第25話 父の容態
母の沙羅は、翌日の朝に帰ってきた。
子供たちは寝ていたので、真知子が迎えてくれた。
顔色が悪く疲れ切った様子の沙羅に、真知子がコーヒーを淹れた。
「怪我で済んで、よかったじゃない」
「ええ。でも、彼は悪い事は何もしていないわ」
沙羅は夫が理不尽な事故に、巻き込まれた事に憤ていた。
真知子は、沙羅の肩を抱きしめて背中を撫でた。
「荒廃した世の中は、人の心を変えるのよ」
沙羅は声を上げて泣いた。
それには怒りと悲しみが混じっていた。
翌日も、沙羅は仕事を休み病院に行った。
パンデミックなので面会も規制されていて、入院の手続きと事務的な事のみ窓口で行い病室には入ることができなかった。
沙羅の働く旅行代理店はパンデミックのせいで仕事が減り、休んでも差し支えなかったが、その分収入も減った。
真もライブが無くなり、収入も少なくなってきていたので、生活は大変になっていた。
そんな状況で、起きた事故だった。
アメリカは皆保険ではないので、高額な入院費は家計を圧迫する。
民間の保険には入っていたが、それだけでは足りなかった。
これから先の事を考えると、沙羅の不安は増すばかりだった。
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