第21話
青史郎は外松の勧めで皇国でも最新の研究設備を備え、最高レベルの教育の受けらる皇都大学に入学。
勉学に研究にと励んでいた。
そんなある時、学友となった北斗皇太子に自分の近習になるよう懇願された。
「ねえ、お願いだから僕の近習になってよ! 君のような優秀な人材なんて滅多にいないんだからさ! それに、君の一族は昔うちに仕えてくれてたじゃないか!」
「勘弁してくれ……。自分はただの一般庶民だし、うちが星皇家に仕えていたのは百年も前の昔の話だ。それに物部家を追放したのは他でもない星皇家だろう?」
「それについては少し疑問があるんで当時の記録を調べ直してる最中だよ」
当初は断っていた青史郎だが、あまりのしつこさに青史郎は北斗に――
・学業や研究の妨げにならない事。
・学校はちゃんと卒業させる事。
――という二つの条件を出した。
「いいよ! ていういか、君、もう卒業資格を満たしてるんじゃない?」
「そんな事ないだろう」
丁度近くを通り掛かった青史郎の担当教授がそれについて答えてくれた。
「いや、物部。お前、もう卒業資格を取得してるから。授業の単位は関係ないし、試験は免除だ。課題の提出も必要ないが可能なら出してくれ。後は自分の研究に集中してくれれば良いぞ」
「え?」
「これから宜しくね! 青史郎くん♡」
「……見習いからにしてくれ」
「勿論だよ!」
晴れて皇太子の近習見習いとなった青史郎に実家から赤彦と鈴の婚礼を知らせる手紙が送られて来た。
(紫輝の様子を見るついでに帰郷するか……)
赤彦の婚礼祝に細工が施された夫婦箸を購入し、魔導列車で帰路につく。
帰宅すると家では家族や使用人達が婚礼準備で忙しくしていた。
「赤彦、おめでとう。これは婚礼祝だ」
「ありがとう、青史郎兄さん! 兄さんも皇太子の近習になったんだってね!」
「まだ見習いだ。 ……紫輝はどうしてる?」
「相変わらずさ。僕以外とは必要がなければ会話もしないよ。今は外松様の手伝いや左近伯父さんの紹介で何か仕事をしているようだよ」
「そうか……」
「左近伯父さんとはあまり関わって欲しくないのだけどね」
「紫輝には話してないよな?」
「証拠は何もないからね」
婚礼準備を邪魔をしては悪いと思い、青史郎は赤彦との会話を早々に切り上げた。
青史郎は紫輝の様子が気になって部屋を向かうが紫輝は不在で居なかった。
(居ないか……。まあ、流石に赤彦の婚礼には出席するだろう)
その青史郎の予想はハズレた。
紫輝は婚礼当日になって一度帰って来たようだが再びどこかに出掛けてしまい、そのまま戻って来なかった。
(紫輝の奴! 流石にこれは駄目だろう!)
青史郎にとって紫輝は可愛い弟である。
しかし家族といえど最低限の礼儀は必要だ。
兄の大事な祝いの席を欠席した紫輝に憤慨し、紫輝を見つけたら叱ろうと決意する。
だが、その翌日の早朝――赤彦が女中から聞き出した話から紫輝と鈴が夫婦になる約束を交わす仲だった事。
そして縁談を持ち込んだ羽黒商会の商会主やその協力者の奉公人達によって鈴と別れさせられた事を知った青史郎と家族達。
「そりゃ紫輝も婚礼に出づらいだろう……」
黄汰がボソリと呟く。
『……』
黄汰の一言で居間に集まる家族の間で気まずい沈黙が流れた。
青史郎は滞在期間ギリギリまで紫輝の行方を探したが見つからず、滞在期間を延長しよとした。
「それは駄目だ。君は見習いとは言え皇太子の近習になったんだ。自分の勤めを疎かにしてはいけないよ。皇都に戻りなさい」
「……はい、父さん」
もう既に卒業資格を持ち、授業や試験を免除されているとは言え、近習見習いなったばかりで覚える事も多くある。
後ろ髪を引かれながらも青史郎は皇都に戻った。
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