第9話『お仕事 その1』
前回ギルドにて冒険者となり初の依頼を受けた傑。
薬草を摘みにいく簡単なお仕事だが、傑達は無事にこなせるのだろうか?
傑達の活躍をぜひご照覧あれ
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《ダラトナ 郊外》
俺達は依頼でクラナ草という名の薬草を集めにダラトナの外の野原に来ていた。燦々と照りつける太陽に焼かれながら辺りを散策している。
傑「あちぃ〜……確かここら辺で薬草が取れるんだっけ?」
イフ『受付嬢が言うにはここら辺にあるらしいよ。』
シズク「そういえば傑は薬草がどんなのかって分かるの?自信満々にここまで来てたけど。……あとなんで僕を服の中に閉じ込めてるの?」
傑「熱中症対策だ。」
シズクは全身が水で出来ているから若干ひんやりしているので俺の服の中に入ってもらって暑さを軽減している。
傑「まぁ、図鑑は貰ったから判別はできるんだが、そもそも運動したことないから歩くだけでキチィ。はぁ……このときのために運動して持久力つけるべきだったなぁ……」
こんな草原を駆け回るのは陰キャくんには荷が重いよぉ。そもそも俺に肉体労働は向いてないのよ。快適な部屋でパソコンを叩いてる方が性にあってる。
イフ『あの森を駆け回ったのに比べればだいぶマシでしょ?元気だしなよ。』
傑「そりゃそうだが。めんどせぇもんはめんどくせぇの。気持ちの問題よね。はぁ〜……憂鬱だわァ」
えーっと、クラナ草は白い花が咲いてるのか。わかりやすい見た目はしてるけど、こんな広い野原の中を歩き回って見つけるのが大変なんだよな。群生してる場所ねぇかな。
シズク「ちょっと図鑑見せてー…………あっ、この薬草知ってるよ!いっぱい生えてる場所見たことある。」
傑「えっ、まじぃ!?有能!!さすが近くの森に生息していただけはあるな。じゃあ案内してくれ!」
やっぱりシズクを仲間にしたのは得策だったようだなぁ!俺の先見の明が冴えわたってるぜ。
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俺はシズクの案内されて先程いた場所から少し離れた所に向かうと、クラナ草が群生しているの場所を発見した。
傑「おぉ!ビューティホー!いっぱい生えとりますなぁ!」
結構可愛らしい花だなぁ。スズランみてぇな見た目してる。
イフ『見とれてないでさっさと取って依頼終わらせちゃいなよ。今のランク帯から早く抜け出さないと。』
まぁ確かに急いだ方がいいよなぁ。俺こういう感じのランク上げるゲームでも停滞しやすいからなぁ。
俺は薬草を取るために近くに寄り、事前に渡されていた刃物で花茎(かけい)から切り取っていく。
傑「何本いるんだっけ?」
シズク「確か15本だったような気がするよ」
じゃあちゃちゃっと摘んでいくか。
俺は15本のクラナ草を切り取り、袋の中に詰めていく。
イフ『これで依頼完了かな?こういう依頼を何回もこなしていったらランクが上がるからね。』
……どうやら高ランク帯までの道のりはまだまだ長ぇようだな。でもいつか立派な冒険者になってみせるぜぃ!
傑「それじゃ、帰ろっか。依頼完了したし、こんなところに立ち往生して魔物に襲われたらたまったもんじゃない。あとなんとなくもう少しここに居たらフラグが立ちそうな予感がする。」
そんなわけで俺たちはなんのハプニングもなく、見事に初依頼を終えたのだった!
イフ『なんか凄いことをしたかのような雰囲気漂わせてるけどけどただ薬草集めただけだからね?』
傑「心を読んでくるなよ!」
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《ダラトナ ギルド前》
ダラトナに帰還した俺たちは早速依頼が完了したことを伝えにギルドに来ていた。
シズク「……ん?ねぇねぇ。ギルドの前になんかない?」
傑「……おん?」
シズクが何かを見つけたようで俺もギルドの入口前に視線を向けた。
?「誰か!助けてくれぇええ!!!」
ドスの聞いたバリトンボイスで助けを求めている男がいたのだが、その男は何故か……
樽に刺さっていた。
傑「……え??なんだあれ!?新手の変態か?……にしてもどうやったらあんな状態になるんだ?」
イフ『あ〜……あれは珍獣みたいなもんだよ。』
シズク「明らかに人に見えるけど!?大丈夫なのアレ!?」
どうやら俺たちは見ちゃいけないもんを見てしまったようだな。とりあえず……無視するか?
?「おっ!近くで声が!顔は見えねぇが助けてくれ!樽にハマって出られねぇんだ!」
傑「いや〜……さすがに不気味だし、助けたくないというか。っていうか内側から破壊できないの?」
?「見りゃわかるだろ?狭くて腕とかが動かねぇんだ。だから早くなんとかしてくれ!このままだと変な体制をしすぎて腰を痛めちまいそうだ!!」
傑「え〜、でもめんどくさ。可哀想だけど縁がなかったってことで……」
?「金やるから!」
傑「よ〜し!俺は人助けが好きな男!困ってる人は決して見捨てはしない!」
イフ『現金な男だねぇ』
俺はとりあえず男を樽から引っこ抜こうとしたのだが、凄い身体にフィットしてて抜けない。手も足も出ないがそれでも俺は引き抜くのをやめない。
?「イデデッ!?やめろ!これ以上引っ張るな!抜けないの分かってんだろ!」
傑「いやいや、頑張って耐えてよ〜。よいっしょっと!」
何やら騒いでいるが俺の善意が嬉しくて仕方ないらしいな。歓喜の悲鳴あげてるもん。
シズク「なんだか可哀想だし、……そろそろ真面目に助けてあげたら?」
傑「まぁ、金のためだしなぁ。とりあえず魔法でもぶつけてみるか。」
?「待て!俺まで魔法の餌食になるだろ!もう少し丁重に扱え!!」
傑「文句言うんじゃありません!喰らえ!
右手に魔力を溜めて手のひらに水を生成する。形を投げやすいように球状に整え、思いっきり樽目掛けてぶん投げた。質量を高めた水なら木で出来た樽くらいなら粉砕できるはずだ!
バキィッ!ゴシャッ!
俺が放った水の球はそのまま勢いが落ちることなく直撃し、見事に樽を粉砕することに成功した。
イフ『お〜♪ナイスピッチング!』
傑「よっしゃあ!…………あっ、てか大丈夫ー?」
全力で投げたからワンチャン怪我とかしてるかもしれねぇ。そしたら金の件をなかったことにされるのでは?頼む!無事であってくれ!
?「ふぅ……助かったぜ。まじで狭苦しかった。」
樽が壊れると中からガタイの良いおっさんが出てきた。そのおっさんの容姿は茶髪の筋骨隆々の大男。顔にいくつも傷がついており歴戦の猛者という印象。厳つい顔つきに鋭い目つきも合わさって深夜に出くわしたらちびるほどに怖い。
樽の中にこんなゴツいやつが入ってたのかよ。樽って捕縛にも使える優れもんだったんだなー。樽の可能性を感じずにはいられないな。……にしても結構強めに魔法を当てたはずなんだが無傷ってのはおかしくない?防御性能高すぎんだろ。もしくは俺が弱すぎ?
???「いやぁ。まじでありがとな!危うく腰が死ぬところだったぜ。お前の名前は?」
傑「あっ、す、傑です。……ってかそれよりも金は?」
ガブラ「わあってるよ。お前は恩人だからな。後で金はくれてやるよ。……あっ、そーいえば俺の名前言ってねぇな。俺の名前は【ガブラ・スコール】この後ろにあるギルドの長をやっているものだ!!」
傑「……うっそぉ?まさかのギルドマスターかよ!?」
まさかの初依頼を終えて帰還したらギルドマスターと対面してしまうというまさかの事態に陥った。この後どうなってしまうのだろうか。傑たちの運命やいかに!
次回へ続く
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