第15話 今後の方針
――テロ事件の翌日
輝は急遽、神薙神社の敷地にある神薙本家の邸宅に神薙四天王とその関係者を召集した。
香、美琴、勇希の四天王の三人に香の夫の優真。
それに紫輝の父で輝の夫の総一朗の計五名。
それぞれの仕事については輝と総一朗は子供がテロ事件に巻き込まれた事で急遽休みを取り、優真は現在長期休暇中なので支障はない。
香の職場はこの神社だし、勇希、美琴の退魔師の仕事は時間をずらせば問題なかった。
『神薙さーん! どうか一言お願いしまーすっ!!』
『お子さんに会わせて下さーい!』
『取材させて下さいよ!』
その邸宅の外ではどこから紫輝の事を嗅ぎつけたのか、新聞記者達が押し寄せていた。
記者達は神社の神職や職員、果ては参拝客にまで取材を求める始末。
このような迷惑行為に皆迷惑していた。
「煩いなー! 近所迷惑だよ!」
「新聞記者って、適当な記事を書いて大衆を煽るから嫌いなのよね……」
勇希や美琴達も取材陣に囲まれてなかなか邸宅に入れず苦労した。
「姉さん、警察呼びましょうか?」
「放っておけ。そのうち諦めて帰るだろう。それよりも今は紫輝の事だ」
広間の中央上座に座る輝の左斜め横には総一朗と一緒に紫輝が座っていた。
その紫輝に皆の視線が集中する。
「”
美琴が労るように紫輝に言葉を掛ける。
”導話機”とは地球で言う電話機の事だ。
この導話機は固定電話のように電話回線で音声を信号に変換して送り合うのではなく、携帯電話のように電波を飛ばす代わりに魔導波を飛ばして音声情報の送受信を行う。
ただし、携帯電話のように機器の小型はまだ出来ておらず、公衆電話くらいの大きさに留まっていて、海外への通話もできないものだった。
「でも、凄いよね~。帝国の皇女様の婚約者だなんて。僕にも早く皇子様が現れないかな~」
「そんな夢見てるから相手が見つからないのよ。現実を見なさい」
美琴は勇希の乙女な発言に呆れる。
「でも、自分は生涯結婚しないと心に決めているのでこの話しは迷惑でしかないです。だから、どうにかしてこの話しを断れないか考えています」
眉根を寄せて困り顔の紫輝。
紫輝のその発言にこの場にいる者が驚く。
「それはどうして?」
総一朗が紫輝に尋ねる。
こんな幼子が――ましてや自分の息子が人生の大事をもう決めているとは思わなかったからだ。
「それについては後で家族で話し合おう。話を戻すが、紫輝の婚約だが。既に星王陛下や帝国本土の皇帝にも知らせが届いている」
「星皇陛下はともかく、どうやって帝国に連絡を取ったのさ? 導話は海外に繋がらないよね?」
「皇国と帝国には緊急時に星皇と皇帝が直接連絡できる通信回線がある。それを使ったのだ」
「でも姉さん、普通はそういう大事のことは皇帝の承認が得られなければ婚約できないんじゃないの? いくらなんでも結婚条件が合致したからと言う理由だけで皇帝が会ってもいない相手と皇女の結婚を承認するとは思えないわ」
「帝国では王族の結婚は最終的に本人の意思に委ねられている。だから皇女が決断すればその時点で相手は皇女の正式な婚約者になるらしい」
輝は紫輝を見る。
紫輝は物凄く嫌そうな顔をしていた。
「皇女が良いとしても自分は嫌なんですが? そこに自分の意思は尊重されないんでしょうか?」
「それはもっともな意見だ。だから私もそう思い、今朝、教えて貰った連絡先に導話を掛けて皇女に抗議した。それで皇女から出された案は――”どちらかに好意を寄せる相手が別に見つかった場合に限り婚約を解消する”というものだ」
「見つからなくても解消する方法は……」
「これ以上の譲歩を引き出すのは無理だな。帝室にも面子がある」
「ですよね~……」
「そもそも紫輝。お前が皇女から婚約の証のブローチを受け取らなければ何とかなったんだ。だから私が普段からあれ程”知らない人から物を貰ってはいけない!”と、口を酸っぱくして言ってたのに……」
「油断しました……。面目次第も御座いません……」
輝に怒られて項垂れる紫輝。
「優真もなんで紫輝ちゃんにその事を教えてあげなかったのよ! あなた、帝国の大使館で外交官として働いていたのでしょう? それに、ロゼット様の友人なんだから、こういう話しは知っていたでしょうに……」
「スマン……、ありえない状況の連続で考えが追いつかなかったんだ……」
妻の香に怒られて項垂れる優真。
「この騒動で紫輝君の才能が帝国や星皇家、形祓一族に知られたわ。正直、こうなっては秘密にする意味がない。優真さんや惣一郎さんにも話して協力してもらった方が良いのではないかしら?」
美琴は総一朗や優真に紫輝の才能を打ち明ける事を輝に促す。
「……そうだな」
輝は二人に紫輝の持つ才能について話した。
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