第5話 二人の客
カフェラテを飲む。
チリリンとベルが鳴る。
年増の女性二人が入ってくる。
「いらっしゃいませ!」
女性二人はテーブル席に通され、ソファに腰かけた。
「いやぁ、今日は寒いわねぇ」
「ほんと、もう暖かくなってもいいのにねぇ。すいませーん! ホットカフェラテ二つ」
横目で二人を観察してみる。
職業柄、周りの人について観察し、想像してみる。
我ながら良い趣味と言えまい。
しかしそこから得た情報を自分の小説の登場人物に生かされることも多いのでやめられなくなってしまっている。
向こうに座る女性二人に神経を集中させる。
少し派手目のコートにマフラー。ブランドものなのだろうか。
髪の毛は茶色で、巻髪である。
少々彼女たちについて想像をしてみる。
恐らく歳は五十代半ば、友達だろうか。
時代は昭和、彼女たちは高校卒業後すぐに実家を出、上京し、バブル景気時代の東京で就職。その後、すぐに婚約し結婚。子供を産み育てて二十年といったところだろうか。
二人の出会いは子供が同級生のママ友から始まり、意気投合。子供が成人して手がかからなくなり、旅行などして楽しく過ごしているといったところだろうか。
話に耳を傾けてみる。
話す様子から品のある感じがするので、多分お金持ちだ。
マダムだろう。
よし、おおよその想像はできた。
カフェラテをすすり、読みかけの小説に視線を戻した。
新田さんが二人にカフェラテを提供した。
「あら、かわいいわぁ!ペンギンちゃんね!」
「ありがとうございます」
「もう年取るとあったかいのじゃないとダメね。今は冬だからホットだけど、夏でもホットじゃないとお腹壊すのよね~」
「わかるわ~、私は昔は冬でもアイスだったけど、今はもー無理!」
女性二人はカフェラテを前に笑いあっている。
・・・やはりペンギンだったか。
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