第23話
青史郎が落ち着いたところで紫輝は話しを再開する。
「え~と……香叔母さんが話しに置いてけぼり喰らってるんで……叔母さんには一から説明しますね」
「え、ええ……。そうしてくれると助かるわ」
紫輝は前世での自分と三人の関わりについて簡潔に説明した。
「……紫輝ちゃんがあの皇国の英雄――”皇国の死鬼”だったなんて……。この事、姉さんは知ってるの?」
「母さんには既に話してあるんで知ってますよ。ただ、父さんと姉さんにはまだ秘密にしてありますけど。あと事情を知っているのはここに居る人間と星皇陛下だけですね」
「そう……だからなのね。紫輝ちゃんがそんな子供らしくない他人行儀な喋り方をするのは……」
「でも……服部さんにはバレると思っていたけど……まさかこの短期間でこれだけの人間にバレるとは思いませんでした……」
紫輝は眉間に皺を寄せて服部を見る。
「はっはっはっ! 迂闊だね~! もう少し慎重に考えて行動しないと駄目だぞ☆」
服部が紫輝を茶化すようにウインクしならがら忠告する。
「うっさい! あんたが紛らわしい時に来るからだ!」
紫輝は服部を睨みつけて文句を言う。
「……ところで服部さん、聞きたい事があるんですが。俺が貸した収納箱――今どこに有るんです?」
紫輝は前世で服部に貸したままになっている収納箱の行方について尋ねた。
紫輝が持っていた収納箱は生き物以外は際限無く入る高性能な物。
これを作るには魔境界に生息する希少な魔獣の素材とドワーフにしか使えない技術が必要になる とても貴重な一品だ。
「アレは大いに活用させてもらうってるよ~、てへっ☆」
「……返せ。アレは左右のじっちゃんに貰った大切な魔導具なんだ」
今度は茶化して誤魔化す事は許さないと言わんばかりに服部を睨みつけて殺気を飛ばす紫輝。
これに慌てた服部は釈明する。
「その
「当然貰います! 下さい!」
態度を百八十度変えて服部に両掌を向けて頂戴のポーズを取る紫輝。
そんな紫輝に対して服部は苦笑いしながらそれらを渡した場合の問題点を指摘する。
「でも、保管場所はどうすんの? それに持つにしても登録が必要になるし。そもそも、今のお前は未成年だから所持できないぞ」
現在の皇国では戦前と違い、鎧騎とその武装・装備の所持には登録が必要になる。
さらに鎧騎の操縦や武器の使用には免許が必須である。
これらの手続きには十五歳以上――成人している事が条件として法律で定められている。
当然、未成年の紫輝には無理だ。
「全部バラして部品の状態にしておけば登録も免許も税金を払う必要もありません!」
「無茶言うね!? 確かにその通りだけど……」
「保管場所に関しては当てがあります。その準備が出来るまで預かってて下さい」
「やれやれ……わかったよ」
次に紫輝は収納箱の他に気になっていた事――自分が死んだ時に持っていた物が今どこにあるかを青史郎に尋ねた。
「それなら実家の紫輝の部屋に大事に保管してある」
「そっか……」
自分の前世の遺品を手に入れるには自分の事を前世の両親や他の兄達にも話さなければならない。
紫輝は青史郎以外の他の家族にも伝えるべきかしばらく考え、迷った末に話すことに決めた。
「もうこの際だ。俺の事は青兄から物部の家族の皆に話しておいてくれないか」
「……いいのか? 今の家族にも秘密にしていたのだろう?」
「別に秘密にしてたわけじゃない。前世や生まれ変わりなんて言っても普通は信じてもらえないから話さなかっただけだ。今なら陛下の能力でそれも証明されてる。だから話したんだ」
「わかった……。なら、今から皇都の別邸に住んでいる父さんと母さんに会って話して来る。……もし、二人が会いたいと言ったら――会ってくれるか?」
「……向こうにその意思があるなら……会っても良い」
少し躊躇ってから答える紫輝。
自分と会った時、二人がどういう反応をするかわからないからだ。
「伝えておく」
その後、紫輝が死んでから現在に至るまでどのように状況が変化したか話しを聞いた。
そして、服部と青史郎からそれぞれ連絡手段を書いたメモを渡されて別れ、百地は”近々また会うことになるから連絡先を今伝える必要はないかな”――と、言い残して去って行った。
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