第7話 セナへの細工
「あちゃぁ⋯⋯派手過ぎだよ二人共」
セナは、ダンジョン外部へと出て開口一番にそう言った。
彼女は、数分前までダンジョン内部にて、ダンジョンコアへと情報の報告をしていた。
耳を劈くような爆発音が彼女の耳に届いたのは、その報告を終えた直後の事だった。
「うーん、これは⋯⋯片付けが大変そうだなぁ。でも、これ全部持って帰るのがお母さんからの頼みだしなぁ」
お母さん、というのは、当然の如くダンジョンコアの事である。
ダンジョンコアは、彼女がダンジョンを出ていく前に、ダンジョン権能を行使し、彼女の記憶上にある母親という存在をダンジョンコアへと置き換えるよう改変した。
改変を行った事で、彼女に、ダンジョンコアを完全に己の母親であると誤認させる事に成功した。
最早、唯一の肉親である母親を亡くした彼女に、頼れる保護者や身内等存在しない。
彼女はある意味で、既に外界と隔絶した存在であり、ダンジョン内部へ取り込んでも問題は少なく、ダンジョンコアにとって都合のいい存在であった。
どの道、公の場で爆発を起こしてしまっているので、近隣住民からの通報は避けられない。幼女行方不明の通報があってもそれは変わらない。
そうなれば、警察、延いては探索者協会が出張ってくるのも時間の問題である。
であれば、一刻も早いダンジョンの強化が必須である──そうダンジョンコアは判断した。
ダンジョンコアは
そのうちの一つが、他二人とは異なるセナへの細工である。
先ず、初めて子供たち三人がこのダンジョンへ侵入し、罠部屋にて手動起動型爆発系罠Iで殺害され、複製途中で脳味噌に細工を施された際、その実、彼女には他二人とは異なる二つの細工が施されていた。
一つは、無意識的にダンジョンへ情報報告に向かわせるのではなく、意識的にダンジョンへ向かわせる細工である。
これは詰まり、本来余計な手間である、無意識的に、という工程を無くしたという事である。
当然、本来その工程に使う筈であった魔力を使用しなかったのだから、その分の魔力は浮く。──この浮いた魔力が、次の細工へ大きく関係する。
もう一つは、浮いた魔力を使用し、自死機能に、手動起動型爆発系罠Iと同水準の爆発力と殺傷能力を持つ自爆機能を追加した細工である。
しかし、浮いた魔力だけでは、三人は疎か、二人に自爆機能を持たせるのが限界であった。
そこで、ダンジョンコアは、彼女への自爆機能の追加を取り止め、本格的に彼女を、使い捨ての駒では無く、
以上二つがセナへ施された、他二人とは異なる細工である。
因みに、一度このダンジョンに関する記憶を全て抹消されたセナであったが、ダンジョンコアにより後日複製された。
全てはダンジョンコアの思惑通り──とまではいかないものの、予測通りに事が運びつつある事に、ダンジョンコアは密かに喜んでいた。
ダンジョンコアより与えられた、死体の回収という命令を遂行した彼女は、確かな足取りで母のもとへと帰還した。
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