第2話 十年の積み重ね
「隊長閣下! 第四騎士団団長から作戦会議に参加せよと通達がありました!」
「ご苦労、アインセル。 無論、返事は否だ。 世迷言をほざくな豚と伝えておけ」
「は! 了解しました!」
十年の時が経った。
俺はあの後から徹底的に無能ムーブを決め込むことにより、見事次期当主──死亡フラグを回避し、騎士団の掃き溜めと称される無能のボンボンばかり集まる第四騎士団の最底辺部隊の隊長に就任していた。
一時は国の勇者ではないかと期待されている上、両親が親バカなこともあり、無能だと思わせるに当初は中々苦労したが、今は愚か者として盤石な地位を築いている。
招集は徹底的に無視、報告書捏造に、振られた仕事は常にバックレ。
隙のない無能ムーブをかましてきた日々の積み重ねが俺を次期当主の座から一番遠いところに至らせてくれた。
「アーク様! 敵軍がこちらに向かっております! ご命令を!」
「敵を迎え撃ち、俺のために命を散らせ」
「我らが神、仰せのままにぃぃ!!」
戦えという当たり前のような命令を出すと、せめての手向けに展開する騎士隊500人に一斉に強化魔法をかけて、俺はバックレた。
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