第39話 男同士の休日
俺と同じ様にあんまり休もうとしない人。
いったい誰の事かと思ったが……意外や意外、その人物とは。
「かぁぁ、ったくもう。あぁなった時の魔王様は何言っても聞かないからな……諦めて休日を楽しもうぜ、スガワラ。多分何処へ行ったか、ちゃんと休んだか後で色々聞かれるぞ?」
俺の隣をノッシノッシと歩くのは、ザ・防衛隊長カッパラァ先輩。
街中が初めてな俺の付き添いをしろと言われていたが、彼の休暇という意味でもある様だ。
てっきりいつも通りイザベラさんが付くのかと思ったのだが、確かに言われてみるとカッパラァ先輩が休日だった所を見た記憶が無い。
訓練場にいつ行っても居るし、この人。
「初給料貰ったんだろ? どうせならパァっとやろうぜスガワラ、どこに行きたい?」
何かもう決まってしまったからには仕方ないと割り切っている様で、先輩は既に遊ぶ気満々の御様子。
とはいえ、しかし。
「俺、街に出るのも初めてなんですよね。給料貰ったけど、どれくらいの価値があるのかも理解してないですし……どれくらいなんです? これって」
そんな事を呟きながら頂いた財布を開いて見せてみると、先輩は非常に大きなため息を溢してから。
「あーえー……そうだな。まずは貸金庫にでも行くか、お前の金庫を登録する事から始めよう」
「え、何かヤバイ感じですか?」
財布の中を覗き込んでみれば、色んな種類の硬貨が数枚ずつ。
多分こういう物にも慣れろと言う事で、多くの種類を入れてくれたんだと思うのだが。
カッパラァ先輩は此方をちょいちょいっと手招きし、顔を近付けて来たかと思えば。
「後で種類とどんくらいかってのは教えてやるが……お前は人前で絶対に財布を出すな、スられたらヤバイ金額が入ってる」
「いやあの、滅茶苦茶怖いんですけど。結構治安悪い感じなんですか?」
「全体的に治安は良い方だが、どんな場所でも悪い奴は居るって事だよ」
と言う事で、ポケットに突っ込んだ財布はしっかりと握り締めておけと指示を頂いた。
初給料と、これまでの功績の報酬も入っているって言ってたけど……ホントこれ、いくら入ってるんだ?
“向こう側”の感覚で言うと、給料一月分とボーナスで二月分くらい貰っちゃった感覚なのだろうか?
だとすると、確かに盗られたら
※※※
物凄く警戒したままカッパラァ先輩に付いて行き、貸金庫とやらの登録作業を終えた。
その際貰った硬貨を価値の高い順に並べてもらい、説明を頂けた訳なのだが……正直、とんでもなかった。
「ぶはぁっ! 魔王様……いったい何を考えてあんな金額を……」
現在、酒場。
頂いた給料に肝が冷えてしまったので、無理矢理にでもアルコールで身体を解そうという作戦である。
「ふぅぅ……まぁ、スガワラのお陰で最近は随分平和になったのは確かだしな。妥当と言えば妥当……なのかもな? それだけ魔王様もお前の計画を重要視してるってこった」
最低限のお金だけ持ち出し、二人揃って昼間からお酒を頂いている。
ホント、最初に金庫へ向かって良かった。
だってあの財布、俺の感覚で言いうと普通に年収くらい入っていたのだ。
元々居た会社で年収三百から四百いかない程度、ボーナス無い時とかは結構カツカツって事もあったのに。
なのにですよ、一枚で百万くらい? とか思える硬貨がいくつか入っていたのだ。
ヤバいよ、初給料で小金持ちになってしまった。
「幹部って皆、あんなに給料高いんですか……?」
「いやいや、流石に一度の給料であんなに出る事はねぇよ。多分初回の成功報酬だろうな、勇者組と繋がりを持ったのなんて、今まで誰もやらなかった事だしな。とはいえまぁ確かに、俺なんかは結構貰っている方ではあるだろうけど」
やっぱり高給取りみたいだ。
あの金額を見て警戒はしたものの、カッパラァ先輩は随分と落ち着いていたし。
魔王直属の幹部なのに、安月給だったら格好つかないもんな。
そりゃそうか、などと一人で納得していれば。
「とはいえ結構歩合制な所もあるからな。元々の給料は一般と比べれば高い方ってくらいか? そっから成果によって報酬が上乗せされる感じだ」
「へぇ? 幹部の人って結構いますけど、ちゃんと仕事には目を光らせてるんですね」
「んーまぁ魔王様に関しちゃ書類で確認って所か? その辺りの監視役はイザベラだよ、アイツ色んな所に顔を出してるだろ?」
あぁ、なるほど。
何かイザベラさんなら、すんなり納得。
幹部ですよーって言うより、監査役ってイメージが強いし。
「あぁそういえば、幹部って全部で何人くらい居るんですか? 最初に俺が召喚された時には、イザベラさん含め七、八人くらいでしたよね?」
ここぞとばかりに質問を続けてみた。
正直気になっていたのだ、全員と自己紹介した訳でも無いし。
「スガワラが会ったのは……えぇと?」
と言う事で、改めて名前を並べてみた。
まずカッパラァ先輩、次にイザベラさん。
その後メルナリアと仲良くなって、次はパルマ。
最後にセイレーンこと、オウカさんの五人。
結構女性率が高いのだ。
「それだけなら、女が多い様に感じるかもな。まぁあの魔王様だからってのもあるが……」
「え? もしかして魔王様って実はハーレム願望があったり?」
そう呟いた瞬間、カッパラァ先輩からは酷く驚かれた顔をされてしまった。
あ、もしかして今の発言は不敬罪とかになったりするのだろうか?
「いや、え? えぇ……まさか、気付いてないのか?」
「何がですか?」
「あぁ~いや、何でもねぇ。後の幹部は男だよ、ちとくせ者揃いではあるがな。とりあえず、もう少し飲もうぜ」
彼は溜息を溢しながら、大声でお酒のおかわりを注文するのであった。
そして他の幹部の先輩達は男なのか。
早く会ってみたいなぁ……。
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