第3話 ひみつきち
「ねぇねぇ聞いて! セナね、きのうね、ひみつきち見つけたの!」
昨日、ダンジョンに入ってしまった幼女──セナは、眼前の彼女と同じ位の男子たち二人に言った。
彼等は彼女の友人たちである。勉強や折り紙よりも運動をする方が良いという活発な彼女は、同年代の女子よりも男子たちと遊ぶ機会の方が多かった。お蔭で今では女子の友人よりも男子の友人の方が断然多かった。
「ひみつきち? かっけー! どこにあったの!?」
「うちの近くにある、
「え? あんな所にそんなのあったかなぁ? でも、ひみつきちってあの秘密基地だよね? 良いね! 行こ行こ!」
「よし、じゃあ三人でレッツゴー!」
「すごいね! 本当にあった!」
「だから言ったでしょ、ひみつきちはほんとうにあるって!」
セナが男子の内の一人──コウスケに呆れ口調にそう言った。
彼女たちは幼稚園が終わった後直ぐに、彼女の案内の元、秘密基地へ来ていた。
幼稚園が終わり、三人の母親たちが迎えに来るが、仲の良い母親たちは立ち話を始めて中々帰ろうとしない。そこで、彼女たちは母親たちの目を盗んで逃げるようにここへ来たのである。
「これは防災器具庫かなぁ? まさかその裏にこんなものがあったなんて⋯⋯!」
二人目の男子──シュウイチローは、防災器具庫の裏手にある雑草が繁茂した空間にポツンと設置されている不思議な建物を見て驚嘆の言葉を
その建物は、丁度後ろ手にある防災器具庫を少し大きくしたような長方形のコンテナなような構造をしていた。
しかし、防災器具庫等とは全く似て非なるものである。先ず塗装が異なる。防災器具庫は無骨な銀色だが、この建物は白亜で彩られている。この場では不自然な程に白く、浮世離れしている。
そして、何よりも異なる点は、この白亜の建物が発する不思議な圧と思わず中へ入ってみたくなる誘引性だ。
「なんかこれすっげーかっこいいけど、こわくね?」
「あ、なんかそれちょっと分かる! でもね、この中にきれいなビー玉があるんだよ! しかもすごく大きい!」
「へー! ま、なんでもいいかろよぉ、はやく入ろうぜ!」
セナとコウスケは、シュウイチローを置いて建物へより接近して行った。
シュウイチローは、一人何かを考えていた。どこかでこの建物と似たようなものを見たことがある気がしたのだ。
初めてこの建物を見た瞬間に感じた既視感のようなものが、直感となってシュウイチローへ危険信号を発している。
しかし、シュウイチローは気が付かない。
シュウイチローは歳の割に賢い子供ではあったが、所詮は子供だった。
「おーい、置いてくなよー!」
「あれぇ? ドアなんてあったっけ?」
セナは記憶上昨日は無かった筈の扉を見て小首を傾げていた。
しかし、直ぐさまそんな事は気にならなくなり、両開きの扉を押して中へ入った。大きさの割に軽い扉だった。
三人は中へ入ると、暫くの間内部を吟味していたが、飽きてしまったのか、それとも何かに誘われたのか、最深部を目指し歩いていった。
「うーん、やっぱり変だよ。きのうはこんなに遠くなかった。すぐにビー玉さんのところについたのに⋯⋯」
「なぁなぁ、そのビー玉さんってしゃべるんだろ!? それってすごくないか!?」
「あーそれ僕も興味ある! どうやって喋るの? スイッチとかあった?」
「うーん、スイッチとかはなかったかなー。しゃべるっていっても、なんかよくわかんないことばだったよ?」
「それって、がいこくごってことか!? すげー!」
そんなやり取りを行っていると、一つの部屋に辿り着いた。
外観と同じように白亜の部屋だ。しかし、その綺麗な純白とは相反して、貴重品や装飾品は一切存在しない。どこまでも無機質な部屋であった。
「セナが言ってたのってここか? ビー玉さんなんてどこにもいねーぞ?」
「あれ? おっかしぃなぁ⋯⋯」
「うーん、不思議な建物⋯⋯勝手に物が設置される⋯⋯物の配置が変わる⋯⋯どこかで⋯⋯」
《侵入者三名が
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