第11話
――大連合艦隊がミドルウェイ海域を出立して七日後
艦隊はようやく北方六島がある海域まで到着した。
連邦国の前身――帝皇国から戦争の賠償として割譲され、皇国の領土に編入された”
「本国から送られて来た情報通り空富島は完全に侵略された後か。陸軍が頑張って足止めしてくれた御蔭で民間人の避難も完了している。今度はこちらの番だ! 遠慮は要らん! 存分に叩きのめしてやれ!」
大艦隊司令長官である
それにタイミングを合わせるようにして皇国本土から爆撃隊が連邦国軍に迫っていた。
――空富島に設置された連邦国軍仮設本部
「北東方向から皇国の大艦隊の襲撃! 艦艇総数二百以上!」
「何だと! もしかして、ミドルウェイに向かった大連合艦隊か! 戻って来るのが早すぎるっ!」
「それだけではありません! 皇国方面から物凄い数の航空機がこちらに向かって来てます! その数三百以上! あまりに多すぎて計測できません!」
皇国軍の襲来に慌てふためく連邦国軍の将兵達。
だが、出撃は間に合わず、迎撃もままならない連邦国軍。
警戒を怠り、油断していた連邦国軍は空富島を包囲するように展開された大連合艦隊の海上からの艦砲射撃と本土から飛来した爆撃隊の爆撃によりすり潰されるようにして殲滅されていった。
「あ、良さそうな鎧騎がある! あっちには武装が! 向こうには換装用の装備が転がってる! ……貰っとこ」
戦闘終了後、共産国の鎧騎評価のために技術士官と一緒に空富島に上陸した紫輝が共産国の鎧騎やそれ用の武装と装備を自分の収納箱にこっそり回収していたのは内緒である。
――帝国 皇帝の執務室
帝国皇帝フュール=ルードビッヒは軍司令部から届いた緊急報告を聞いていた。
「何だと? 連邦国が皇国に攻め入ったと?」
「はい。皇国が合衆国との決戦に乗じて皇国の領土を削り取るつもりのようです。その為に連邦国は軍の戦力の三分の二を投入。ですが、皇国と合衆国との艦隊決戦は短期間で終結し、皇国側が勝利を収めました。その決戦での皇国側の損害は軽微。ですので皇国艦隊は連邦国軍に対応する為、そのまま北方に向かっているそうです」
「これは積年の恨みを晴らすまたとないチャンスだ! 直ぐに会議を開く! 大臣達、それに軍司令総長と陸・海・空の司令長官等を集めよ!」
帝国は公国とそれに肩入れしていた王国との戦争で勝利を勝ち取った直後。
国や軍の損耗は激しく、被害も決して小さくはない。
しかし、連邦国の前身である帝皇国の頃から帝国は長年苦しめられてきた。
この機会を逃す訳にはいかなかった。
「連邦国とは不可侵条約を結んでいます。それついてはどう対処するお積もりですか?」
「その件は”我が帝国と皇国は同盟国であり、これを助ける為”という
「承知しました。では直ちに軍司令部にて作戦を練り、軍の編成と出撃準備を致します」
「急げよ」
「ハッ!」
「それとアレについても考慮せよ。常にアレの情報には気を配れ。公国や王国が持っていたのだ。連邦国が持っていてもおかしくはない。合衆国と同盟を結んでいる国はアレを提供されていると考えてよいだろう」
「アレには我々も度肝を抜かれましたからな……。今もアレの動向については情報の網を張って注視しております」
「どういう訳か当の開発国である合衆国は皇国に負け続けておるのに未だ使う気配がない。先の重要な艦隊戦でも使われなんだ。一体何を考えているのか解らぬ」
「それについての情報も現在集めております。我が国と合衆国はあまりに距離が遠すぎて情報の伝達に時間が掛かっております。もう少しお待ち下さい」
「うむ。だが、できる限り早急にな」
「承知しました!」
フュール皇帝は国政と軍事を担う主要人物が出席する会議にて連邦国との開戦を決定。
帝国は帰還中の軍隊と国内に残してある残存戦力を入れ替えるようにして連邦国に侵攻した。
――連邦国 官邸
「た、大変です! 帝国が宣戦布告してきました!」
「馬鹿な! 帝国とは不可侵条約を結んでいたはずだぞ!」
「”皇国と我が帝国は同盟関係にあり、これを支援する為、貴国との不可侵条約を破棄し、宣戦布告する”との事です!」
「巫山戯るなっ! そんな話聞いた事もないぞ!」
「侵攻に投入した半分の戦力を直ぐに呼び戻せ!」
だがしかし、その頃には皇国に侵攻した連邦国軍は既に壊滅した後だった。
「こうなれば仕方ない……アレを使うぞ!」
「しかし、アレはまだ不安定で暴走の危険が……」
「他に方法はない!」
――連邦国 魔導兵器研究所
「駄目だ! 今は安定しているが下手に動かして刺激すればいつ暴走するかわからん! 下手をしたらこの国が焦土と化す! そうなれば公国や王国、合衆国の二の舞いになるんだぞ!」
兵士達がソレを運び出すのを必死になって止めようとする研究所所長。
しかし、将校は所長の制止の声を無視して兵士にソレを運び出させる。
「同志スターリンクの御指示だ! 逆らう事は許されない! いいからそれを運び出せ!」
「ハッ!」
「や、やめろっ!! やめるんだーーー!!!!」
所長が必死になって制止する声も虚しく、兵士達はソレを研究所から輸送車両に載せて空軍基地まで輸送し、大型爆撃機の爆弾倉に収められた後、滑走路を離陸して空軍基地から飛び立った。
そしてその爆撃機が首都の上空を飛行中――それは起こった。
ピカピカッ! チュッドーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!
爆撃機に積まれたソレは研究所所長の懸念通りに暴走して大爆破を起こし、首都を一瞬にして瓦礫に変えた。
そんな事態を招いたソレの名は後の世の歴史にこう記される。
『人類史上最恐最悪の戦略級大規模破壊兵器――”魔導核爆弾”』――と。
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