第21話 戦果
「……!? なんだお前た──」
「ふん……! バレたぞ! 増援が来る前に一気に片をつける!」
ジェイはタタン、タタンとテンポよく敵兵を屠る。
「ツヴァイ撃ちすぎだ! アインはケチらずもっと撃て! 五十連マガジンに切り替えろ!」
「は……!」
「は、はい!」
ジェイは副将へ向け全速力で駆けつつ二人に指示も出し、かつ的確に向かってくる敵兵を倒していく。
「オラッ――!」
「アイン!!!」
弾薬を節約しようとしたアインは敵を倒すスピードが遅れ、槍を持った敵兵の接近を許してしまった。
繰り出された突きはアインの喉元に迫る。
「……身体強化魔法──
アインを危機から救ったのはツヴァイだった。
ジェイを挟んで反対側にいたはずのツヴァイは一瞬でアインを襲う敵兵も元へ飛び、その勢いのまま蹴り倒した。
「あ、ありがとう……」
「油断するなと言われたはずだ……!」
この世界における魔法は何も火や氷を飛ばすだけでは無い。むしろ火や氷といった物質を具現化するだけの魔力を持って生まれる人間はそう多くない。
この世界のモンスターと初めて退治した時、なんでこんな化け物が跳梁跋扈しておいて人類が滅んでいないのかジェイは疑問に思った。しかし、当然と言えば当然だが、人間にも対抗する手段があったのだ。
それが身体強化魔法である。
ジェイが最初に違和感を覚えたのはアインとの格闘訓練の際だ。異様な強さに気が付きアインに尋ねると上記のようなことを語った。
身体強化魔法はトレーニング次第で誰にでも使えるようになる。
ジェイはそれを聞いて真っ先に近接格闘訓練に取り入れた。そして身体強化魔法を一番最初に使いこなせるようになったのはツヴァイだった。
「押し返すぞ!」
「……は? なんだこ──」
──ズゴォン! ズゴォン! ──
アインが手を止めツヴァイはアイン救援に持ち場を離れた。その分の敵兵がまとめてジェイにのしかかる。
ジェイは緊急用に持ってきたフラググレネードを惜しみなく二つ使い難を逃れた。
しかしそれだけではどうしようもならない数の敵兵に包囲される。
「身体強化魔法──
次に身体強化魔法を使ったのはアインだった。
高く飛び上がったアインは空中で逆さになり、更にそこへ横回転の動きを加える。
そのままトリガーを引くとMP5から放たれる弾丸はまるで嵐のようにジェイたちを包囲していた敵兵に降り注いだ。
「グァ!?」
「ガッ……!」
「うぅ……ああ……」
敵兵は未だかつて見たこともない謎の武器により一掃され、遠くから取り巻く後続はたじろぐ。
この隙をジェイは見逃さなかった。
「身体強化魔法──
ジェイは敵兵の切れ目を縫うように走り抜け、敵陣中央へ突撃する。
「え――?」
「そっちへ行ったぞ!」
「ちょっ待……がァ!?」
タタン! タタン! とAR15を撃ち尽くすと、今度はGLOCK18をフルオートで発射し正面の敵を薙ぎ払う。
「サリャーン様! 見慣れぬ魔法を使う敵が!!! 身体強化魔法の質も異常です! 早くお逃げ下さい!」
最前線での混乱の中、ジェイはその敵兵の言葉を聞き逃さなかった。
「身体強化魔法──
全ての弾丸を撃ち尽くしたジェイは銃を納めナイフを取り出した。そして「身体強化魔法──疾」の勢いを瞬で前方へのジャンプに変える。
そのままジェイはまるで彼自身が砲弾のように体を丸め、公国軍副将の前へ飛び出した。
「今だドライ!」
『了解』
「身体強化魔法、
「誰だ貴様──」
「死の押し売りは如何かな?」
全ての身体強化魔法がナイフの一振に込められた。振り抜かれたナイフは切先が音速を超え、ソニックブームと共に副将の首を胴体と切り離した。
副将の死亡と同時刻。公国軍の遥か後方では、フィーアの正確な指示により放たれたドライの弾丸が大将の脳天をぶち抜いた。
ぶち抜いたというような生優しいものではない。バレットM82の12.7mm弾を食らった人間の頭は文字通り木っ端微塵に消し飛ぶ。
「副将がやられた!」
「大将もやられたぞ!」
「馬鹿な!? 大将はどうして死んだ!?」
「そんなことより、副将をやった奴は何なんだ!」
ジェイの予想通り、司令塔を失った敵軍はたちまち混乱に陥った。
ジェイから遅れてアインとツヴァイも彼の元へ追いつき、銃を撃ち尽くした彼のカバーに回る。
「……死にたい奴はかかって来い。好きなだけ相手をしてやる」
「ひッ……!」
「に、逃げろぉぉぉ!!!」
「うぁぁぁ!!!」
恐慌状態で敵軍はちりじりになって敗走。ジェイたちの周りに残ったのは、副将を含む敵兵の死体のみだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
あとがき
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次話2024/04/25 07:30頃更新予定!
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