第4話 思い出に浸る
カフェラテをすする。
ホッとする優しい味がする。
優しいベージュ色。
そして香ばしい。
この香りをかぐと、二十代のころ、友人たちと喫茶店でカフェラテを飲みながら語り合っていたことを思い出す。
当時は「いつかカフェラテがコーヒーに変わる時が来るのだろうか」と思っていたが、いまだに「その時」は来ていない。
大学生時代は、時間ができれば喫茶店にこもり、友人と小説や物語について大いに語り合ったものだ。
とくに私たちは推理小説をこよなく愛しており、犯人あてをしたり、トリックにいかに感動したかを語り合った。
時に、自作をして作品を見せ合ったりもした。
そして、夢や将来について気が済むまで語り合ったものだ。
コーヒー(私はカフェラテ)が冷めても気にせず、朝から晩まで話し合った。
時間は無限だった。
実に幸せな時間だった。
そんな私たちは歳を重ねるにつれ、それぞれの道を歩むそうになった。
一人はサラリーマンになり働いている。今度課長職に就く予定だという。
一人は実家の家業を継ぎ、結婚をして子供も二人育てている。
一人は事業を起こし、数人の社員を抱える社長をしている。
そして、私はなぜか大学卒業後も仕事に就かず、ぶらぶらとした時間を過ごしていたところ、なぜか小説家になっていた。
一番物語の出来が悪かった私がこんな仕事をしているのは、なぜだろうかと考える。
不思議である。
理由は思い当たらない。
一番能天気だったからかもしれないな。
ふと、昔のことに耽ってしまった。
バックから小説を取り出して、ページを開く。
カフェラテをすする。
喫茶店でカフェラテを飲みながら小説を読むなど、ただかっこつけた大人だと思っていたが、やってみると、かなり良いことに気づいた。
喫茶店の温かみのあるやわらかい照明が文字を照らすと、文字の入り方、進み方が全く異なり、物語に包まれていく。
私の得意ジャンルはファンタジーであるが、読み物としての小説はほぼすべてが「推理小説」である。
私自身、推理小説を書きたいのだが、物語には、トリックの緻密さと巧妙さ、計画性が必要とされる。
どうにも上手く組み立て推理小説を作る作業が苦手なようで、一切作ることができない。
だから未だに推理小説は、「読み」専門である。
きっといつか書いてやるんだと意気込んで、二十年弱。
魅力的かつ個性的な名探偵を描いてやるんだと意気込んで二十年弱。
今私はファンタジー作品を書くことが多い作家である。
遠い所へ来たものだ。
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