った炊き込みご飯が並ぶ。
そして茶を運んできたのは金髪の好青年。
煌々と輝くブルーの瞳。紅色の唇からはいわゆる『綺麗事』しか出てこない。
眩しい。眩しすぎる。
なんだこの男は。
これが主人公か。
眩しすぎて後光が見えてきそうだ。
「これは心ばかりのお礼です。どうぞ好きなだけ召し上がって下さい」
「感謝する。ところでサランさんも『流転天仙』について調査していると聞いたが」
「はい。最近ティエン・シャンでは一日に降る胞子の量が増加しています。それに伴い肉体が
「腐化?」
「簡単に言うと寿命を迎えるのが早くなったということです。仙人は三百歳に近づくと体の一部が動かなくなり、やがてそれが全身に広がり死に至ります」
お茶を運んできたユウミンも口を開く。
「それが近年になって生まれつき体が腐化している子供が産まれるようになりました。私の目も腐化の影響で生まれつき見えません」
「なるほど。それで蓮桂樹を管理している流転天仙について調べていると」
「はい。このままだと我々仙人は絶滅してしまいます……」
「ティエン・シャンの知事はなにもしていないのか?」
ユウミンは首を横に振る。
「いいえ。実を言うと殆どの仙人はこの事実を黙認しています。蓮桂樹の胞子を止めることは自ら長寿を放棄することを意味しますから」
なるほどね。
蓮桂樹の弊害に悩ませられながらも、蓮桂樹の恩恵は捨てられないか……。
「大体の事情は分かった。実は我々も流転天仙について調べるように命じられている。理由は話せないが……良ければ共に調査をしないか?」
サランとユウミンが視線を通わせる。
「えぇ、喜んで。ただその前に一つだけ質問させて下さい」
「構わない」
「どうして一般市民である私達に協力して下さるので?」
「我々はティエン・シャンに詳しくは無い。つまり現地人である君達が居れば心強いだろう」
こちらが返答すると、現地人二人組は目を輝かせた。
「「任せて下さい!」」
純粋無垢な子供達だなぁ。
これが将来帝国を打倒する英雄になる様子が想像出来ない。
将来的に対峙する可能性がある彼等と関わることはこの上なく危険であるが、逆に考えれば今のうちに味方につけておく事も得策だ。
先ほどから呆れた表情を浮かべるシドが茶杯を円卓へ置く。彼の前に並べられた皿には魚介類ばかり食べ残されていた。
魚介が苦手なのだろうか。
「ガキ共を連れて行くことは百歩譲って良しとして、どうやって流転天仙とコンタクトを取るつもりだ?」
シドの疑問も、もっともだ。
数百年間霧の中で引きこもっている
いや、その前にシドも見た目は
「その心配なら無用です。僕に良いアイディアがあります」
私の代わりに天真爛漫な声で返答したのはサランであった。
「それよりも皆さん好きなだけ追加注文して下さい」
本来ならばここで遠慮するべきだろうが、たまには羽を伸ばしてもいいだろう。
「僕は遠慮しておくよ」
張り切る私とは裏腹にシドは冷たい一言を放った。
「もう満腹か?」
「いいや、僕には味覚や痛覚が無いんだ。だから何を食べても変わらない」
「その割には魚介類ばかり食べ残しているみたいだけど」
青い瞳が気まづそうに視線を逸らす。
「私からしてみればシドは至って平均的な人間に見えるが」
「はいはい。分かったよ。赤ワイン一杯」
追加注文しろとは言ったけど、飲酒をしろとは言っていない。
「分かった。アステルさんとルイーズさんの分も必要ですか?」
「私は未成年だから茶で十分だ」
私が口を開くと、ルイーズが怒涛の勢いで右手を挙げた。
「ルイーズはアステル様のお姫様抱っこを所望しまーす!」
残念ながら、そちらは非売品です。
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