第14話『小人の洞穴』
前回ダンジョンに行くことになった傑。
ダンジョン攻略に必要そうなものを買い集め、所持金がほぼ0になってしまった傑。
初めてのダンジョンで傑はどのような体験をするのだろうか?そしてその先で得られるものとは?
傑達の活躍をご照覧あれ!
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《ギルド前》
傑「うへぇ……金ねぇから朝食食えなかった……やっぱりガチャは良くないってことを再認識したわ。」
シズク「いや、でもそのおかげでいつも付いてる寝癖は無くなってよかったね。」
傑「ま、まぁ確かに?……いや、でもさぁ単発10000Gはぼり過ぎだと思うんすよ。しかも効果は寝癖がつかないってだけ。櫛買った方が何倍も安い。」
イフ『まぁ、しょうがないよ。また買えばいいいんじゃない?』
傑「次は良いの当ててやるからな!だから今日のダンジョンで沢山稼ぐ!宝箱から良いのが出るのをお祈りするしかねぇなぁ。」
シズク「そーいえばどういう仕組みでダンジョンでお金稼ぐの?いつも通り依頼を受けて報酬を貰うって感じ?」
傑「それもあるんだが、別枠でダンジョン回収したアイテムやら魔石等は自分で使うかギルドに売るかを選べるんだよ。いい質の魔石やアイテムはかなりの値段で売れるからそれを狙う!」
ダンジョンで夢の一攫千金を達成してやる!目指せ億万長者!そんな未来に思いを馳せていると前から歩いてくる男が見えた。
シアン「あれ?もう居たのか。てっきり僕が1番かと思ってたのに。」
傑「あー、まぁ待ち合わせは早い方がいいだろ?って言っても1時間前からスタンばってるのはやりすぎな気がしないでもないが」
シアン「最近暑いし、日に当たらないようにしといた方がいいよ。まぁいいか。君とも話してみたかったし、隣失礼するね。」
そういうとシアンはベンチに腰をかけている俺の隣に座ってきた。正直話すことなんてないんだがどうしたもんかと考えているとシアンが口を開いた。
シアン「いきなりで悪いんだけどさ。もし良かったら僕の友達になってくれないかい?」
傑「……………………ふぁっ?」
こいついきなり何言ってんだ?さすがにいきなり友達になろう宣言は余程の陽キャじゃないと即答できねぇんだわ。
シアン「あっ、ごめん。いきなりこんなこと言われても困惑するよね。なんというか僕、今まで同年代の男と話す機会が少なかったからさ。距離感が分かんないんだ。」
男友達が少ないのか……ってかその言い方だと女友達は多いのか?まさかコイツ……ハーレム野郎?ハーレム野郎なのでは!?
傑「ま、まぁ……困惑したけど友達になるくらいなら全然いいぜ!じゃあ、これからよろしくな。ほれっ、友情の握手だ!」
そう言って俺はシアンの前に手を差し出した。なんかこういうのあった方が友達になったって感じするじゃん?
シアン「ありがとう。こちらこそよろしく」
そうして俺たちは男同士の友情証明の鉄板である固く握手が行い、幸せなハッピーエンドを迎えたのであった。
【完】
リア「……来たはいいものの、いったいどういう状況なの?」
シアンと固い握手をしている間にリアがやってきたようだ。俺とシアンが互いに見つめあって握手しているという変な絵面に困惑している様子。
シアン「どういう状況と言われても……う〜ん、男同士の友情が芽生えた瞬間ってところだね。特にやましいことでもないから安心してよ。」
リア「そ、そう……大丈夫よ……今からダンジョンに行くメンバーのおかしな様子を見たって私は動じたりしないもの。」
傑「いやそれは引いてるやつやないかーい。メンバーがこれで大丈夫かと不安になっとるヤツないかーい。」
それに心なしか先程よりも少しリアと俺たちの距離が離れている気もする。いや気の所為じゃないな。どんどん下がってる。
メルナ「あれー?リアちゃんなんで集合場所から遠ざかってるの〜?」
リア「ちょっとメルナっ……あんまりベタベタしないでよ。暑苦しいじゃない。」
メルナ「またまた〜私に抱きつかれて嬉しいんじゃないの〜?リアちゃんは素直じゃないところあるからね〜」
メルナはリアのことをまるで木にしがみついているコアラのように抱きしめている。リアも満更でも無い様子。
どう見ても初対面同士の馴れ合い方じゃねぇよな。ってか百合かぁ……いいですねぇ!美少女同士のイチャイチャは目の保養になるわたち
シアン「あれ?君たちいつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
メルナ「あれ?言ってなかったっけ?私とリアちゃんは生まれ故郷が同じで昔から友達なんだ!」
そうだったのか。通りで仲が良いわけだ。
シアン「そういえばそろそろ集合時間だけどテオくんはちゃんと来るのかな?何となく豪快に寝坊してそうな気がするけど」
傑「それな」
リア「同感」
メルナ「分かる〜」
イフ『みんなテオくんのことはあんまり知らないはずなのに絶対遅刻してくると確信しているこの妙な信頼感はなんだろうね。』
いやまぁ、時間通り来るか来ないかで言ったら来なさそうな感じするやん?っていうかそういうキャラじゃん?
《30分後》
集合時間から数十分オーバーしたあたりで大声を出しながらこちらに向かって全力疾走してくる男が見えた。
テオ「うぉぉぉぉおおおー!!遅刻してすまぁぁぁぁん!!!」
メルナ「遅いよぉ!何してたのッ!」
テオ「はぁ……はぁ……いや、すまんっ!……昨日徹夜で訓練してたから寝坊しちまった!」
シアン「まぁ、別に少し時間が過ぎただけだし、気にしてはないよ。そんな時間厳守って訳でもないしね。」
傑「そうそう。みんなあんまり気にしてないからそう焦るなって。そ・れ・よ・り・もだ。とりあえずダンジョン行く上での確認しとこうぜ。」
リア「ここだとあれだからギルドの中で話しましょう。こんなに日差し強い中、立ちっぱなしは辛いから」
とりあえず全員集合したのでダンジョンでの作戦を話し合うためにリアの提案通りギルドの中へぞろぞろと入っていった。
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《ギルド内》
傑「それで?今回俺たちが行くダンジョンってどこなんだ?そこのところ詳しく聞いてなかったから説明してくれよ。」
シアン「じゃあ今から説明させてもらうね。僕たちがこれから行くダンジョンの名前は【小人(しょうじん)の洞穴(ほらあな)】別名【初心者ダンジョン】だね。」
なんか名前だけでチュートリアル感がある!ゲームだったらここに最初に行くように誘導されるやつや!
シアン「その小人の洞穴はとある崖に生成されていて、崖の中を掘り進めたような形で広がっているんだ。中は暗いから明かりは必須だね。」
リア「明かりくらいなら魔法で何とかできるから気にしなくていいわね。……それでそのダンジョンには何が出るの?」
シアン「出てくる魔物は基本的にスライム、ウルフ、そして【ゴブリン】だ。」
【ゴブリンの解説】
・種族名:
・小さな身体に緑色の肌を持った魔物。ほかの魔物に比べて高い知性を有し、罠をはったり、待ち伏せ等の姑息な手段を用いる。
・ゴブリンは一体当たりは驚異では無いものの基本的に群れで行動しているため危険。
・残虐であり、非常に狡猾であるため油断すると即殺されるので初心者の死因NO.1である。
・ゴブリンは人間の雌個体を攫い、襲い、犯すことで繁殖しているケースもある。
テオ「なるほど、やっぱり初心者ダンジョンって呼ばれて要因は魔物が弱いからってことか!」
傑「え?今の説明的にゴブリンめっちゃ厄介な感じしたけどそうでも無いのか?」
イフ『まぁ説明された通り油断しなければ雑魚だし、群れを作るって言ってもダンジョン内では個体数制限があるから増やせないしね。数と厄介さは外の個体と比べたらそこそこだよ。』
なるほど。ダンジョンの制約によって力が抑えられてるのか。
シアン「このダンジョンで大事なことははぐれないことと明かりを常に保つことだ。暗すぎて襲われても気づけないからな。」
メルナ「りょうかーい!」
傑「それじゃあフォーメーションでも考えるか?」
テオ「普通に考えたら俺もシアンで前衛、リアと傑で中衛、メルナが後衛でいいんじゃないか?」
シアン「僕もそれでいいと思うよ。僕とテオでヘイト引きつつ殴るから後はサポートよろしくね。」
メルナ「じゃあ確認も済んだし、そろそろ行きましょう。聞いたところによるとダンジョンは攻略3時間くらいかかるらしいし。」
マジ?なんか片手間に食えるものでも買ったとけば良かったかな?まぁいいや。楽勝そうだし、油断しなきゃなんとかなるやろ。
シアン「よしっ!じゃあ全員出発するよー。案内するから着いてきてねー。」
俺たちは一通り話を終えると、ギルドから出てゆっくりダンジョンがある場所まで向かっていく。
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《小人の洞穴 入口》
シアン「着いたよ!地図で確認した感じここで間違いないはずだ。」
およそ数十分歩いた辺りで、ダンジョンがある崖まで到着した。そして一目でこの先がダンジョンだと分かるほど大きな穴も見えた。
テオ「なんか遠足行くみたいでワクワクするな!」
おめぇはガキかよ。……まぁ、そう俺もワクワクしてるんだがな。やっぱりファンタジー要素は楽しみだよなぁ!
シズク「なんか傑がいつにもなく笑顔になってるね。そんなにダンジョンが楽しみなの?僕にはその気持ちよくわかんないなぁ」
イフ『男子ってのはみんなそんなもんだよ。冒険してるっていう気分が凄く高揚するんだろうね。知り合いがそんなこと言ってた』
お前知り合い居たのか?てっきりぼっちの陰キャだと思ってたんだが。
イフ『……なんか失礼なこと考えてないかい?』
傑「そんなわけないじゃないっすか嫌だなぁ〜ハハハッ」
女の勘ってやつか……。厄介なもんだぜ。っていうかダンジョン初挑戦なのに全員緊張感薄っ。
メルナ「それじゃあもう入っちゃう?」
テオ「おう!早く俺の力を確かめたくてウズウズしてるからな!」
そう俺たちが馬鹿なことを言っているのをリアは呆れた目で見つつ、ダンジョンに入る準備をする。
リア「……このパーティには戦闘狂しかいないのかしら?はぁ……とりあえず
リアがそう言い、指をこちらに向けると俺たちの周りにとても明るく輝く光球が出現した。
傑「おー明るい!」
リア「これで明るさは確保出来たわよ。でも魔力が尽きると消えてしまうから私が持ってる青ポーションが仮になくなったら、みんなが持ってるポーションを渡してくれると助かるわ。」
俺たちはリアのお願いを受け入れて、ようやく決意を固めてダンジョンに入ろうとする。
メルナ「あっ!ちょっと待って!」
テオ「なんだ!何かあったのか!?」
メルナが重大なことに気がついたのか早速ダンジョンに潜ろうとする俺たちを大声で引き止める。
メルナ「すっかり忘れてた!……………みんな円陣組もっ!」
………………?????
メルナの謎の発言によってメルナを除く全員が頭にはてなマークを浮かべ困惑していた。
リア「……なぜ?」
メルナ「みんなの心を1つにしたいのと、なんかこういう協力の時って円陣組んだりするじゃん?する忘れてたから思い出せて良かったよ!ほらっ、みんな集まって!」
リア「いや、私はしな……」
テオ「いいじゃねぇか!よーし全員で肩組むぞー!」
リアの拒否の声をもかき消す勢いでテオがシアンの肩に腕を回して、シアンは俺の肩に腕を回してきた。
シアン「テオもう少し空けないとリアさんが入れないよ。スグル、ちゃんと肩に腕回して!」
傑「やってるって!うぉっ!ちょっと今俺の横腹撫でたの誰だ!名乗りあげなさい!」
メルナ「ごめーん!イタズラしたくなっちゃった。許して〜!えへっ♪」
傑「可愛い!許す!」
テオ「何漫才してんだよお前ら。おーいリア!そこで棒立ちしてないで早く入れよー!」
リア「……あ〜もぅ!分かったわよ……これでいいんでしょ!」
場の空気的にやらざるを得なくなったのかヤケになって俺たちの円陣に加わった。
シアン「よーし!みんな!絶対攻略するぞー!」
「「「「「おおぉぉぉーーーーー!!!!!!!」」」」」
リア「お、おぉ〜」
全員で肩を組み、周りのメンバー鼓舞するかのように雄叫びをあげた俺たちは満を持してダンジョン入っていくのであった。
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《小人の洞穴》
傑「いやぁ……案外広いねぇ。」
入って早々俺はこのダンジョンを観察していた。洞穴ってよりかは洞窟って感じ、高さは
3mほど横幅は6mほど。壁は岩で出てきておりゴツゴツしてる。
テオ「今のところ一直線にしか進んでないが、ホントに魔物でるのか?出ねぇ気がしてきたぞ。」
リア「出ないんだったらダンジョンって呼ばれてないでしょ。」
そんな風に雑談をしながらダンジョンを進んでいるとているとかすかだが獣っぽい唸り声が耳に入った。
傑「あっ、なんか来そうだな。」
イフ『初エンカウントだね』
その声は皆の耳にも入っていたらしく各々が武器を取り出すなどして戦闘態勢になっていた。
そして段々と唸り声と足音暗闇の奥からゾロゾロとゴブリンが4匹ほど湧いて出てきた。いずれも右手に剣やら棍棒を持っている。
「ぐがぁっ……あぎゃっ、ぎゃあっ!」
傑「うわぁ……ゴブリンかよ。ってか気持ち悪い見た目してんなぁ。」
イフ『観察してないで早く攻撃するんだよ。何度も言うけど油断してたら死ぬよ?』
はいはい……わかってますよ。……そーいえばゴブリン達何話してんだろ。聞いてみよ。翻訳機能はやっぱり便利〜。
「人間のメス2、雄3、スライム1か。お前ら雄は殺して雌は四肢の骨を粉砕して拘束しろ。」
「兄貴、俺あのひょろそうな男の目玉を抉り出したい!いい声で鳴くに違いない!」
……うわぁ……対話できそうもねぇな。ってかひょろそうな男って俺のことですかね〜?
俺がゴブリンの会話にドン引きしてる最中も距離は詰まっていく。そして残り数mの距離のところまで来たところで……
シアン「テオ。行くよ」
テオ「了解だ!」
2人はそういうとゴブリン目掛けて駆け出す。そしてほか3人は各々ができる形で前衛をサポートする。
傑「どうにか合間を縫って一匹撃破したいところ。まぁ味方に当てなきゃいいってことで、
リア「せめて合図は欲しかったわね。まぁ、それに合わせられてこそよね。
2つの魔法の弾丸が前にいる2人の間を通り、奥にいる2体のゴブリンに直撃し、身体を貫通する。
メルナ「よーし!2人のサポートしちゃうよー!
メルナは2体のゴブリンと戦っている2人に向かって手をかざし、力を向上させる、いわゆるバフ技を発動する。
シアン「いいね!これなら余裕で振り切れる。」
シアンが振り降ろした剣が棍棒で少々止められていたが力が向上したことで防御関係なしに剣を振り切り、ゴブリンの腹をかっさばいた。
テオ「おぉー!みなぎってきたァ!せいやっ!」
テオは魔力で纏った拳をゴブリンに向けて叩きつける。ゴブリンは剣でガードしたが関係なしに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられ死亡した。
傑「ないすぅー!」
見事に全てのゴブリンを倒しきることに成功した。全員で喜びのハイタッチをした後にゴブリンから落ちた魔石を回収してさらに奥に進む。
《1時間後》
結構奥深くまで探索したところで一旦休憩するためにリアが土魔法で外壁を作り、その中でポーションを飲んだり、身体を休めたりする。
シアン「いやぁ……結構疲れたね。でもあと少しで1番奥に着くから頑張ろう!」
ここに来る道中スライムやらウルフに襲われてみんなもそろそろ体力が無くなってきた頃合だろう。
テオ「そーいえばこのダンジョンってどんなボスがいるんだ?」
シアン「あっ、それなんだけどね。このダンジョンにはボスが居ないんだ。」
傑「ん?そうなの?ってかそんなことありえんの?」
シアン「聞いた限りだとここを探索した時にボスと思われる魔物はいなかったらしい。」
メルナ「じゃあ奥には何があるの?」
シアン「確か大きな空間があって、そこのど真ん中に宝箱があるはず。」
傑「え?何それめっちゃ怪しいやん。」
シアン「いや、でも罠はないらしいんだよ。ちなみに中の物は魔導書だったり武器だったりで色々らしい。」
傑「ほへぇ〜、ボスがいないダンジョンかー。もしかしたらどこかに隠れてたりするんかね。」
シズク「いやいや、さすがにないんじゃない?だってもし居たら他の冒険者が見つけてるだろうし。イフはそこら辺知ってるの?」
イフ『さぁ、どうだろうね?』
あっ、こいつ絶対なんか知ってやがるな。でもこういう時のこいつは情報を出さないから聞くだけ無駄やね。……とりあえず警戒はしておこう。
リア「そろそろ行きましょ。もう回復も充分できたでしょ?」
シアン「うん。だいぶ体力も回復したから奥に進もうか。」
体力が少し回復した俺たちは周りの外壁を解いて、さらに奥へと歩いていった。
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《小人の洞穴 最深部》
俺たちが奥に奥に進んでいくと、少し開けた空間に出た。その空間の真ん中には1つの宝箱。周りに魔物は居ないし、他の場所に行く通路もない。つまりここがゴール。
テオ「おぉぉぉっ!!宝箱だぁ!」
リア「……これでこのダンジョンは攻略かしら?ふぅ……それにしても罠って感じがすごいわね。」
周りには何も無いのに宝箱だけが存在するこの謎の空間に違和感を覚えずにはいられない。
メルナ「でも情報通りなら罠はないんでしょ?なら早速開けちゃおうよ!」
傑「そうだそうだ!開けよーぜ!」
シアン「……そうだね。じゃあ開けようか。」
俺たちは期待を胸に宝箱に近づき、そして宝箱の目の前まで来た。いよいよ開封の時。
シアン「じゃあ……開けるね。」
このパーティーのリーダーであるシアンが開けることになり、シアンはゆっくりと宝箱の蓋の部分を持ち上げ、宝箱の中のものを目に入れる。
シアン「これは……指輪?」
宝箱の中に入っていたものは、赤い宝石が埋め込まれた銀の指輪。美しい輝きを放つ指輪に俺たちは見とれてしまった。
シアンはその指輪を拾い上げると俺たちにも見てほしいと言った。
傑「お〜。なんか凄そう」
メルナ「綺麗だね〜!」
テオ「それにしても小さいなぁ。俺の指だと小指にぎり入るかくらいだな。」
リア「どういうものかは分からないけど、少なくとも魔力が篭ってるから何か効果が秘められているはず」
各々が感想を述べたところでシアンは指輪を布で包み、自身のバッグの中に指輪を入れた。
シアン「これがいくらになるかは分からないけど、とりあえずダンジョンも攻略し終えたし、ギルドに戻ろうか。」
テオ「それもそうだな。あ〜疲れたぁ!」
リア「今回の報酬。少しは研究費の足しになってくれるとありがたいわね。」
メルナ「初めてのダンジョン攻略だったけどみんなと一緒に攻略出来て楽しかったよ!」
俺たちは和気あいあいとしながら、ここに来るまでの道を再び歩いていくのであった。
傑「……ホントに何も無いのか……?」
なんかまだ嫌な予感するんだよな〜
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《小人の洞穴 中腹》
テオ「━━それでさ!家の中に魔物が入って来て!」
シアン「それはすごい体験したね」
メルナ「それでどうなったの!?」
自分たちの身の上話やら思い出を話しながら歩き進めていた。今はだいたい中腹あたりだろうか。
傑「はぁはぁ……いや〜疲れて来たァ……ふぅ〜、ちょっと休んでいい?」
シアン「いいよ。みんなも少し疲れただろうしね。ちょっとみんな止まってね。」
テオ「スグルは体力をつけた方がいいと思うぞ。今度俺と走り込みするか?」
傑「うぅー……拒否しまーす……」
さすがの俺も歩き疲れて来たのでよろけて、壁にもたれかかってしまった。
カチッ!
傑「………………カチッ?」
俺がもたれかかった岩からスイッチを押した時のような音が聞こえた。次の瞬間……
舜「…………は?」
…………俺が立っている床が抜けた。あまりに突然の事で反応出来ず、そのまま落とし穴になすすべなく吸い込まれていった。
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《小人の洞穴 ???》
傑「うわわっ!?うぁぁぁぁぁぁああ!!!いやぁぁぁぁぁぁあ!」
俺は絶叫しながら地面に激突しないように策を考える。
どうするっ!どうするっ!水で衝撃軽減はできそうもない!火は論外だし!
傑「シズク!俺の足元に来てクッション代わりになってくれないか!」
シズク「やだよ!そしたらワンチャン僕の核が砕けて死ぬからね!」
傑「じゃあどうすんだよ!?やばいやばい!地面迫ってきてるって!」
イフ『大変そうだねぇー。お茶持ってこよ。』
こんのクソ女神がぁ!助けろよ!何俺の大惨事眺めながらお茶をすすろうとしてんだよ!風情ねぇよ!
傑「あーっ!もうあれやるしかない!ぶっつけ本番見よう見まねでやったるわぁ!」
この前試験でメルナが使ってた風魔法を使って何とか俺を浮かせるほどの風を生み出すかねぇ!
傑「いくぞ!
俺は地面に向かって風魔法を打ち込む。地面との距離残り数m。俺の全力を込めて、魔力を出し切る。すると落下速度がだんだん減少してきた。
シズク「これいけるんじゃない!?このまま頑張って!最悪僕だけでも助けて!」
傑「あっ、でもやばいっ!魔力切れる!うぉおお!持ってくれ!」
徐々に落下速度は落ちていき、残り1mのところで落下が止まった。そのまま風魔法を解除してふわっと着地。
傑「あぁ゛っ!!助かっだぁ!マジ死ぬかと思ったァ〜あぶねぇ!」
俺は自分の命と床があることに安堵し、バッグに入れていた青ポーションを飲んで、失った魔力を回復する。
傑「……ぷはぁっ!……あ〜!復活!」
全快とまではいかないものの半分くらいは魔力が回復した。そして深呼吸をして落ち着きを取り戻したところで状況確認のために周りを見渡す。落ちてきた穴を見あげたところ結構深くまで落とされた様子。
傑「……それにしてもここどこなんだ?しかもなんだアレ」
先程の宝箱があった空間にそっくりな場所に落とされたのだが、宝箱があった位置に何やら変な塊が見える。
シズク「ただの岩の塊にも見えるけど……にしては不自然だよね。触ってみたら?」
傑「……え〜?やだよ。……いや、でも気になるな。魔法ぶつけてみようかな。」
イフ『大丈夫だよ。そんな事しなくてもすぐに進展はあるから。』
傑「え?……それどういう……」
俺がイフに対して質問を投げようとしたその時、岩の塊が動きだしたのに気がついた。砂埃がパラパラと落ち、岩が震えている。
傑「……マジっすか?」
どうやら嫌な予感はあったっていたようだ。岩の塊は徐々に起き上がり、まるで人間の形に形成されていく。
イフ『これが小人の洞穴のボスモンスター【ゴーレム】だよ。ちゃんとアドバイスはしてあげるから倒して見せてね。』
…………マジっすか………………
まさかのゴーレムと遭遇してしまった傑。果たして傑は無事に倒すことが出来るのでしょうか。そして無事にこのダンジョンから生きて帰れるのでしょうか!
次回へ続く
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