第10話 意気消沈していく次期当主候補筆頭


『勝者 アーク・ブレイ! 一回戦に続き名門ヤラレール家のものを引いたが、危ういところもなく勝利! 今回は魔法を使った様子もなく剣により圧倒! どうやら魔法だけでなく剣の腕も優秀なようだな!』


『は、ハハハ……。 無論、あれも武勇に優れる我がブレイ家のものですからな。ハハハ……』


 二回戦目は一回戦で試し切りをして、どれくらい調節すれば塩梅がいいか把握していたこともあり、戦っている体を繕えた。

 これなら実力はバレないし、父が満足がいく程のものでもないだろう。


『い、いやはや、絶好調すぎるくらい絶好調ですな……』

 

 勝つと意気消沈するなこいつ。

 俺が勝つたびにディアブロが元気がなくなっていることを見るに、今回のことで俺がまずいことがあるらしい。

 次期当主に成りたがっているこいつにとってまずいことといえば、次期当主候補筆頭の地位が揺らぐことだが、そのことに対してはとんと覚えがない。

 先日、ホープ家が気まぐれに仕事をして、俺が剣聖を倒したと言う情報については騎士団中に貼り巡らせた網を使って、統一騎士団長から第一除く全ての騎士団長に封殺させたので問題はないし、それ以外にも引っ掛かるところもないからな。

 普通に考えれば力の大きいホープ家でもどうにかできなかった人間が次期当主になることなどどんな手を使ってもできないことなどわかるはずなので、流石にまだ次期当主となる目があるとは思わないはずだ。

 例え念の為に殺すのを狙っているとしても親族殺しはこの国一番の重罪だ。

 流石にわざわざ取るに足らないリスクを潰すために、より大きなリスクを負うバカではないだろう。

 第一騎士団の方で闘技会を利用した何らかの作戦をやっているとした方が現実的だろう。

 まあ第一騎士団にとって都合が悪かろうが、俺は優勝の景品である『デモリッシャー』を諦めるつもりはないが。


「「「流石です! アーク様!」」」


 控室を戻るといつコロシアムを掌握したのか、メイドの代わりに部下たちが詰めていた。

 内装が豪華なものに変わっており、どこからくすねて来たのか最高級品の酒が用意されている。


「椅子はどうした?」


「あのような見窄らしい椅子にアーク様を座らせることはできません! 私を椅子にお使い下さい!」


 部下の一人が四つん這いになりながら、椅子の所在について答えたのでそのままそいつに座る。


「うおおおおお! 感激だ!」


「黙れ」

 

 こいつらの情熱が狂っているのはいつものことなので無視する。

 不便よりも便の方が多いからな。


「最高級品のワインです! どうぞ!」


「ご苦労」



────


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