第4話

 期末テストも終わり、煩わしいぐらいに眩しい夏休みがすぐそこまで迫っていた。

各クラスのHRでは合唱コンクールの自由曲を決める時間が設けられている。

「珈那が弾いてくれるんだし珈那が決めていいよ。」

「俺らは珈那の弾きやすいやつを歌うから。」

今年も素敵なクラスメイトに恵まれたようだ。

「私、群青がいいな。」

ずっと心に決めていた。あの補習の日から。

この曲は私とあなたの唯一の共通。きっと私たちを結んでくれる。

この曲で伴奏者賞を取らないと意味がない。あなたの好きな曲であなたに勝ちたい。自分だけのものにしたい。

「じゃあ群青?で決まりかな。」

「賛成賛成!指揮とかパートリーダーやってくれる人どんどん出て!」

「私ソプラノのパートリーダーするよ。」

「じゃあ私はアルト!」

「俺は指揮するよ。」

隣の席の透空(とあ)が立候補した。

「えぇ私も今年は指揮やりたかったのに。」

菫も負けじと珍しく強請る。それだけふたりがこの合唱コンクールに気合いを入れてくれているということだろうか。そう考えるとなんだか嬉しくなった。

「じゃあまぁ指揮はオーディションな笑」

私の背中を押すように事は順調に進んでゆく。

「私みんなの期待に応えられるように頑張るね。」

みんなはきっと私の端ない気持ちになんて気がつかないだろう。ただ間違えずに合唱を乱さない伴奏を弾いてくれる人としか思われていないだろう。

本当は合唱を支えるだけでなく導きたい。

私だけの音楽を鳴らしたい。

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