第10話『炎鉄工房』
前回初めての依頼を達成した傑。
依頼を終え帰還したら樽に刺さってる変人を救出することに。
その変人とはまさかのギルドマスターであった。
陰キャの傑はギルドマスターと交流を深めることが出来るのだろうか!
傑達の活躍をご照覧あれ!
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傑「なんでギルマスが樽に突き刺さってたんですか?」
※ギルマスはギルドマスターの略
ガブラ「ちょっと仕事でミスをしてな!嫁に罰として樽の中にぶち込まれたんだよ。」
……こいつ結婚してんのか!?
っていうかどんなミスしたら樽の中にぶち込まれるようなことになるんだよ。
シズク「……なんかこの街って変人が多いね。」
イフ『一部がおかしいだけだからね?』
ガブラ「にしても変わった衣装だな?とても冒険者の格好には見えねぇが。」
俺の服は転生前の物を引き継いでいるので、学校の制服を着用している。
この世界では見られない服だしな。
……この格好だと目立つけど、かと言ってこの世界の服を着たいですか?って言われても微妙だしな。
イフに後でいい感じの作ってもらえないか交渉するか。
傑「まぁ、これが自分には合ってるんでね。動きやすさ重視ってやつですよ。」
ガブラ「まぁこだわりは大事だな!でも身を守る物は着けた方がいいと思うぜ。魔物の攻撃を喰らったらスグルの身体だと一瞬であの世行きになっちまうしな。
別に死に急ぎたいわけじゃねぇんだろ?」
確かにギルマスの言う通りだ。つい最近も森でも魔物に襲われて死にかけてたしな。あれは嫌な思い出だった。
傑「じゃあ、防具とか武器が売ってる場所って知りませんか?俺この街のことあんまり知らないんで」
個人的にはダーク〇ウルとかで見た甲冑とか付けて見てぇ気持ちもある。
ガブラ「なら鍛冶屋に行くといい。
俺の友人が鍛冶屋をやってるからそこまでの地図をやるよ。
あと鍛冶屋の仏頂面の鍛冶師に会ったら今度飯食いに行こうぜって言っといてくれると助かる」
そういうとギルマスは1枚の紙を俺に手渡してきた。
紙にはギルドから鍛冶屋までのルートが赤い線でなぞられており、鍛冶屋の目印等が書かれていた。
傑「了解しましたー!ありがとござぃあーす!
あっ、そういや依頼の完了報告しないといけねぇんだったわ。」
ガブラ「それなら早く行ってこい。その依頼の報酬にさっき助けてくれた分上乗せしといてやるよ。」
傑「ギルマス太っ腹ですね!このご恩は明日までは覚えときます!じゃあまた縁があれば会いましょー!」
ガブラ「おう!またな!仕事してる時に何かトラブルがあったらギルドを頼れよ!」
俺たちはギルマスを背に向けるとせかせかとギルドの中に入っていった。
ガブラ「……スグルか。アイツの冒険はなかなか面白そうなことになりそうな予感がするな!」
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《ギルド》
傑「受付嬢さーん!依頼達成しましたよー!」
俺たちは受付嬢さんに依頼が終わったことを鼻高々に報告しに行った。
受付嬢「凄いですね。まだ依頼を受けてから5時間しか経ってませんよ。思ったよりも仕事が早くて関心します。…………はい。薬草が全てあるのを確認しましたので依頼達成です。では報酬をお渡ししますね。」
カウンターに輝く硬貨が山のように置かれていく。
傑「え?こんなに貰えるんすか!?」
受付嬢「依頼の報酬自体はそこまでですけど、ギルドマスターがスグルさんの報酬を上げるように言ったのでこの金額になってます。報酬金が1000G、追加で10000G。
合計が11000Gになります。」
わぉっ…日本円換算で11万円か……ギルドマスターなかなか太っ腹ですなぁ!……ってか伝わるの早っ!
さっきまでギルドマスター入口の方にいた気がするけど……連絡出来る魔法とかあんのかね?
傑「ありがとうございました!ギルドマスターに俺が狂喜乱舞してたって伝えといてください!」
受付嬢「かしこまりました。」
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報酬を受け取った後、ギルドから出た俺は袋から聞こえる硬貨がぶつかり合う音にニヤニヤしていた。
シズク「……なんかスグルの顔気持ち悪いよ。こんな金に興奮する人が旅仲間だなんて信じたくないんだけど……それにしてもこの後どうするの?また依頼をこなしていく感じ?」
傑「……それもやるけど、今は金もあるし紹介された鍛冶屋に行ってみようかなーって。やっぱり武器と防具が欲しい!」
異世界といえば魔法もだけど、やっぱり剣も捨てがたい!
イフ『傑みたいに魔法をメインで戦う人の弱いところは接近戦だからそれを補うのはいいと思うよ。
でも君の筋力で重い剣やら槍とかの武器が振れるかな?』
傑「まぁ、個人的にはそんなに重くない奴の方がいいから軽めのがいいんじゃねぇかなって思ってる。短剣とか直剣とか」
俺の妄想でしかなかった燃える剣だったり、電気を纏った槍だったりが実現可能になりそうになってる事実に興奮が収まらないな!……ってかそれにしてもジロジロ見られるな。やっぱり制服はこの世界にはないし、珍しいのかね。
傑「こういう時こそ。イフさーん!」
イフ『なにかな?』
傑「何時までも制服のままってのは味気ないから別の服ない?能力である程度のものなら創造出来るんでしょ?」
イフ『別の服って……私の能力を服を作るだけに使うとかいい度胸してるね?』
傑「だってしょうがねぇじゃーん。やっぱり日本の服が1番落ち着くし、それを得るにはイフに頼るしかねぇんだもん」
イフ『……はぁ。そこまで頼むなら仕方ないけど、これやるの疲れるし、1回使うともう1回使うのに結構クールタイム挟むけどそれでもいい?』
傑「それでいいよ。ってか服を何着か作るのにそこまで渋るってことはその能力相当コスパ悪いんだな?」
イフ『異世界の物を創るのはそれなりに魔力がいるの!この世界の物なら大きさと質によるけど地球の物を創るよりかはコスパが軽くなるよ。で、何作ればいいの?』
傑「そういうシステムなのね〜。えーっと、黒のパーカーと紺色のジーンズ。あとはジャージが欲しい。」
イフ『注文が多い!……まぁ創るけどさ。
それだけ創るなら次に使用できるの1週間後になっちゃうけど文句言わないでよ?』
傑「さすがに創ってもらう分際で文句は言わないさ。……多分ね。俺はさすがにそこまで酷い人間じゃないから信用しろよ」
イフ『まだ話し始めて3日、4日くらいだけど君のその言葉の信憑性はかなり薄いけどね』
傑「酷い!」
シズク「2人とも〜?訳わかんないこと言ってないで、鍛冶屋探そうよ。」
傑「それもそうか。シズクにイフとイチャイチャしてるのを聞かせるのも気まずいしな」
イフ『ぶっ飛ばすよ?』
脳死で雑談しながらもかなり歩いたし、そろそろ近くに鍛冶屋があるはず。ギルマスが記した鍛冶屋の特徴は石レンガ造りのボロい木製のドアがついてる建物でこの道のどこかにある路地裏の中にあるらしい。
傑「シズク〜路地裏見つけた〜?」
シズク「今周り見てるけど……あっ、あそこのところに路地裏あるよ。」
傑「おっ、シズクナイスぅ!じゃああそこに突撃するか。」
俺たちは路地裏の方まで歩いていき、中を見渡す。
ジメジメとしており昼間なのに暗い。まるでお化けでも出てきそうな雰囲気がある。
案外広かったので少し歩くことになったが、奥の方に目的の建物を発見した。
イフ『これじゃない?』
傑「お〜!あったあった。ギルマスによるとこの鍛冶屋の鍛冶師は見た目は怖いが優しい奴だからあんまり緊張することはないってことらしい。……ってことで入店するか。
すいませーん!入ってもいいですかー?」
俺がドアを何回かノックすると木が軋む音を立てながらドアが開いた。
?「誰っすか?」
ドアの奥から出てきたのは、ギルマスのような厳ついおっさん……ではなく赤いバンダナを巻いたベージュ色の短い髪携えたの褐色少女だった。
傑「……えーっと……君がこの鍛冶屋の鍛冶師かな?
仏頂面で見た目が怖い奴って聞いてたから、イメージと違ってびっくりした。」
?「あぁ、いや。多分その特徴は師匠っすね。師匠はこの奥の作業場にいるんでとりあえず中に入ってほしいっす!」
目の前の少女がそういうと俺の腕を掴んでドアの奥へと引っ張っていく。
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鍛冶屋の中に入ると大量の剣やらチェーンメイル等の物品が並べられており、美しい輝きに目を奪われていた。……それにしてもやけにこの部屋埃舞ってんな。掃除されてないのか?
傑「うおぉ……かっけぇ……」
思わず感嘆の声が漏れてしまうほど自身の厨2心をくすぐられてしまった。
?「そうっすよね!やっぱり武器と防具って美しいっすよね!お兄さん分かってるっすねぇ〜!」
傑「いや〜それほどでも〜///あっ、そうだ。
お嬢ちゃんの名前ってなんて言うの?なんて呼べばいいのか分かんなくて困ってたんだよね〜。」
テナ「いきなりっすね〜。じゃあ自己紹介するっす!
私の名前は【テナ・ドーリス】っす。この立派な鍛冶師になるためにこの鍛冶屋で修行を積んでるっす。私の事は気軽にテナって呼んでくれると嬉しいっす!
私もお兄さんの名前知りたいんで教えてくださいっす。」
傑「俺の名前は如月傑だ。多分これから結構お世話になるからよろしくな。」
テナ「よろしくっす!あっ、そろそろ師匠の作業終わりそうなんで話しかけてみるっすね。あっちの部屋がここに立てかけてある装備を造ってる作業場っす!」
テナが指さした方を見るとかなり硬そうな鉄で出来たドアに目がいった。興味本位で近づいてみるとドアから熱気が漏れだしており、ハンマーで鉄叩いてるみたいな金属音が聞こえてくる。
テナ「師匠ー!お客さんが来てるっすよ〜!」
テナが大声で呼びかけると、先程まで鳴り響いてた金属音が止み、ガタゴトと何かを動かしてる音が聴こえた。
しばらくすると鉄のドアが開閉され、奥から汗だくでボサボサ黒髪の顔が怖いのおっさんが出てきた。
どうやらこの人がテナの師匠らしい。
?「お前さんは客か?」
傑「あっ、は、はい。お、俺の武器と防具を作って欲しいな……って」
?「なるほど……まぁ、殴ったりするわけじゃないからそんなに怯えなくていいぞ。今しがた作業が一段落着いたところだからそっちの部屋で話を聞いてやろう。」
そういうと店内の方に移動し、椅子に腰かけて俺に話しかけてきた。
グレム「俺の鍛冶屋【
なかなかの迫力を持ったおっさんだ。
顔の怖さに気圧されそうになるが、頑張って持ちこたえる。
傑「……え、えーっと早速なんですけど俺に合いそうな武器でなんか良いのありますかね。」
そういうとグレムは俺の身体をジロジロと値踏みするような目で観察してくる。
グレム「ふむ……お前さんの肉体を観察してみたが、あまり筋肉が付いていない。重量があるものを振り回すのには向いていないだろう。」
服の上からよくそんなに分かるな。達人って感じが言動から滲み出てるわ。
傑「そうですか。じゃあこれがおすすめってのはありますかね?」
グレム「無難に【
後は【
なるほど〜、非常に悩ましいな。安定性重視か、機動性重視か。せっかくだし見習いにも意見を仰ごう。
傑「テナはどう思う?俺が魔物と戦う時を想像して、直剣を持った俺と短剣を持った俺……どっちが勝ってそうに思う?」
テナ「え?う〜ん……難しいっすねぇ。……私個人の感想としては直剣の方が魔物に勝てそうだと思うっす!」
傑「やはり安定性重視か!じゃあ直剣でお願いします!」
グレム「よし、じゃあ直剣のオーダーメイドだから料金は10000Gだ。わざわざこんな路地裏の奥にある鍛冶屋に来てるんだからそのくらいの金はちゃんと持ってきてるよな?」
うげっ!俺の所持金のほとんどを持っていかれるじゃねぇか!直剣1本10万円かぁ……背に腹はかえられねぇか
傑「了解しましたぁ!……はいっ、どうぞ!」
俺は10000Gが入っている袋が入ってるテナに手渡した。
テナ「えーっと…………はい!10000Gぴったりっす!」
グレム「それじゃあ3日後にまた来い。お前に合った剣を作っておく。あっ、ついでに身体を採寸させろ。」
傑「え?なぜ?」
まさかこの男……男色なのか!?
グレム「なんかお前さん危なっかしいからサービスで胸当て作っといてやるよ。そのためにサイズ測っとく。」
ふぅ……良かったぁ。胸当て作ってくれるだけね。俺にそっちの気はねぇからな。
テナがメジャー代わりのテープみたいなので俺の胸囲を測っていく。
テナ「測れました!本日はご注文ありがとうございましたっす!また来る時も仲良くしましょうっす!」
傑「こちらこそありがとうございました〜!
また来るんでそん時も歓迎してくれると嬉しいです!」
グレム「暇があれば歓迎してやる。ほらっ、さっさと帰った帰った。俺はこの後も忙しいんだ。」
傑「じゃあ……あっ、忘れてた!グレムさーん!」
俺は鍛冶屋から出ようとドアに手をかけたところでとあることを思い出した。
グレム「なんだ?」
傑「ギルドマスターが『今度飯食いに行こうぜ』って伝えろって言ってましたー!」
グレム「あ?ガブラが?……そういえば最近あいつと話してないな。久しぶりに会うのも一興か。伝えてくれてありがとな。」
傑「いえいえ。それじゃあいい出来のもの期待してるんで!またねー!」
そういうと俺たちは鍛冶屋から勢いよく出ていった。
テナ「なんか楽しそうな人っすね。」
グレム「そうだな。……ってかここ埃舞ってるがだがお前今日店内の掃除やったか?」
テナ「……あっ。……忘れてたっす……テヘッ♪」
グレム「お前なぁ……早くしろ!」
テナ「すいません!」
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傑「よーし!武器が完成するまで依頼こなしまくるぞ!目指せ!3日間でC級!」
イフ『C級まではあと依頼を4回達成すればいいよ。』
シズク「案外簡単だね。スグルがんばれー」
一日で凄い濃い体験をした傑。彼の目標は世界を救うこと。この先幾度となく壮絶な経験をすることになるが、決して折れず、明日を必死に泥臭く生きることでしょう!
次回へ続く
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