第3話『脅威』
前回、恥も外聞も捨てスライムに土下座をした傑。
森から出るための準備を進めるが、この先この森で大きな試練が待ちかまえていることを傑達はまだ知らない。
傑達の活躍をぜひご照覧あれ
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俺がスライムに対して土下座してから10分ほどが経過した。
そろそろ背中が痛くなってきたので続けるべきか悩んでいる。
スライム「……とりあえず顔上げたら?」
傑「それもそうだな、よいしょっと。」
俺は下げていた頭を上げ、スライムに目を合わせた。スライムに目はないので目があっているのかは不確かであるがなんとなくあっている気がするので大丈夫だろう。
イフ『君は一々面白い行動をするから見てて飽きないね。スライムに土下座する人なんて初めて見たよ。プライドというものが何一つないね』
プライドは浜で死にました。
スライム「……それでキミ迷子なの?だとしても僕にキミを助けるメリットがなくない?」
傑「何を言うか!人助けはメリットデメリットを考えてやる物じゃないだろうが!困ってる人を助けるのは当然のことでしょうが!ってことなんで無償で助けてください!」
イフ『……なんていうかあれだね。君は相当なクズなんだね?魔法を当てて土下座までしたあとのセリフとは到底思えないね。』
クズ上等だ!そもそも命の危機で道徳とか考えてる暇ねぇよ。
もしスライムくんが道案内を拒否してきたそのときは魔法の的になってもらうことにしよう。
スライム「……なんかキミを見捨てたら襲いかかられそうな予感がしてきたよ……とりあえず森から出してあげるから大人しく僕の後ろについてきてね。」
傑「あざーす!」
俺は先導するスライムくんの後ろをRPGの仲間がごとくへばりついて歩く。うーん、高校生がスライムに引き連れられる、ゲームとかだと逆な気がするんだけどなぁ。
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《二時間後》
傑「……ぜぇ……はぁ……な、なぁ……スライムくんよっ……人間はそんなに無尽蔵の体力があるわけじゃねぇんだ……休憩……休憩を所望します……」
スライム「まだ歩き初めて2時間程度だよ?こんなんじゃあこの森出るまでに死んじゃうよ。」
こんなところで死ぬわけあるかと高を括っていたらイフの声が頭の中にこだました。
イフ『まぁ死ぬだろうね。このスライムが他と比べて無害ってだけで、他の魔物は話をする間もなくこっちを殺しにくるだろうし、この森に長く留まるのは得策じゃない』
つまり……ひたすら歩くしかねぇってことですか……陰キャ学生に長時間草木が生い茂る森の中を歩かせるとか酷いと思うんですけどねぇ……
傑「でもこんな歩きっぱなしだと森出る前に脱水症状で死ぬと思うんすけど、そこらへんなんか考えあるんすか?」
スライム「まぁ最悪、僕の体の一部をあげるから問題ないよ」
ぬ?このスライム一体何を言っておるんだ?
あげる?……体の一部を?
イフ『ふふん……よく分かってなさそうな無知な君のために教えてあげようじゃないか。このスライムは【アクアスライム】と呼ばれる個体で体の全てが水で構成されているんだよ。ついでにスライムについて大まかに説明してあげよう』
傑「お願いしまーす」
【スライムの解説】
・種族名:
・体の中心に赤い塊があり、その塊を破壊すると撃破することが可能となる。
・様々な場所に生息しており、周りの環境に適応し、姿を変えるので多くの派生種がいる。
・魔力を含んだものを好物とする。
中には大量の魔力を取り込むことで既存の姿や性質から変化する個体もいる。
これらの現象は【進化】と呼称されている。
また、他の魔物でも進化は確認されている。
傑「つまりスライムくんの体の一部を飲み込めば水分補給になるってこと?」
「『そういうこと』」
ほへー便利やね。って言ってもさすがにスライムの一部を飲み込むのは現代日本で生活していた俺にとっては忌避感があるというか。なんかやだ。
傑「にしても進化か〜、ロマンあるね〜。スライムくんは進化しないの?」
スライム「そう簡単に進化できてたら苦労してないよ。大量の魔力を取り込むって他の魔物を殺して生命ごと魔力を喰らったりしないとできないからね。」
なるほど。ようするに強くなりたければ喰らえってことだな。やはり地上最強の教えはどの世界でも通づるようだな。
スライム「って歩くペースが下がってるよ!僕よりも身体大きいんだから気合い出して!」
俺は根性論をぶん投げてくるスライムくんに怒りを覚えながら日が沈むまでただひたすらに歩く。とはいえ運動不足の体なのですぐにバテ始める。
傑「あ、足がっ……もう……ダメぽっ……」
足裏が痛すぎてもうまともに歩けねぇ……足場が悪すぎんだよここらへん!
スライム「まぁ。そろそろ日も暮れるし休憩しよっか。じゃぁちょっと乾いてる枝とか持ってきてよ。それ火種にするから」
スライムくんの指示で小枝などを調達してきて、焚き火をすることした。
イフ『サバイバルで必要なのは火、水、食料だとされているから後は食料があればいいんだけどね。』
傑「火は俺の魔法で起こせるからな。そこら辺にある木の実とかキノコでいいんじゃないか?」
スライム「毒があるか見分けがつかないから危険だけどね。……ってことは断食するしかないね。」
う、嘘だろ……飯を食わねば戦はできぬって言うだろうが!さっきから空腹で腹が鳴っているっていうのに……
傑「……さっさとこの森から脱出するぞっ!!飯がないなんて耐えられん!」
俺は前より一層深く森から出る決意を固めたのであった。
イフ『……にしても珍しいね。』
傑「ん?何が?」
イフ『本来ならこの森には多くの魔物が生息してるからまだスライム1匹としか遭遇してないのは結婚珍しいんだよ』
傑「へぇー、つまり俺は運がいいのか?」
スライム「さっきから君は誰と話してるの?」
傑「気にすんな。俺は頭がおかしいんだ。」
スライム「な、なるほど?」
俺の発言にスライムくんが引いている様子。すごいメンタルにくるね。
傑「ねぇねぇスライムくん。ちょっと質問があるんだけどさー。」
スライム「なに?」
傑「この森って魔物が多いって聞いたんだけど俺らが歩いてる最中に魔物って会ってないじゃん?これって有り得ることなの?」
スライム「うーん。まぁ確率的にないことは無いけど普通は無いね。考えられる可能性としては僕らが疲れるのを待ってるとかじゃない?」
傑「えっ、まじ?魔物ってそんなに賢いの?」
おで、敵コロスって感じの頭悪いやつしか居ないと思ってたぜ。
スライム「思っている以上に魔物は賢いからね。でもここらへんで積極的に他生物に襲いかかってきそうなのは一種類くらいしかいないから、運が悪くなければ大丈夫だよ。」
傑「…………へ、へぇー?そ、そうなんだー……ちょっと聞きたいんだけどさ……その一種類って白い毛並みで四足歩行の牙が鋭そうなしっぽとか生えてる系の獣?」
スライム「そうそう!教えてないのによく分かったね。」
傑「……なぁスライムくん……あれってその魔物だったりする?」
俺がスライムくんの背中側にある奥の木に指を指す、そこにいたのは白い毛並みで四足歩行、鋭い牙が見え隠れする動物で例えるなら狼のような生物がいた。
スライム「……うん……その魔物で合ってるね。」
確認を終えた俺はスライムくんを肩に乗せて、狼(仮)とは反対方面を向く。
傑「よーし……逃げろぉぉぉぉおおおおおおおお!!」
運悪く魔物に狙われてしまった傑たち。謎の獣の魔の手から無事に逃れることができるのか!
傑の活躍にご注目ください!!
次回へ続く
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