凍える雪花は春に触れ、あとがき

◆この話を書くきっかけ

「…雪花のような人だって思ったのが最初でした。花に見立てた雪のことをそう言うんですよ。綺麗で、華やかで。でも儚げで。思わず触れたくなってしまう。けれど、手を伸ばしたら溶けて消えてしまいそうで。…触れてもいいんだろうかって、少し不安になる」


この壱菫のセリフが一番はじめに書いた文です。

雪花って花ではなくただの雪なのに、花以上に魅力を感じるんです。ただ綺麗なだけでなく。

雪花のように綺麗な話になればいいなと書き始めました。男女サシ、ラブストーリーは書き始めから意識しています。


あと、半分くらいまで壱菫は京都弁で書いてました。個人的に男性の京都弁が大好きすぎるんですが、演じづらいだろうなと思って書き直しました。



◆壱菫について

壱菫は割と裕福な家庭で育ちましたが、幼い頃から大人に囲まれて、大人のように振る舞わないといけませんでした。自分の意思や要求を言いづらい環境で甘え方を知らずに育ったんですね。

なので結婚相手を決められても受け入れるしかなかったし、その相手が居なくなっても戸惑いこそすれ怒ったり悲しんだりはしなかった。

今まで不自由なく育ち、この先結婚し家庭を持ち、子供を持ち、不自由なく死んでいくと思っていた、その考え(感覚)をぶち壊しました。

この頃から不安を抱えるようになりました。でも解決策が分からない。そんな中で真が描いた絵を見る機会があって、惹かれて。

それで真の名前はなんとなく覚えていました。高校生の女の子とは思っていなかったとは思いますけど。

寂しげな印象の絵に自分を重ねていたのかも知れません。


真が母親と再開した後に逃げ込んでくるシーン。

「警察呼べよ!」って思うかもだけど、台本なので。そこはスルーして頂ければと思います。

壱菫は真が祖父母と暮らしている事は知っているけど、どういう経緯でそうなったのか知りませんでした。


高校生の真からすればなんでも出来る余裕のある大人に見えるけど、実際の壱菫はとても心が弱い人です。

優しく見えるのは、自分が傷付きたくないから、なんですよね。

なので真には優しいけど、たまに線を引くんです。自分に自信がないから。


最終的にはすみれモチーフのネックレスを渡すくらいには独占欲も出てきて、この先も真に寄り添って生きていくと思います。

でも真が別の人を好きになったら潔く離れる人です。(勝手に傷付いて勝手に離れていきそう)

作者としては、末長く仲良くして欲しい気持ちです。



◆壱菫の真への想い

自分を救ってくれた絵の作者ですから、それで他の人よりは何割か増しで優しく接しています。でも深く関わろうとはしません。陰で支えるくらい。大人の自分が守ってあげられる範囲で。

けれど真の親に制裁を下すとか、そういう事はしません。

なんと言うか、守りたいと思う気持ちは本物だけど人を傷つけることはしません。そういう考えには至らないと思います。

祖父母と話す機会があれば、それとなく話題にするくらいですかね。


真が壱菫を愛する以上に、壱菫は真を想っています。



◆真について

真の両親は幼い頃に離婚しています。

母親と真だけで生活していましたが、母親はあまり家には帰らない人でした。

家にいても真に関心がなく、一緒に遊ぶとかしない。暴力がなかったのは救いですね。

だから真はずっと一人で絵を描いていました。

見かねた祖父母が真を引き取ってくれたんです。

真と再開した時、お金をせびろうとして断られてはじめて手が出ました。思いっきり引っ叩いて、爪で傷ができました。そのくらいで済んで良かった。

真は親に期待しないようにしていたけど、それでもショックですよね。娘に会いにきた理由がお金。断ったら暴力。相当なダメージです。可哀想。

真も人に甘えることができなかった子です。親には捨てられ、祖父母には負い目を感じている。

そんな中で出会った壱菫は、さぞかっこよく映っていたんだろうなぁ。まぁ十代から見た年上の異性って魅力的ですもんね。

それでいて初めての恋だったので真は強強なんです。眩しい。

ありがとうと言えなかった真が最後、ありがとうと素直に言えたのは、頑張ったからとか努力したからではなく、穏やかになったんだと思います。



◆タイトルについて

言わずもがな「凍える雪花」は真、「春(すみれ)」は壱菫なんですが、「雪花」は心が凍えている壱菫で「春(恋)」が真なんじゃないかっていうのも好きです。

感じるままに受け取って頂ければ幸いです。

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凍える雪花は春に触れ【1:1】35分程度 嵩祢茅英(かさねちえ) @chielilly

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