スキルは“衝撃吸収”です。テイマーではありません。 〜何度も挑んでくるドラゴンがいつの間にかペットになりました〜

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スキルは“衝撃吸収”です。テイマーではありません。 〜何度も挑んでくるドラゴンがいつの間にかペットになりました〜



「あなたが授かったスキルは、"衝撃吸収”となります」




 ルンスは厳かに告げた神官の顔をじっと見つめる。


 一方神官は、ルンスが喜びも驚きもせず、じっと見つめてくるのに居心地悪そうに体を揺らした。


 お互い見つめあうこと一秒、二秒、三秒……遠くの席に座っている両親からかすかに咳払いの音が聞こえ、ついにルンスは立ち上がる。




「ありがとうございます」




 ポソリとつぶやいてルンスは一段高くなった祭壇から降りて、両親の元へ戻った。




「"衝撃吸収 ”って聞こえたぞ」


「何なのかしらねぇ。 聞いたことないけど」


「ルンス、お前はわかるか?」


「なんとなく」


「だったらいいか。よし、なんか食って帰るぞ。 遅くなるとディージャがむくれる」


「あら、あの子はほおっておいて大丈夫よ。隣のおうちのジェン君に夢中だもの」


「な! ディージャはやらん! あいつはまだ二歳だ」


「二歳はもう十分成犬よ。この前もルンスを吹っ飛ばしてたじゃない。ジェン君も体格がいいから、強い子が生まれるわよ」




 自分のことはそっちのけで、愛犬の話で盛り上がる両親の横を静かにルンスは歩く。


 そんな彼の様子を両親は特に気にしない。


 だってルンスは物心ついたころから今日十歳の誕生日を迎えるまで、いつもこんな感じで、寡黙で、目立たず、おとなしいからだ。




 そんなルンスが、スキル授与の儀式の三日後に父親に珍しくおねだりをした。




「体術を学びたい?」


「うん」


「剣術じゃなくて?」


「うん」


「分かった。 明日一緒に道場に行ってみよう」




 そして入門した拳闘道場に通って三日、ルンスの父親は道場の師範に呼び出された。




「え? ルンスはもう来るなと?」


「いやぁ、来るなと言ってるわけじゃないんですよ。意味がないって言ってるんです」


「どういうことです?」


「お宅の息子さん、変なスキル持ってない?」


「変な……かどうかは分かりませんが、"衝撃吸収”というスキルがあります」


「ああ それそれ、それのせいだ!」




 めんどくさそうにしながら、師範は道場で練習する他の生徒を指さす。




「ああやって、こぶしを繰り出したり当てたりするんだけどよ、ルンスには効かねえんだわ。


 ーーおい、ルンス! ちょっとこっち来い!」




 呼ばれたルンスが正面に立った瞬間、 師範はその戦いで分厚く硬くなった拳をルンスの顔面に向かって繰り出した。




「な!」




 あわてて父親がその前に立とうとするが、それよりも早く拳はルンスに届いてしまった。




 ーーフワリ




 こぶしから出された風圧でルンスの前髪が舞い上がる。




「え!?」


「見ただろ? 俺の渾身のパンチも、吸収しちゃうんだよ、息子さん」


「は、はぁ」


「ルンスが殴る方だったらいいんだが、受けになると全く練習にならねえんだな、これが」


「はぁ……」




 喋りながら二度、三度と師範は拳を繰り出す。


 その度にルンスの前髪がフワリ、フワリと舞い上がり、ルンスはくすぐったそうに目を細めた。


 父親は「は」の形で口を開けたまま、そんなルンスの姿を見つめる。


 顔面に鋭いパンチが向かってきても、全く恐れてもいない表情だ。おそらくスキル効果が分かっていたからだろう。


 短い間だったから入会金のみで残りの月謝はいらないと言われた後、親子は道場を連れ立って出る。




「ルンス、他の道場にも行ってみるか?」


「いい」


「そうか。じゃぁ、もし何かやりたくなったら言えよ」


「うん」








 そんな物静かなルンスは数年後冒険者となり、あるパーティーの盾役として活動していた。




「ルンス! 前からボアが来るぞ」


「ん」




 まっすぐ足音を響かせて向かってくるボアの前に、盾も何も装備していないルンスがふらりと立つ。するとボアが急ブレーキをかけるかのようにルンスの前で止まった。


 何が起こったか全く分からない顔になったボアの頭を、ルンスはぽんぽんと叩く。




「おし! 行くぞ!」




 剣士の声がかかり、他のメンバーがそれぞれの武器を持ってボアに攻撃を始めた。


 その間もルンスはボアの前に立ち、その手をボアの頭に載せ続けていた。


 戦闘が終わり、片付けも済んだところで女剣士がルンスに声をかけた。




「ちょっと、ルンス、盾役終わったらどいてよね」


「でも、ルンスが移動すると暴れるぜ?」


「多少暴れたって、こっちでぼっこぼこにしてるんだから関係ないでしょ。 いい? ルンス、次からはどいて」


「ん」




 ルンスは静かにうなづき、黙って食事を続ける。




「おい、言い方きついぞ。あいつのスキルに助けてもらってるんだからもっと優しく言えよ」


「でも、ルンスのスキルまだレベル1なんでしょ。もう十七歳にもなって信じられない。もっとスキル伸ばしてくれればいいのに」


「それはそうかもしれないけど、今でも十分だろ。盾役としては」


「はぁ、あんたがそんなんだからルンスも成長しないのよ」




 聞こえてくる剣士たちの会話に気にした様子もなくルンスは黙々とパンにかじりつく。


 顔を上げれば見えるのは高く積まれたレンガの壁。


 ここはダンジョンの奥深く、大型魔獣も現れる区域。こんな場所でゆっくりと時間を取って休憩できるパーティーはそうそういない。


 しかしルンスのスキルのおかげで突然襲われたとしても、攻撃体勢を整えるだけの時間を稼ぐことができる。そうやって着実にルンスのいるパーティーは力をつけていった。






 魔の山と呼ばれるドラゴンが支配する山への挑戦を命じられたのは、ルンスが十九歳になったころだった。


 相変わらずスキルレベルが1のまま、それでもルンスは確かにパーティーの盾役として立派に役目を果たしていた。




「だぁ、なんだってこんなとこに来なきゃいけねえんだよ」


「仕方ないでしょ、あの馬鹿王子がドラゴン見たいとか言いだすから」


「だったら適当にワイバーンでも見せとけばいいじゃねえか」


「だよなぁ。リーダー、そうしようぜ」


「それをやった前のパーティーが冒険者資格をはく奪されそうになったらしい」


「まじか」


「何とか王様が止めて、それで降格処分で落ち着いたらしいけど」


「降格でも十分痛いわよ! 何とか足の一本でも持って帰るんだからね!」


「はいはい。 ルンス、頼んだぜ。ドラゴンの攻撃を止められるのはお前だけだ」


「ん」




 仲間たちの会話を黙って聞いていたルンスが小さくうなずく。


 背はずいぶん伸びたが、 子供のころから変わらず体格は細いまま。ひょろりとしたルンスは魔の山を黙々と登る。


 衝撃吸収スキルがあるとはいえ、魔の山が発する熱には耐性があるわけでもないのにその表情は変わらない。




 連なる山々を越え、ドラゴンが棲む山の中に入って半月。


 ついに目的のドラゴンがパーティーの前に立ちはだかった。




「こ、これが……」


「む、無理よ! 城並みにでかいじゃない!」




 視界を覆いつくす巨体が、空からパーティーへと迫りくる。


 周りの木々がその風圧だけで根こそぎ音を立てて倒れていく。パーティーメンバーも耐え切れず、お互いに体を寄せ合ってどうにかその場にしがみつくのに必死だ。


 と、その前にルンスが立ち、暴風がやんだ。


 いや、まだ周りは暴風で荒れ狂っているが、ルンスとパーティーメンバーの前だけは嘘のように凪だ。




「いいぞ、ルンス!」




 剣士の言葉に、ルンスは首だけで振り返って頷く。


 一方、いつまでたってもあきらめない人間に業を煮やしたのか、ドラゴンが上空から一気に急降下する。


 今度は木だけではなく、周りの石や砂が巻き上がりメンバーの体のそこかしこに当たり始めた。


 ルンスのスキルではそれら全てをカバーすることなどできず、メンバーから痛みを訴える悲鳴が上がる。


 急降下してきたドラゴンがついにルンスの眼前に迫った瞬間、




 ーーゴウ!




 ルンスの周りに強烈な風が吹く。


 舞い上がった土埃が晴れたその場所には、先ほどまでの勢いが嘘のように静止したドラゴンと、その鼻先を撫でるルンスがいた。




「ギュオ!?」


「ん」




 ぽんぽん




 ぽんぽん




 突然自分の意思とは反対に動きが止まり、ポカンとする龍。 寄り目になって鼻先を見るが、自分の鼻よりも小さな人間の姿を見ることはできない。


 おかしい。ならばもう一度と、再度高く舞い上がる。




 ギュワォオオオオオ!




 遥か空高くからドラゴンの怒号が響き渡る。


 その太い首を下に向け、小さく翼を折り畳み、まるでミサイルのようなスピードで木々がなぎ倒されて開けた場所に立つルンスに向かって落ちてくる。




 しかしーー




 ゴウ!!




 ぽんぽん




 ぽんぽん




 何度やっても結果は同じ。


 風圧で土がえぐれ、クレーターのようになってもルンスは変わらずその中心に立っている。


 何度挑んでも倒れないルンスに、ドラゴンも諦めるわけにはいかず、攻防はすでに十回以上も続いている。


 先に耐えられなくなったのはパーティーメンバーたちだった。


 嵐の中でリーダーがルンスに向かって叫ぶ。




「ルンス そいつどうにかしろよ!」


「ん」




 ーードゴン!!




 ルンスがそういった刹那、巨大なドラゴンが弾き飛ばされ視界から消えた。




「は?」


「え!」


「うそ!」


「ん」


「ええ!?」


「ル、ルンス?」


「ん?」


「今何やったんだ?」


「ん〜」




 ルンスは首をかしげながら、肩をぐるぐる回す。




「んっと、衝撃たまった。出す」


「出す」


「ん」


「え、衝撃って溜められるの?」


「ん」


「今までのも?」


「ん」


「そ、それでドラゴンを吹っ飛ばしたって?」


「ん。あ、レベル上がった」


「ええええ!」




 どうやら蓄積した衝撃を使うとレベルが上がるらしい。


 そうやってドラゴンとの戦闘は決着を見せたーーかのように思えた。








 一年後、ルンスの前で項垂れ、涙を流す剣士がいた。




「ルンス、 すまない。俺たちはもうルンスとはやっていけない」


「ーーん」


「私たちだって、一緒にいたいのよ! だけど! あの馬鹿ドラゴンが!」


「ルンスがいなければ俺たちのパーティーはここまでこれなかったのは痛いほど分かっている。だが……」




 そう言って悔しそうに剣士は握ったこぶしを震わせる。




「あの馬鹿ドラゴンのせいで! なんで、ルンスと離れなくちゃいけないのよ!」


「しかし、このままでは冒険者としてやっていけない」




 ギュアアアア!




 ふわり




 ぽんぽん




 そう話す間にもドラゴンが突進し、それをルンスが止め、そして鼻先をぽんぽんと撫でる。


 このやり取りももうすでに数百回以上。


 ルンスが行く先々にドラゴンは現れ、何とか攻撃を入れようとする。


 それは、つまりーー




「あの馬鹿が来るせいで! 獲物が全部逃げるのよ!」




 そういうことだ。


 女剣士にとってはすでにドラゴンは恐怖の対象ではなく、ただのウザイストーカーだ。


 しかも仕事を邪魔するとなれば、ストーカー以下。




「ん」




 ぽんぽん




 ドガン!




 ギュアァ!




 突進してきたドラゴンを蓄積した衝撃で跳ね返すのもこれで数百回目。


 そのたびにルンスのレベルは上がる。


 レベルが上がって、自分の目の前だけでなく周囲への影響も吸収できるようになった。


 それのおかげでパーティーも吹き飛ばされることなく一緒にいられるのだが、さすがに周りの魔獣に逃げるなとは言えない。




「ん〜」




 剣士たちの発言にルンスは細い腕を組んで考え込む。




「何か案があるか?」


「たぶん?」


「疑問形かよ。とりあえず言ってみろ」


「全部、衝撃出す。ドラゴン、空高く」


「今までの全部ってことか? そのあとにお前に影響は?」


「ん、ない?」


「私に聞かないでよ。 影響はないのね?」


「ん」


「それをするとドラゴンは吹っ飛ぶのか?」


「たぶん、十年くらい?」


「十年……」


「そりゃまた遠くにぶっ飛ばすわね」


「……まだ一緒いられる?」


「ルンス!」


「ルンスあんたって子は!」




 感動した剣士たちにぐいぐいと抱き着かれてルンスはつぶれそうになる。


 なんたっていまだに軽装備。剣士たちの鎧に顔がひしゃげて鼻がつぶれてこめかみがゴリゴリする。




「ううう」


「あ、悪い」


「ごめんごめん」




 話は決まった。


 そうなればとっととドラゴンを宇宙の果てまでぶっ飛ばそう。










 やる気に満ち溢れてパーティーは高い山の上に立つ。


 なるべく高いところから打ち上げたほうがさらに遠くに行くだろうと考えたからだ。


 その時、空に黒い点が見えた。




 ーードラゴンだ。






 いつものごとく、遥か頭上からドラゴンが急降下を始める。




 速く、速く、さらに速く。




 風よりも音よりも雷よりも速く。


 全ての力を速度に変えてドラゴンは獲物に向かって落ちていく。


 あまりのスピードにドラゴンの体自体が熱を持ち、痛み始める。


 しかし、これはドラゴンとしての矜持。


 あの人間を倒さねば、生きていけれぬと何かが告げる。




 ギュオオオオオオオオ!




 甲高い叫びを放ち、ルンスへとその体をたたきつける。




 ーードズン!




 ぽんぽん




 まただ。


 確かに何かに当たったのに、その体はルンスの前でぴたりと止まってしまう。


 鼻先から伝わるふわふわとした感触もいつも通りだ。




 ぽんぽん




 ぽんぽん




 いや、違う。


 いつもであればすぐに終わるのに、今日はいつまでもふわふわが続く。




 おかしい。なぜだ。




 ぽんぽん




 ぽんぽん




 なぜ、ふわふわが続くのか。


 ドラゴンはその不可思議な状況に、その場から数歩後ずさる。




 ズザザ!




 周りの木を数本なぎ倒しながら、巨体がルンスから離れる。


 そして改めてドラゴンが見つめた先。


 そこにルンスは立っている。いつもと変わらない姿で。




 いや、違う。




 ドラゴンは直感で悟った。


 ルンスの腕に込められた威力。




 それは、自分をここから吹き飛ばすだろう力。


 この人間の前に戻ってくることを許さないほどの力。


 この人間は、もうドラゴンに用はないのだ。




 その考えに至った瞬間、ドラゴンは全身から力が抜けるのを感じた。


 巨体が地面の上にべちょりと崩れる。




 ギュ




 ギュ




 ギュワァ




 大きな口から情けない声が漏れた。




 ギュワァ




 ギュッギュッ




「ん?」




 ギュワァァ




 今まで見たことがないドラゴンの様子にルンスは首をかしげる。


 少し先で様子を見守っていたパーティーも異変を感じてそろそろと木々の間から歩み出た。




「これ、 どういうこと?」


「分からんな。なんだってんだ」


「ん〜」




 ルンスはこぶしに溜めていた力を一度解除し、ドラゴンの元へ歩いていく。




 ギュ




 すると、ドラゴンはルンスから隠れるように大きな翼で頭を覆った。




 ギャウッ




 翼の間から、まだドラゴンの声が聞こえる。




「ん? 大丈夫?」




 ぽんぽん




 ルンスがぽつりとドラゴンに声をかけ、またいつものようにぽんぽんと撫でる。


 今は頭が隠れてしまっているので、手が届くのは翼だけだ。


 その分厚い皮膜を支える太い骨格をなだめるようにさする。




 ギュウ




 さすさす




 ドラゴンは情けない声を上げる自分を恥じるとともに、ふわふわが戻ってきたことに安心する。




 ギュウ




 さすさす




 ふわふわをもう少し感じたくて、ゆっくり羽を広げる。




「ん?」




 地面に伏せた状態のため、いつもよりルンスが近い。


 鼻先ではなく、顔の横に立ったルンスはいつもと変わらない様子でドラゴンをなでる。




 ギュ




 さすさす




 ドラゴンは地面に顎を下ろしてルンスのそばに顔を近づける。




「ん?」




 ギュ




 ドラゴンは下ろした顔をかすかに上下させて、鼻先をルンスの前に持っていく。




「ああ」




 ぽんぽん




 ギュ




 察したようにルンスは頷いてドラゴンの鼻先を撫でる。


 ドラゴンはふわふわが戻ったことに安心して、満足そうな声を上げた。




「えええええ、これってどういう状況?」


「ドラゴンが懐いたようにしか見えないな」


「完全降伏?」


「ちょっと、やめてよ。ずっとドラゴンが一緒ってこと?」


「そ、それはないと思うが……」




 メンバーが困惑したように話している前で、ルンスは気にした様子もなくドラゴンの鼻を撫でている。




 ギュギュ




 ぽんぽん




 ドラゴンも自分の願いが叶って満足そうだ。


 パーティー全員が気が抜けたように肩を落とし、大きなため息をついた。








「じゃあ、俺たちは山をおりるからな。お前はおとなしくしてろよ」




 ギュ




「いいこと? 私たちが依頼の仕事をしている間は邪魔しないでよ」




 ギュ




「依頼が終わったら、ルンスは合図するからな。それからだったら来ていいぞ」




 ギュ




「ルンスが衝撃をためるためにも、突進はしてもいいわ」




 ギュ?




 ぽんぽん




「ん」




 ギュ




「大丈夫そうね。 これで安心して生活できるわ」


「そうだな。ドラゴンの影響がなければ依頼もこなせるだろう」


「ん」


「じゃ、行こう」


「ん」




 ぽんぽん




 ギュッ




 そうしてルンス達パーティーは山を下りた。






 それ以降ドラゴンは約束した通り、依頼を妨げることはなくなり、ルンス達は無事冒険者として活動を続けることができた。




 しかし、ルンスたちがどこで依頼を受けたとしても、ドラゴンは依頼が終わるたびに姿を現した。


 最初はパーティーの行く先々にドラゴンが訪れることに恐怖していた周囲は、ドラゴンがパーティーの前では非常におとなしいことに徐々に気づく。


 それに目を付けた馬鹿がドラゴンを襲ったが、そこはやはりドラゴン。あっさりと半死にの目に合わせて撃退してしまった。


 ドラゴンにとってはルンスが最優先、たまにパーティーメンバーの言うことも聞くが、それ以外の人間に用はない。




 いつしか、ルンス達パーティーは「黒龍遣い」と呼ばれ、周囲から黒龍をテイムしたパーティーとして認識されていった。






 ーー五年後




「よ、黒龍。今回はあっちの洞窟か。頑張れよ」


「黒龍、今度は一緒に飲みに行こうぜ!」


「レイド行こうぜ、黒龍!」






「だああ! 俺たちのパーティー名は純白の盾だ!」




 心から叫ぶ剣士。


 しかし仲間の目は冷たい。




「リーダーうっさい」


「煩いわね、どっちでもいいわよ」


「俺は黒龍でいいぜ」


「俺も俺も」


「ん」




 ギュワ




 ぽんぽん




 ドラゴンを連れたパーティー「純白の盾」ーー通称「黒龍」は大陸でもその名を大きく轟かせていくのはもう少し先の話。








 


◆登場人物◆

ルンス: 主人公。無口。ヒョロリとした体格。軽装備。動物好きでドラゴンが仲間になって実は喜んでいる。仲間LOVE。


リーダー剣士: ルンスのスキルに惚れ込んでパーティーを組んだルンスLOVE。パーティー名を純白の盾にしたのも、決して汚れない盾役のルンスをイメージしていた若干気持ち悪い人。真逆の黒龍と呼ばれて一時期ショックで寝込んだ。


女剣士: ツンデレのルンスLOVE二号。突進してくる魔獣に恐怖せず立ち向かうルンスの背中、マジカッコいいとか思ってる人。


パーティーメンバーその他二名: ガヤ担当。主張の強い剣士たちに押され気味。ルンスと両極端すぎると思っているけど言えない。ルンスとは普通な関係。

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