第40話 残る幹部達


 酒場に続いて、やってきたのは遊技場。

 こちらはなかなかどうして、割と見た事もある様な遊びが多い様で。

 ビリヤードからダーツやカード、スポーツが出来そうな広間などなど。

 あと普通に賭博やってた。


「さっきの話の続きだがな、残りの幹部は三人。今ではお前を合わせて九人って訳だ」


 そして、その三人は男性だと。

 改めてどんな人たちなのか聞きつつ、ひとまず適当に遊び始めてみれば。


「あぁ~えぇとだな……正直に言う。向こうから絡んで来ない限り、お前が絡む必要は無いと思う」


「えぇ……円滑な職場環境がぁ……」


 えらく辛辣な事を言われてしまったが、なんでもカッパラァ先輩が言うにはくせ者揃いらしいし。

 その辺りの影響で言っているのだろうけど。


「気を悪くするなよ? しかしそもそも向こうがお前に興味ない、って感じだな。三人の内の二人は俺と同じく戦闘特化型、だが両方とも前衛向きでな。結構容赦がねぇって言うか……俺みたいに部隊を持っている訳でもなく、一匹狼みたいな奴等だ」


「つまり、普段から周りとあまり絡まない人達って事で良いんですか?」


「だな、片方は完全武人思考。弱い奴には興味が無い、誰かと群れる事を鼻で笑うタイプだ。アイツに勝てば話を聞くくらいはするだろうが……止めておいた方が良い、魔王様の命令も無視してマジで殺しに行く様な戦闘狂だ」


 え、なにそれ怖い。

 でもそんな状態で、よく魔王様が許してるな……俺の非殺傷戦闘に大手を振ってOK出してくれた様な人なのに。

 下手に命令無視して相手を殺したりすれば、その瞬間幹部をクビになってしまいそうだけど。


「まぁ言いたい事は分かるがな。逆だ、逆。あぶねぇからこそ手元に置いてる、追放した所で意地でも戻って来るだろうしな」


「と、言いますと?」


「アイツは魔王様に負けてるんだよ、だから勝つまでこの地を離れるつもりは無いんだと。とはいえ魔王様は大火力の魔法、相手は剣一本なんだけどな」


 おぉっとこれはまた、かなり脳筋タイプの様だ。

 俺もあまり難しい事を考えている訳では無いが、そこまで武士道精神を貫いている訳ではない。

 国外追放しても戻って来るって、それ多分再戦する為にって事だよね?

 と言う事はつまり、周りが気を利かせて“あえて”俺がその人には接触しない様にしていたのだろう。


「そんでもってもう一人の前衛型。そっちは……正直俺にもよく分からん」


「え、もしかして俺と同じ新人さんとか?」


 だとすると、そちらとは是非早めに仲良くなっておきたいのだが。

 が、しかし現実はそう甘くはなかったようで。


「いいや、結構長いぞ。だが、一回も喋ってる所を見た事がねぇ。声を掛けても、何を聞いても黙ってるんだよ。頷くか首を横に振るか、それくらいはするけどな。けど基本的に一人を選ぶ。飯に誘おうとも、酒の席に誘おうとも顔を見せた事はねぇよ」


「はぁぁ、これまた見事な一匹狼」


「だろ? 魔王様もそれは承知の上なのか、常に単独任務を任せているみたいだしな」


 これはまた、困ったぞ?

 あんまり周りと仲良くなりたいタイプではないのが、二人と言う事か。

 片方は戦闘狂で、もう片方はお喋りしないと。

 うぅむ、確かに俺のテンションで絡んだらかなり煙たがられそうだ。


「まぁ戦闘に関わってる魔族ってのは、基本的にそういう奴等が多いんだよ。ウチの幹部に緩いのが多いってだけだ」


 出来れば皆様と仲良くなって、可能なら特撮作りに協力してもらおうと思っていたのだが……これはちょっと、厳しいかも。

 寡黙な先輩に関しては、そういうキャラ付けをしてしまえば問題無いのかもしれないが、そもそも引き受けてくれるかどうか。

 もう一方に関しては、話題を持ちかけただけでぶった斬られそうだ。


「ちなみに、最後の一人は?」


 気になる最後の御一方。

 出来ればここで最後の希望が出て来て欲しいと願ってしまう訳だが。

 先輩は、ヘッと表情を崩しながら。


「ソイツだけは、物理的に無理だ。スガワラが召喚された時はたまたま帰って来ていただけでな、普段はずっと他国の調査やら敵陣の観察やら。ほとんど出ずっぱりの調査員って訳だ。本人もそっちの方が気も楽なんだとよ」


 今度は基本帰ってこない出張民でした。

 とりあえず、男性陣幹部は皆個性が強いと言う事が分かりましたとさ。


「さて、まだ日は落ちてねぇが……どうすっか? 何か希望はあるか?」


 適当に遊戯を選び、喋りながらやっていたら一通り遊び終ってしまった。

 こっちの賭け事に手を出すのは怖いし、そっちに関してはカッパラァ先輩もお勧めしないのか、近付こうとすらしていない。

 と言う訳で。


「先輩、カラオケって無いんですかね」


「なんだそりゃ?」


「歌える所です」


「あ~、アレか? オープニングとか何とかの練習って事か?」


 これと言って希望が無いのなら、この機会に魔王様も賞賛していたカッパラァ先輩の歌声を聞いてみたいというのもある。

 そして何より“向こう側”の男性ヴォーカルの歌い方とか、ラップなんかは特に実際に聞きながらでないと覚え辛いだろうし。


「ったく、休日でも仕事してたってバレたら怒られるぞ?」


「これは仕事ではありません。先輩と一緒に歌って踊ってストレス発散していただけという事にしましょう」


「好きだねぇ、相変わらず」


 と言う事で、今度はそう言う娯楽施設へと案内してもらう事になったのであった。

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