次期当主となると主人公に殺されるので無能ムーブかましていた俺、敵を倒してスクワットをしていたところを婚約者のヒロインに目撃されて実力バレし、当主争いのダークホースになってしまう

竜頭蛇

第1話 スクワットからの記憶解放


「99999996……99999997……99999998……99999999……100000000!」


 アーク・ブレイ(5歳)──俺は国内討伐者0人の最強の竜──エンシェントドラゴンを討伐した後に物足りずに始めたスクワットを切り上げると立ち上がる。

 まさかこれほどまでに歯応えのない奴とは思わなかった。

 スクワットはしても1000回くらいで程よい負荷を体に掛けられると思っていたというのに。


「お、なんかクラクラする……」


 突如として視界がグラつくかと思うと、前世の記憶が思い出された。


「思い出した! なんてことだ!」


 この世界は俺が前世で社畜をやっていた時に寝ることを放棄してやったゲーム『ドラゴンテイルズファンタジー』の世界。

 そして俺は今その世界で最序盤に主人公に決闘を申し込んで返り討ちにされ、殺される噛ませ──ブレイ伯爵家次期当主アーク・ブレイに転生している。

 今こうして馬脚を表しているのは次期当主決定待った無し──死亡ルートまっしぐらである。


「クソ! なぜか昔から強くならなければと思っていたが、記憶はなくとも魂に刻まれていたとでもいうのか! いや確かに強ければなんとかなるパターンはあるが、それはごく限られた時だけだろ! 転生した直後に記憶がセットじゃなかったせいで墓穴を掘りまくってる!」


 なんとなく死ぬのを避けないと考えれば強くなることを選ぶのはわかるが、それではゲーム上の強力な死亡フラグには心許ない。

 大概の主人公は負けそうになった瞬間、謎の力が覚醒してステータス無視して敵をフルボッコするのはあるあるだし、本来のストーリーから逸れないように謎の強制力が働いて、主人公に勝ったとしてもガス爆発だったり、謎の病、隕石直撃だったりと突発的なトラブルが起こり、即死する可能性が十分あり得る。

 今俺がしなければならないのはもはや舞台であるアルバトロン学園にも上がらずに、噛ませ役のアークがいない状態でストーリーを始めさせ、もはや物語の強制力でも修正不可能レベルのストーリーの歪みを起こすことである。

 だというのに魂に死ぬのを回避しなければという思念が残っていたために、ブレイ家にいる13兄妹のうち一番功績を立てて、わずか5歳にして次期当主ほぼ確定のところまで行っている。

 もはや当主争いRTAをしていたと言っても過言ではないレベルだ。

 これはまずい。

 非常にまずい。


「なんとしても次期当主の座から降りて、アルバトロン学園──処刑台に行くのを回避しなければならない!」


 

────


よろしければ、フォロー、いいね、星お願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る