序章〜printf("待ちわびた日々.¥n");
女神なんかいねぇよ
『……本艦はまもなく……星系ワームホールを抜けシムクルスターに到着致します』
ノイズがかった女性の声が響く。うっすら目を開けると、誰かに肩を揺さぶられた。
数回瞬きをし、目を凝らすと見覚えの無い風景が広がっていた。
天井を覆う青いモニター。
そこに映る未知の言語。
そして新幹線のように並ぶ座席には明らかに人間では無い生命体が並んでいる。
極端に白い肌と羽がついた妖精のような人、身体中に目がついた人、中には明らかに宇宙人のようなヤツもいる。
極めつけは座席に隣接した窓から見れる景色だ。外に広がっていたのは漆黒に染まる未知の風景。
黒い空間に星々が散りばめられた――わゆる宇宙空間。
――まさか宇宙船に乗っているの?
なんだこの状況は。夢か?
漫画や小説で『気づいたら病院』という展開は良くあるが、『気づいたら宇宙船』というパワーワードすぎる展開など聞いたことが無い。
「アステル。もうそろそろ到着だ」
座席から立ち上がって船内を探索しようとしたところ、先ほど、肩を揺さぶってきた男性に話しかけられた。
未確認生物だらけの船内だが、ウェーブかかった銀髪と青い瞳を持つこの男性だけは人間に近い容姿をしている。
「貴方は誰?」
こちらの問いかけに対し、男性は困った表情を見せる。
「まだ寝ぼけているのか?」
「もしかして誘拐犯?」
「こんな大衆が集まる場所で堂々と誘拐した子供を連れている犯罪者が居てたまるか。早く荷物をまとめなさい。空港には悪い人が沢山いるから長居は出来ないよ」
足元を見ると子供用のリュックサックらしきものが置かれていた。
触れてみると今まで触れたことがない未知の素材で作られていることが分かる。
膝の上に置かれた人形を入れるべく、リュックサックに入れる。
中には子供用の服やら、生活用品が入っていた。
まるで家出を目論む子供になった気分だ。
――いや、待て。子供?
嫌な予感がする。恐る恐る己の腕や足を確認すると案の定、幼児のごとき小ささになっていた。
「やっぱりロリコンの誘拐犯?」
隣から呆れたような男性の声が響く。
「だから違うと言っているだろう。というか何処でそんな単語を覚えた?」
さて、どうしてこうなったのか?
理由を解明するにはここで目覚める前、まだ私が病院のベッドに横たわっていた頃まで遡らなければならない。
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