第6話『ダラトナ』

前回ミールの森から脱出し、スライムのシズクを仲間に引き入れた傑。


森を抜けた先で街を見つけた傑達は街を目指して歩き出す。


傑達の活躍をぜひご照覧あれ


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傑「いや〜どうしたもんかね〜」


現在、シズクを抱えながらこの雄大な平原を闊歩しているところである。そんな俺はある悩みを抱えていた。


傑「お前をどうやって隠せばええんかなー」


シズク「バックとかがあればその中に隠れるとかいう手段が使えたんだけどね。」


ついさっき仲間に加わったスライムを隠しながら街の中に入るにはどうすれば良いのかと苦悩しているところである。聞いた話によると魔物を街の中に連れ込むのがダメらしいからどうしたものか。


そんなことを考えてると女神の声がする


イフ『一応【テイマー】みたいなもんだし、自分の従魔ですって誤魔化せば?』


傑「テイマーって、魔物とかを従えてる職業だっけ?この世界にもそういう概念あるのか。」


【テイマーの解説】

・職業:従魔師テイマー


・魔物を従わせ、操る職業。


・一部の人間は魔物を従順にする魔法を持っており、それで魔物を従えている。従えられた魔物は【従魔】と呼ばれている。


・何匹従えられるか、どれほど強い魔物を従えられるかは個人の才能や努力、魔物とどれほど友好関係を築けるかによって決まる。




確かにテイマーのフリをすれば突破は容易か……とりあえずはその方面で考えるとしよう


シズク「……前からずっと気になってるんだけど結局誰と話してるの?」


……んな事聞かれてもどう説明すりゃいいんだってばよ。

女神に話しかけられてマース。なんて言って信じるやついるのか?


イフ『このままだと傑が狂人になっちゃうからシズクとも通信繋ごうか?』


傑「えっ?そんなこと出来んの?」


イフ『私だって神様なんだからそのくらいのことできて当然だよ。』


なら最初からしろよと思ったが口には出さないでおこう。


イフ『えーっと……これでどうかな?あーあー聞こえてるー?』


どうやら聞こえたらしくビクッとシズクの体が震えた。


シズク「うわっ!?何この声……気持ち悪っ!」


イフ『酷っ!そんなに言わなくてもいいじゃん……』


見えないが罵倒されたショックでうずくまってるイフを幻視してしまった。


傑「あ〜、一応コイツが俺が話してた相手だ。」


イフ『はいはーい♪みんなの女神様のイフちゃんでーす♪きゃるん♪』


傑「うぉえっ……!キッツ……」


俺はいつものイフとのあまりのテンションの違いに吐き気を催してしまった。


イフ『あんまり言いすぎると天罰くだすよ?』


傑「すんませんでした!」


こいつの事だからこれ以上弄ったら何らかの手段で俺にとって不都合なことを仕掛けてくるに違いない……


シズク「なかなか変わってる人?だね。でもさっきの自己紹介はキツかったからあのテンションはやめてね」


イフ『さっきのってそんなにキツいの?……まぁいいや。で、これからどうするの?』


傑「切り替えの早さだけは一流だな」


イフに話を振られたので、森の中で考えてた世界を救う計画を話していく。


傑「街に行ってこの世界の常識と有益な情報を得る、役に立ちそうなものを買う、資金確保、その町の偉い人と交流する。これらを第1目標に設定する!」


イフ『おー。雑な頭で考えた割には良い計画だね。』


傑「お前は俺を貶さないと死ぬのか?」


シズク「……世界を救うとかそんなことより今お腹がすいて死にそうなんだけど」


そう抗議するシズクの体はさっきよりしぼんでるように見えた。お腹が減ると体積が減るのね。


傑「そもそもお前何食うの?」


シズク「魔力……」


傑「うーん……魔力かぁ……おーいイフ?シズクのご飯って俺の魔力でもいいのか?」


イフ『多分大丈夫だよ。魔力の受け渡し方は……うーん……あんまり言いたくないな……』


何故かイフは話そうとしたがらない。そんなにもったいぶられるとめっちゃ気になるんだが。


傑「まぁいいからとりあえず教えろよ」


イフ『受け渡し方は……「もうめんどくさいからいただきまーす」


傑「……え?」


シズク「ジュルジュル♪」


シズクが俺の首にまとわりつき口?で吸ってきた。俺の中にある魔力がどんどんと吸い出されていく。


傑「ぬわぁぁああああああ……!!」



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シズク「ふぅ……ごちそうさま♪」


シズクは魔力が回復した影響かしぼんだ体から元のまん丸ボディに戻った。気の所為じゃなければ一回り大きくなった気がしないでもない


傑「……ごっそり持ってかれたんだが……っていうか受け渡し方法アレしかねぇの!?」


イフ『魔力の受け渡しは受け取る側が与える側の首から魔力を吸うことによって出来るっていう不便なシステムだからね。まぁ実質蚊みたいなもんだよ。』


でもこれ仮に男とかにやられたら最悪だな。

……フラグじゃないからな?


傑「……満腹になったか?」


シズク「うん♪満足!」


ご満悦なのかぽよんぽよん飛び跳ねてる、その代わり俺はげっそりしたけどな。


傑「にしても俺も腹減ってきたからさっさと街に行くか。あともう少しで着きそうだし。」


あと街までおよそ数百m圏内まで来たところで俺はあるものに気がつき街の入口付近を凝視した。


傑「あ〜、予想はしてたけどやっぱりあるか〜。検問所……」


元の世界では通行人やその所持品などを調べる際などに設けられる施設だが、この世界でも大した違いはないだろう。

そして検問所に多くの人が列をなしているのが見えた。


傑「恐らくあそこで身分証明とかして街に入るのが普通なんだろ?」


異世界転生ものでよく見たから多分合ってると思われる。


イフ『まぁそうだね。どうするの?身分証明できるものないでしょ。金出せば入れるけど、1文無しだし』


傑「まぁ待てよ。行かないことにはチャンスもつかみ取れねぇからな。やるだけやってみるとしよう。」


そう言って俺達は街の入口の方に向かって歩いていく。


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《30分後》


傑「しゃあっ!着いたぞ!」


入口付近に到着した俺たちは列の後ろの方に並んだ。


街の外からでも分かる賑やかな人の声に思わず感極まってしまう。


傑「うっわぁ!人がいるって感じパネェ!」


シズク「そんな大声出さないでよ。他の人から不振な目で見られたらどうするの?」


シズクからお叱りを受けたので大人しく、順番が来るのを待った。


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《1時間後》


長い長い待ち時間を経てようやく俺たちの順番が来た。


兵士「次!」


俺たちを呼んだのは見るからに頑丈そうな鎧を身にまとった男。背中には大剣を携えており、とてつもない迫力がある。


傑「は、はい!」


兵士「……ふむ、見慣れない服装をしているな。魔物を連れてるということはテイマーか。身分を証明出来るようなものはあるか?」


まぁ、確かに日本の制服ですから、この世界の人が見慣れてないのもしゃあないですよね〜。


傑「あっ……も、持ってません。」


兵士「なるほど。だったら100Gの通行料がかかるが持ってるか?」


※1G=10円


ど、どうする俺!それっぽい嘘を並べて誤魔化すしかねぇ!異世界で通じそうな嘘!


傑「あっ……実は俺……盗賊に金品を持っていかれまして……だからこんなに服とかもボロボロになってて」


森で寝たり、地面に這いつくばったりしたから俺の服は泥で汚れてる。もし仮に盗賊があまり居ない感じの世界だったら事情聴取とかされそうだから深く聞かないでくれー!


兵士「ふむ……」


ど、どうだ?兜で顔が見えないからどんな表情してるのか分かんねぇ!怖ぇ!


兵士「それは災難だったな……よし、今回は特別に通行料を無しにしてやる。次からはちゃんと払うように。」


傑「あ、ありがとうございます!」


勝った……!計画通り……!


兵士「ようこそ。この街【ダラトナ】はお前を歓迎するだろう。」


ダトラナ?この街の名前か。

俺はその言葉を聞くと深々と頭を下げて、街の中に入っていった。


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《ダラトナ 街中》


傑「うぉおお!異世界の街って感じ!いいねいいねぇ!」


俺は目の前の街並みを見て、テンションが爆あげになっていた。やっぱり定番の中世ヨーロッパの街並みって感じだな。


シズク「で、まずはどこ行くの?」


イフ『私はギルドとか行った方がいいと思うよ。情報収集とかできるし』


ふっ、何を言うかと思えばそんなの決まっているだろう。


傑「よし!おばちゃんを見つけるぞ!!」


「『は?』」



困惑する2人を無視して傑はおばちゃんを探すためにこの街をさまようのであった!この街で傑は何を得るのか。これからの出会いに注目!


次回へ続く

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