第8話 闘技会開幕


 闘技会開催の1週間の間にデバフアイテムである『サノスリング』を10個量産し、下準備を終えた。

 サノスリングは指輪系統の呪いのアイテムでは一番の代物だ。

 現在10個装備することとデバフ魔法を総動員することで、俺のステータスは通常時の7割ほどまでダウンしている。


 おそらくこれだけ下げても、騎士たちの中に俺を圧倒できるものはいないが、戦う体を見せるくらいはできるだろう。


「弟よ、久しいな! お前専用の待合室を用意してある! この兄についてくるがいい!」


 万全の状態で闘技会が開かれる武闘会場──コロシアムに着くとブレイ家長男のディアブロが顔を見せた。

 確かこいつは今回の闘技会で運営委員に選ばれているので、不肖の末弟とはいえ参加者の身内に挨拶の一つもよこさないというのは体裁が悪いのだろう。

 挨拶だけでも十分なところを専用控え室を用意したところを見ると、第一騎士団副団長としての度量もついでに周りに見せつけようとでもしているといったところか。


「メイド! 弟に茶を用意しろ! では、アーク、ゆるりとここで待つがいい! 兄は仕事に戻る! フハハハハハ!」


「騒がしいやつだ」


 ディアブロはバカ笑いをしながら、控え室去っていく。

 大概テンションが高い時は疾しい事を隠している事が多いので、何かしょうもない仕込みでもありそうだ。


「どうぞ」


「ご苦労」


 差し出された茶に鑑定魔法をかけると案の定、毒が盛られていた。


「毒が入っているな」


「!? 申し訳ありません! ディアブロ様に命令され仕方なく──」


「ふむ」


 せっかくなのでそのまま毒を飲み干す。

 俺の状態異常耐性を突破すれば、複合毒なので毒と麻痺、混乱の状態異常でさらにデバフをかけられるはずだが。


「ど、毒と知っていながらお飲みに!?」


「ダメか」


 流石に茶に混ぜられて薄められたものでは耐性は突破できなかったらしい。


「あるだけ毒の原液を持って来い」


「は、はい!?」


「毒の原液だ」


「は、はい! 畏まりました!」


 給仕のメイドに命令を出すと空間魔法のアイテムボックスから毒を選別する。

 毒は一時的なものであるが、他の状態異常に比べて通りやすく、動きを遅延させる麻痺も合わせて入ることが多い。

 使い様によってはクラフトで作る呪いの装備や魔法よりも有用なデバフになる。

 クラフトで効能の強い最高級品を作れば、そこらのモブ相手でも満足感のある戦いをすることができる様になる可能性もなきにしにあらずだ。


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