第2話 注文はカフェラテ
扉の上部に取り付けられたベルが「チリリン」と控えめに音を上げる。
温かい空気が店内から溢れてくる。
目に優しい温かみのある照明。
大小さまざまに配置された観葉植物。
優しい緑と黄。
全体的に梁や柱の木材を活かし、それに合わせて統一された店内。
ボリュームが調整された、ゆったりとした曲調のバックグラウンドミュージック。
同時にコーヒーの香ばしい香り。
これだけでもすっかり酔ってしまいそうだ。
一歩足を踏み入れれば、そこは別世界、外の寒さとは隔絶された暖かさ、まさに、「夢心地」。
「いらっしゃいませ!」
緑色のエプロンを身に着けた若い女性の店員、新田さんが向かってくる。顔なじみの店員である。
「いつもの席でよろしいですか?」
私の顔を見るなり、彼女は私を案内する。彼女の白い手に招かれる。
「えぇ、お願いします」
別に席はどこでもよいのだが、彼女は私がその席を気に入っていると思っているらしく、いつもそこへ案内してくれる。
私は彼女の厚意に甘えている。
「いらっしゃいませ。今日は早いですね」
いつもの奥のカウンターの席に着くと、店主に声をかけられる。
「えぇ、いつもより一本早い電車に乗れまして」
「いつものホットのカフェオレでよいですか?」
「はい、それでお願いします」
私と店主、中崎さんはこう見えて、何年来の知り合いである。
数年前に共通の友人を介して知り合い、そこからの付き合いである。
優しく控えめな彼が、コーヒーを語らせたら目の奥をギラギラさせて永遠と語る様子に圧倒されながら人間性に惹かれた。
中崎さんは大のコーヒー好き、「コーヒー狂」と自称するほどで気になる農園、コーヒーがあれば世界の裏側まで行ってしまうような人間で、自分の店を持った。
豆の種類の豊富さ、味の技術の高さ、お店に入りやすい雰囲気、そしてかなり良心的な値段で提供してくれるのでとにかく気に入っている。
優しい彼が表現された素敵な喫茶だと思う。
中崎さんは、コーヒー豆を挽きはじめた。
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