第13話『準備』

前回Cランクに昇格した傑。


Cランクに上がることにより、様々な権利を獲得することに成功した。


果たしてこの先傑はどうなるのか?世界を救うまでの道のりを進み続ける彼に運命は微笑むのか。


傑達の活躍をご照覧あれ!


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《ギルド内》


クーリ「はい!今回はみんながCランクに昇格したからお祝いだから俺の奢りで好きなだけ食べて良いからね〜♪それじゃみんなコップ持って〜乾杯〜!」


「「「「「かんぱーい!」」」」」


現在俺たちはランクを上げるための試験に合格したお祝いで試験官のクーリの奢りでギルドの酒場で飯を食っている最中である。


傑「や〜、知らんかったけどここってお酒飲める歳結構低い感じなんだね。まぁ俺は水飲むけどね。」


イフ『まぁ、酒飲まないとやってられない仕事だからね。アルコール万歳の精神だよ。私もお酒好きだからね。』


シズク「ねぇねぇスグル。僕さっきの試験で手伝ったんだから魔力ちょうだーい。OKじゃなくても勝手に吸うからね。」


シズクは素早い動きで俺の首にまとわりつき魔力を吸い始めた。エネルギーが抜けてとてつもない脱力感が襲う。


クーリ「傑くん大丈夫かな?にしてもそのスライムよく君に懐いてるね。酒場でいきなり魔力を吸い始めるのは驚きだよ。」


傑「ま、まぁ懐いてくれてるんすかねぇ?そこら辺はあんまり分かんないですけどね。」


だってこいつ俺のことめっちゃ貶すんだもん。俺の仲間はホントに仲間か?ってなるくらいには俺を虐めてくるからな。悲しい限りだ。


シアン「そういえばみんなはこの後どうするの?何もすることないなら一緒にやって欲しいことがあるんだけど」


テオ「なんだぁ?まぁ、特にやることもねぇから内容次第では付き合ってやらんこともないけどな!」


リア「私はどっちでもいいわ。付いてこいって言われたら行くし、行かなくていいなら行かない。」


メルナ「私は手伝うよ〜!共に試験を突破した仲だしね〜。にひひ〜♪」


傑「あ〜、みんな結構モチベーション高い感じなのね?俺だけハブられるのは悲しいから俺も手伝おうかな〜。」


ここいら辺で友好度を上げといたら俺が困った時助けてくれるかもしれないからな。恩を売っておくのは大切なのさ。


クーリ「俺はやる事あるから手伝えないかな。ごめんね。今度また時間があったら相談とか乗るからさ。」


シアン「Aランクともなると忙しいですもんね。……それで他のみんなに提案なんだけど……【ダンジョン】に行かないかい?」


【ダンジョンの解説】

・この世界の至る所に存在する不思議な空間であり冒険者の主な仕事場でもある。


・ダンジョンには魔物が一定時間経つと出現する。ただしダンジョン内の魔物が出現する数には制限があるらしく、一定数達したら増えることは無い。


・ダンジョン内の魔物は外に出ていき、周囲に被害を与えるので定期的に狩る必要性がある。そのため冒険者はダンジョンに派遣されることが多い。


・ダンジョン内には宝箱がランダムで設置されており、中には有用な物品が入っている。しかしたまに罠の場合もある。


・ダンジョンの1番奥のフロアには強力な魔物、所謂ボスモンスターが配置されている。

ボスモンスターを撃破すると魔石と一緒にそのボスモンスターに関連したアイテムを落とすらしい。


傑「えーっと、ダンジョンってあのダンジョンだよな?」


シアン「そのダンジョンだね。Cランクだとダンジョンに入るために最低4人以上で行かないと行けないからね。君たちにも協力して欲しいんだ。」


ん〜、まぁ俺も興味あったから別にそこはいいんだが、ランク上がりたてでいきなりダンジョン潜るやついるか〜?急ぎすぎちゃう?


テオ「別いいけど生半可な気持ちで行ったらすぐ死んじまうからな?行くにしてもしっかり準備してからだぞ。」


おー!テオくん!見た目と口調から生意気でプライド高めの人かと思ってたのに結構まともなんだね!人は見た目で判断しちゃあかんね!


テオ「ん?なんだお前。なんでこっちジロジロ見てくるんだよ。キモイぞ。」


テオに関心してジロジロ見てたら気味悪がられたらしく罵倒されてしまった。俺のメンタルに100ダメージ!


リア「ダンジョンで必要なものはポーション、武器、防具等。今日は必要な物を買って明日行くってのが1番いいわね。」


シアン「じゃあこの後は各々自分に必要なもの、仲間に必要なものを考えて準備しようか。」


ダンジョンに行く計画を立てつつ、飯を食べ進め、全員が腹が満たされたあたりでギルドを出て、明日の昼にまたここに集合すると約束し、その場で解散した。


傑「はぁぁ……やぁ俺にも計画ってもんがあったんじゃが、でもあの場のノリ的に行かないって言ったらちょっと感じ悪いよなぁ。」


シズク「そんなに後悔するくらいならやめとけば良かったのに。人間ってめんどくさいこと気にするよね。」


イフ『まぁ人間以外でもこんなことになるのは珍しくないけどね。陰キャはどの種族にもいるんもんだよ。』


シズク「それで準備する云々話し合ってたけどどこに行く予定なの?」


傑「あー、行く場所はもう決まってんだよ。それにそろそろ会いに行かないとイカンしな。」


そう言いつつまず俺が最初に向かったのはルピスが経営している薬屋だ。



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《森の薬屋》


傑「お邪魔しまーす。」


俺はゆっくりとドアを開き、店の中に入っていく。ちなみに今は客が少ない時間帯のようで俺以外だと2、3人くらいしか確認できない。


ルピス「おっ、客か?いらっしゃい。ここは街1番のポーションが売ってる店じゃ。儂のために金を落としていってくれ……ってお前さんか。」


傑「あれ?俺のこと覚えてたんですね。」


ルピス「お前さんは初対面からインパクトが強かったからの。そうそう忘れんさ。……それで?今度はなんの用じゃ?もう金は貸さんぞ」


傑「違いますよ。金返しに来たのと、ポーション買いに来ました。出来れば何か有用なもんも売って欲しいです〜。」


ルピス「いきなり来て強欲じゃのぉ。まぁ金を落とすなら儂もとやかくは言わんが。それで?何が欲しいんじゃ?」


傑「えーっと、赤と青のポーションをそれぞれ5本ずつ。計10本。それでダンジョン攻略に役立ちそうなやつを売ってくれ。」


ルピス「なんじゃお前さん、ダンジョンに行くのか?冒険者になりたてなのにそんなに生き急ぐといつか大変な目にあうぞ。」


いや、そんなこと言われんでも分かってるわ!でも誘われたんだもん。断わりづれぇよ陰キャくんはこういうのに弱いんだからァ。


ルピス「とりあえず赤と青10本で2000Gってとこじゃな。ダンジョン攻略で役に立つものは……【護符ごふ】とかどうじゃ?」


傑「護符?」



【護符の解説】

・アイテム名:護符ごふ


・特殊なお守りで魔力を一定量流し込むとランダムで効果がつく。運ゲー要素強め。


・様々な効果が秘められており、1度だけ攻撃を防ぐ物や炎に耐性がつくものなどがある。たまに自分にデバフ効果を与えるものも存在する。


イフ『護符はなんか自分の運を試してる感じがして楽しいんだよね。でも結構高いし、しかも効果しょぼいのが大半。』


傑「あ〜、ガチャかぁ。ちなみおいくらですかね?」


ルピス「そうじゃのぉ。売れなくて困ってたっていうのもあるから半額の5000Gで売ってやろう。」


ってことは護符ガチャ1連につき本来なら10000Gってことぉ?クソガチャじゃん。こんなやるやつおる?



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ルピス「購入感謝じゃのぉ。」


ここにいました。無様にも買ってしまいました……でもしょうがなくない?ガチャ要素あるって言われたらねぇ。やりたくなっちゃうよね〜!


シズク「だ、大丈夫?結構痛い出費な気がするけど?」


傑「大丈夫だ。また稼げば何とか。……今そんなことより!これで俺はすごい効果を引いて無双チート系主人公になるんだぁ!」


そういうと俺は護符に魔力を込めた。すると護符は輝きはじめ、ある程度魔力を注ぐと純白の護符が燃え盛るような赤色に変色した。


傑「お、おぉ〜?これどうなんだ!?分かんねぇぞ!いい効果なのか!どうなんだ?ルピス見てくれ!」


ルピス「分かった。……ふむふむ。この護符の効果は『寝癖がつかなくなる』ってとこじゃな。」


傑「……………………………………………………ふぁっ?」


え?いやいや……そんな微妙なことある?いや、便利だけどダンジョンで全く使えない。え〜……リアクション困るぅ……


ルピス「うーん、なんて言えばいいんじゃろうな。……どんまいじゃ!」


傑「oh……No……」


その後俺はポーションも合わせたお金をルピスに払い、トボトボと次の目的地へと歩を進めていた。


傑「そういや俺って突然車に轢かれるくらい運がなかったんだったわ。……はぁ、また金貯めてリベンジだなぁ……」



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《炎鉄工房》


3日前くらいに武器の制作を依頼して今日完成するとのことなので、受け取りに来たのである。


傑「グレムさーん!武器受け取りに来ましたよー!」


そう言って俺は工房の扉をリズミカルにノックする。木製なのでなかなか小気味いい音が出る。


テナ「ちょっ!誰っすか!うるさいっすよ!今から開けるんでノックするのやめてくださいっす!」


そう言われたのでノックを止めると扉の隙間からテナが顔をチラつかせた。


テナ「……ってスグルさんっすか。別にそんなに勢いよくノックしなくても聞こえてるっすから次からはしないでほしいっす!」


傑「いや、ごめんごめん。やっぱり扉が当たったら叩きたくなるのが人間の性だと思うんですよ。」


シズク「え?そうなの?人間って怖いね」


イフ『ちょっとスグルくん?シズクに間違った知識を与えるんじゃないよ。人間そんなに奇っ怪な行動はしないから安心してね。』


テナ「それで、要件はやっぱりアレっすか?完成してるんで奥に来てほしいっす!」


テナに袖を捕まれ、店の奥へと連れ込まれていく。そしてこの前も見た鍛冶場へと繋がる鉄の扉の前までやってきた。相変わらず鉄を打つ音がする。


テナ「おーい師匠ー!スグルさんが来てるっすよー!いい加減作業やめて休憩しましょー!」


テナが扉越しに呼びかけると音が止み、頑丈な鉄の扉がゆっくりと開いた。そして扉の奥から仏頂面の顔を覗かせた。


グレム「……来たか。じゃあ完成した剣と胸当てを見せてやるから売り場の方に行くぞ。」


グレムの後ろを着いていき、武器や防具が陳列されている売り場の方に戻ってきた。そしてグレムは武器を取りに行ったので椅子に座りながらのんびりと待機する。


傑「いやはや、自分だけの武器となる胸踊りますなぁ。心臓がばくんばくんしてテンションアゲアゲですよデュフフフ!」


イフ『キミの笑みってなんかちょっと気持ち悪いんだよね。なんか性犯罪犯してる連中と同種の目って感じ。』


おい!さすがにそんなことはないだろう!……ないよな?冗談……ってことにしとくか一旦。


テナ「そういえばスグルさんってなんで冒険者になったんすか?急に気になったんで質問してみたんすけど気に障ったらごめんなさいっす。」


傑「ん?俺が冒険者になった理由?」


ん〜、世界を救うためってのもあるし、みんなから金を稼ぎたかったからってのもある。でも1番の理由は……


傑「憧れたんだよ。その命を燃やして人のため世のために動く姿に俺は胸を打たれたんだよ。…………ってそんなカッコイイ理由なわけないんだよねぇ。」


シズク・テナ「「へっ?」」


急な方向転換にシズクとテナはあっけらかんとした声を出す。


傑「俺は単にチヤホヤされたい!めっちゃ凄いって言われたい!褒めて欲しい!そんな不純な理由だ!たいそうな野望掲げてるなんて俺の性にあってねぇわ。」


イフ『あははっ♪やっぱりキミ面白いねぇ。見てて最高に笑えるよ。』


テナ「自分はそういうのもいいと思うッス!自分の欲に正直になるのは大事っすから!」


グレム「おーい、お前ら何話してんだー?武器と胸当て持ってきたぞー。ほらっ、これだ。」


グレムが店のカウンターの上に置いた直剣はあまりにもかっこよく男心をくすぐる。刀身は光を反射して輝いており、素人目からも切れ味が良さそうというのが何となく分かる。


胸当ては特に解説することもないな。硬そう。以上!


傑「ふぉおおおおお!きちゃあああ!」


俺は自分の武器が目の前にあるというあまりの嬉しさに飛び跳ねていたが、グレムに肩を叩かれる。


グレム「喜んでるとこわりぃんだが、金払ってくれるよな?」


その言葉は喜びの絶頂にいる俺を現実にたたき落とした。もう少し喜びを感じさせてくれても良かったんじゃなかろうか。俺はそう感じざるをえない。


傑「……はい。10000Gですぅ……うぅっ」


グレム「毎度あり。それじゃ、さっさと出ていけ。俺は仕事で忙しいんでな。」


テナ「また会いましょうッス!」



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《宿屋》


そして俺は剣を手に入れた嬉しさと金を失った悲しさで心がぐちゃぐちゃになっていた。


傑「あぁ……もう金がねぇ……あぁ!もうこうなったらダンジョンで稼いでやるよオラっ!今日失った17000Gを回収してやるぅ!」


イフ『まぁとりあえず今日は寝ようよ。明日はダンジョンに死にに行くんだから体を元気にしておかないとね。』


サラッと不穏な事を言われてしまった。ホントにコイツ仲間か?もっと応援の言葉を……まぁいいや。寝るか。



こうして傑は明日に備えて宿屋の硬いベットで就寝するのであった。明日はダンジョン遠足……無事に生き延びられるだろうか



次回へ続く

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