第11話『お仕事 その2』

前回鍛冶屋に行った傑。


テナやグレムといった個性豊かな人物に出会い、武器を作って貰うことになった。


果たして傑は武器が出来上がる3日の間にCランクに昇格できるのだろうか?


傑達の活躍をご照覧あれ!


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傑「いやはや、武器が出来上がるまで残り今日含めて3日ですよ!個人的には武器が出来上がり次第魔物を倒しに行きたい訳です!」


イフ『だから依頼をこなして魔物の討伐の依頼が受けられるCランクに上がっちゃおうってわけだね。』


傑「そういうことだぁ!という訳なんで依頼を受けてみよう!あと4回でいいんだっけ?」


シズク「うん。あと4回依頼を達成したら昇格出来るよ。」


簡単で早く終わらせられる依頼を選択する必要があるな。どれがいいんだろうか。


そう思いながら受付の人に渡された依頼がまとめられたリストを眺めていた。


【依頼リスト】

・下水道掃除

・薬草集め×2

・家事手伝い


傑「……う〜ん、これじゃまるで何でも屋だな。……なんか思ってた冒険者じゃない感じがする」


イフ『仕事なんてそんなものだよ。冒険者って名前がついてるだけのなんでも屋。』


冒険してない冒険者は果たして冒険者なのだろうか?


俺は多少疑問を感じつつも、冒険者の仕事も学校の生活と同じように思ってたのとは違うようなことが起きるのは当たり前と自分を納得させて今日の依頼に取り掛かることにした。



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《武器完成まで残り3日》


まずは下水道掃除から取り掛かることにした。この街で使用された水が流れているため非常に汚い。


俺は作業着を身につけ、ブラシを片手にヘドロの除去や汚れた水の放流などをこなしていく。


傑「うっわぁ……臭いし汚ぇ……」


イフ『いやー、大変そうだね。』


他人事みたいに言いやがって……!


……にしても俺以外にも下水道の掃除をしている人たちは結構いるんだな。こんなことをしないと生きていけない世の中と下水道の匂いに吐き気がしてきますよ!


そんな感じで文句を垂れ流しながら汚れと格闘して数時間が経過し、俺の体力が限界に達した辺りで今日の作業は終わりとなった。


傑「……マジ疲れた……もうダメぽ」


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《武器完成まで残り2日》


傑「今日は薬草集めに行きます!」


シズク「また薬草集めるの?」


傑「しかも依頼2個分ある!俺だってこんな地味作業やりたくはない!こんなの異世界じゃない!」


残り日数的に今日で2個依頼を終わらせとかないと武器を取りに行くのが遅れちゃうからしょうがない。


傑「ということで再び来ました!このめちゃでかい平原!えーっと今回はクラナ草10本に【エルアそう】っていうのが8本いるらしい!」


【エルア草の解説】

・魔力を回復する青色のポーションを作るのに必要や薬草。


イフ『今回は群生してる場所教えてもらったから楽そうだね。』


エルア草は菊の花みたいな見た目してる花弁が青色の植物らしい。


傑「とにかくレッツゴー!」


それから俺たちは平原を駆け回り、花を切っては回収を繰り返していった。

そして日が暮れてきた頃依頼された本数集めきったので依頼完了を伝えるためにギルドの方に向かって歩いていた。


傑「にしてもこの花栽培できねぇのかね。」


イフ『う〜ん、どうなんだろうね。私はそこら辺詳しくないからさ。』


傑「仮にも神なのに分かんないってどういうこっちゃ?」


イフ『最近生まれた神だからわかんない事があってもしょうがないの!』


傑「そういうもんか?」


今日も今日とて仲間と雑談を挟みながら依頼をこなして日が終了していく。


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《武器完成まで残り1日》


傑「はい!ということで明日武器が出来上がります!やっぱり期待が高まってきますね!気分はさながら遠足前日の小学生の気分」


シズク「よく分かんないけど楽しみってことでいいんだよね?」


傑「そういうことだ!」


イフ『今日の依頼は家事の手伝いだっけ?』


傑「そうだね。えーっと、依頼内容は家の掃除、服の洗濯等々。依頼主の名前は【マルカ・ホルン】って名前の富豪の老婆らしい。」


イフ『君の家庭力が試されるね。個人的に君が家事出来るとは思えないけど』


傑「おぉん?舐めんなよ!こちとら家事はだいたい出来る系男子なんだよ!」


一人暮らしに向けて親から教わってた家庭力がここで発揮されるとは。人生何があるか分かったもんじゃないね。


ということでギルドの職員さんに書いてもらった地図を頼りに富豪の家まで歩いていった


傑「……ここか?」


富豪と聞いていたので豪邸をイメージしていたが、思ってたより小さい家にたどり着いたので、本当に合ってるのかと疑問に思い首を傾げる。


傑「まぁ、間違ってたら謝りゃいいだけか。ドアノックしてみよ。」


コンコンッ♪


傑「すいませーん!マルカさんはいらっしゃいますかー!」


扉を叩いてから少しするとゆっくりと扉開き、扉の隙間から白色のふんわりした髪とシワシワの肌の小柄な老婆が姿を見せた。


マルカ「私がマルカだけど……あなたはどちら様?」


傑「えーっと、家事を手伝う依頼で来ました。冒険者の如月傑と申します。」


マルカ「そうかい。こんな老人の依頼を受けてくれてありがとうね。早速なんだけ部屋の掃除をお願いしてもいいかね。」


傑「合点承知之助!」


俺はギルドから配給されたモップを片手に全力で部屋の中をゴシゴシして回った。


傑「にしてもあんまり汚れてるようには見えないですけど、なんでわざわざ依頼したんですか?」


マルカ「この歳になると掃除をするのも大変ってのもあるけど、最近あんまり人と話せてないから喋り相手になって欲しかったってのが1番かね。」


傑「まぁ、孤独は辛いっすもんねー」


学校のクラスで孤立した時のメンタルの削れ方は異常だからな。気持ちは分かる。


イフ『多分君が想像してる孤独とマルカさんの孤独は別モンだと思うけど』





そんな感じで適度に会話しながら作業を進めていく。そして日が暮れそうになった頃に作業が全て終わった。


傑「よし!終わりやした!」


マルカ「今日は本当にありがとうね。久々に人と話したから楽しかったよ。あっ、ちょっと待ちな。」


俺が家から離れようとするとマルカさんに呼び止められた。そして謎の小袋を差し出してきた。


傑「……マジすか?いいんすか?」


小袋を少し動かしただけで音がするほどぎっしり詰められた硬貨が小袋の隙間から見えた。


マルタ「こんな老人のお喋りに付き合ってくれた分だよ。ギルドからはどうせはした金しか貰えてないんだろう?」


傑「さすが富豪!太っ腹ですね!ありがとうございましたー!それじゃまた会いましょー!」


俺は小袋を受け取ると、マルカさんに一礼しギルドの方に向かって走っていった。



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傑「はいはい!皆さんお待ちかね!ランクアップの時がやってきましたよ!」


いやぁ、3日間汗水垂らして働いたかいがありましたよ。もうホントゴロゴロしてた日本の生活が恋しい。だが、頑張ったのもこの日のために他ならない!


シズク「1ランク上がるってだけでテンション上がりすぎじゃない?」


傑「ふっ!分かってないようだね!俺が今いるDランクとCランクじゃあ圧倒的なまでの権限の格差があるのだよ!イフくん!説明してあげなさい!」


イフ『はいはーい。イフ先生が簡単に解説してあげるよー。』


【Cランクの権限】

・魔物の討伐の依頼受注の許可。

・ダンジョン入室の許可。

・素材換金所の利用許可


傑「オラっ!これがCランクになってから解禁される権利の数々だ!」


イフ『まぁ、Dランクが制限されすぎってのもあるんだけどね。安全面を考えたらしょうがないけど。』


傑「それにしてもやっぱりダンジョンってのがワクワクします!前に聞いた時からずっと期待してたんだよな!」


シズク「そういえばランクアップってどういう形式でやるの?」


傑「あー、それはだな。前も言ってたっしょ?試験があるんだよ。」


試験内容は不明だが、今日はもう遅いので明日の朝に試験が始まるらしい。

周りの人に聞いて回った感じは監修の元で行われる魔物討伐だの、冒険者の人と模擬戦だの色々あるらしい。


傑「だから明日の朝に試験をやって、無事突破し!その後に明日には完成してるであろう武器を貰いに行くという俺のパーフェクトプラン!」


シズク「傑が試験を無事に突破できるとは思えないんだけど」


イフ『……この時傑は考えてもいなかった……まさか自分があんなことになるなんて』


傑「妙なフラグを立てるのは辞めろ!ったく……とりあえず今日はもう宿に戻って寝るぞ!」



果たして傑は無事にランクを上げることが出来るのだろうか!イフの言ったフラグは本当に実現するのだろうか!



次回へ続く

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