第22話
早く紫輝が見つかるよう、そして紫輝の無事を心の中で祈る青史郎。
しかしその願いも虚しく、皇都に戻って四ヶ月後――実家から紫輝が徴兵されて戦死したという知らせが届いた。
「紫輝が近くにいたなんて……。それにしても何故だ! どうして紫輝が徴兵されたんだ! 兵員不足といっても、まだ学生の徴兵は必要ないはずだ!」
新鋭の兵器として軍に配備された鎧騎は運用され始めてまだ日が浅い。
それ故に操縦士や技術者の人材不足が否めず、頭を悩ませた軍令部は鎧騎専門学校の生徒に目を付け、政府に働き掛けて特別処置として鎧騎専門学校の生徒を徴兵したのである。
紫輝は運悪くそれに巻き込まれる形となったのだ。
知らせを受け取った青史郎は紫輝の死という出来事に精神的ショックを受けて寮の自室で寝込んでしまった。
「うっ、ううぅ……、紫輝いィィ……駄目な兄ちゃんでゴメンよぉぉ~……」
「青史郎……」
見かねた北斗は青史郎の為に父親である星皇に頼み込んで紫輝が戦死した時の状況を星軍の諜報部に調べてもらった。
すると、星皇と北斗はとんでもない事実を知る事になる。
なんと紫輝は生きていた。
ただし、戦死して死んだ者とし戸籍は抹消処理済み。
その上で隷属紋で拘束され、皇国軍(幹部達)の為に働く奴隷――死奴にされて。
紫輝は現在、陸軍の機甲部隊に所属していた。
「我が皇国で奴隷とは! 軍だけじゃない! 華族もこれに関わっている! いや、華族がこれを主導している!」
「皇国の裏でこんな事がまかり通っていたなんて……」
激怒する星皇、唖然となる皇太子。
更に詳しく調査すると星皇家に近習頭として仕える
星皇の友人で青史郎達の師でもある外松侯爵からも彼等が中立派の華族の勧誘や取り込みが以前にも増して激しくなったとの情報提供がなされた。
「奴らの計画実行の時期が近いのかもしれん……」
星皇と北斗は紫輝の生存を青史郎に伝えるか迷ったが、北斗は青史郎に真相を伝える事にした。
無論、黒幕で星皇の近習頭を務める近衛晃には気付かれないよう内密に。
奥太子の次期筆頭近習とはいえ、今はまだ一介の近習見習いしか過ぎな自分が星皇に謁見する事になるとは思わず、星皇の前で恐縮する青史郎。
星皇と北斗から聞かされた紫輝の生存は喜ぶべきものだったが、話の続きを聞く事に青史郎の顔色が青ざめていく。
「そ、んな……」
青史郎は焦燥に駆られ、直ぐにでも陸軍に乗り込んで紫輝を救い出そうとしたが、北斗や星皇に止められた。
「待つんだ! 今、君が行っても弟君は救い出せないよ!」
「君の弟は隷属紋の呪術で拘束されている! 最悪二人揃って口封じされるぞ!」
「それなら隷属紋を解呪する方法を探さなくては!」
「それについてだが――」
星皇が星皇家に伝わる秘技を使う事を提案した。
「しかし、あの秘技は危険では?」
「だが他に方法はない」
「ならばその秘技を私にお教え下さい! 我が弟の黄汰は【魔法】の使い手で私と同じく外松侯爵の弟子! 必ずや奴隷紋を解呪する方法を見つけてくれます!」
「
「ありがとうございます!」
帰郷した青史郎は家族と外松に紫輝の生存を知らせた。
家族は紫輝が生きている事に歓喜したが、紫輝の置かれている現状を知って激怒した。
「俺の【魔法】で紫輝を奴隷紋の呪いから解放して見せる!!」
「黄汰、私にも手伝わせて。【呪術】の力は失くしたけれど経験と知識は私の中に残っているから」
「私も手伝おう。紫輝君は私の可愛い弟子だからね」
「わかったよ。お袋、師匠」
黄汰は美世や外松と協力して奴隷紋を解除する研究に取り組み、人を一時的に死んだ状態にする【死中活生】を編み出した。
赤彦は紫輝の現状を調べた。
整備に必要な部品や備品が足りずに苦労している事を知って、せめて紫輝の力になればと工廠の関係者に鼻薬を嗅がせ、紫輝が来るスクラップ場のスクラップの中に状態の良い鎧騎の部品や道具をそれとなく紛れ込ませた。
青史郎は一秒でも早く、紫輝を死奴から解放すべく、他の死奴を開放しながら皇国軍や華族達に死奴を供給するのに必要な隷属紋の呪術の使い手を人知れず潰して回った。
その過程で青史郎は服部と知り合い、彼の協力を得る事で紫輝を救う大きな助けとなった。
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