第4話 く、体が勝手にスクワットを!


 仕事をサボってできた自由時間で俺はこの『ドラゴンテイルズファンタジー』のやり込み要素をやることにしている。

 色々とやってきたが今やり込んでいるのは、ステータス低下や呪いや麻痺などのバッドステータスを引き起こす呪いの装備やアイテムのクラフトだ。

 クラフトが楽しいということはあるが、最近セルフでデバフを盛れる限界まで盛ってモンスターを相手にしても体に負荷かからず、今いち満足感がないのだ。

 この手のゲームでいえば、戦闘が醍醐味だというのに、それが無に帰してしまうの俺的になしだ。

 早く呪いのアイテムを作って、デバフを嵩まししてなんとかこの状態から脱さなければいけない。


「オールステータス低下と錯乱状態付与の『サノスリング』を作るためにはあと『ゴルゴーンの邪眼』だけだ。洞窟を魔法で走査して位置を割り出すか」


「運がなかったな。王国騎士」


 俺が魔法で走査をかけようと思うと、森の木々の中から帝国の赤い竜紋章をつけた鎧の一団と比較的軽装の男が姿を現した。

 帝国騎士たちがなぜこんなところにいることはわからないが、軽装の男の素性ならわかった。

 こいつはゲームで一番の難所と言われるラスボス三連戦で一番目に出てくるボス──剣聖オルフェウスだ。


「ではさらばだ。オルフェウスの刃を受けることを光栄に思え」


 オルフェウスは構えたロングソードを振い、同時に3方向から斬撃を生じさせた。


「光栄に思えか。敗者が恩着せがましい態度をとるものだな」


「は?」


 周りに常時展開させている反射魔法が発動し、三つの斬撃がそのままオルフェウスに還り、バラバラに切り裂く。

 不意打ちなど掛けなければ、最近開発して試験運用してたこいつを解いて相手をしてやったというのが馬鹿な奴だ。


「「ぎゃああああああ!!」」


 オルフェウスが崩折れると背後に控える騎士たちにも反射したオルフェウスの刃が及び、身をバラバラに引き裂かれていた。


「……1!……10!……100! く、体が勝手に!」


 倒したことを確認すると負荷が足りなかった体が半自動的に鍛錬──スクワットを始めたので、気合いで静止する。

 幼少期の頃に負荷が足りなかった時にいつもやっていたため癖になっており、意識せずに敵を倒すと必ずやってしまう。

 困った癖だ。


「剣聖の死骸をこのままにしておくのも面倒が起きるからな。帝国に蘇生させて突き返すか」


 流石にストーリーで核の部分を担うこいつを死んだままにするのは危険すぎる。

 ストーリーからできるだけ逸れて欲しいという気持ちはあるが物語の土台が原型のないほどまで破損してしまうと、どういう動きをするのか全く予想がつかなくなってしまう。

 学園のストーリーからずれて、主人公が貴族を虐殺するような謎のルートが新設されたら目も当てられない。

 オルフェウスの一団を蘇生と同時に帝国に転移させる。


「さて、ゴルゴーンの搜索を開始するか。お、アホが放った斬撃が当たったか。探す手間が省けたな」


「シャアアアアアア!!」


 斬撃の一つが切り裂いた洞窟から、傷ついたゴルゴーンが出てきた。

 迷惑な奴だと思ったが、モンスター探しの役には立ったようだ。


 

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