第12話 パンデミック
一年後、パンデミックが世界を襲った。
ハイスクールは休校となり、授業はリモートで行う事となった。
外出規制もされて、イベントのほとんどが禁止された。
買い物は、決まった日にしか許されなかった。
教会でのミサは禁止となり、マリアは途方に暮れていた。
教会近くの広場は規制線が張られて、近づくことさえできなかった。
ストリートバスケは中止となり、仲間とはメールやSNSでしか、連絡が取れなくなった。
梨花達3人は学校に行くことができないので、直接会うことができなくなった。
仕方なく3人は、メールやオンラインで無事を確認した。
梨花の携帯のメール音がなった。
開くと、母親の沙羅からだった。
『グランマに連絡をしました。すぐにそちらに向かうそうです。パパは怪我をしたけど、命に別状はなく今は眠っています。美樹には心配するから、まだ連絡はしないようにね』
梨花はパパが生きていたことに、ホッとした。
「お姉ちゃん、パパはどうかしたの」
「海斗、パパは転んで怪我をして今病院なのよ。今日は帰ってこないかな」
「そう、大丈夫かな?」
「うん、パパ強いから」
「そうだね」
その時、一階のオートロックのブザーがなった。
「海斗、やっとグランマがきたみたいだよ」
「ワーイ、僕が出るよ」
海斗は背伸びをして、マイクに話しかけた。
しばくすると、真知子が玄関ドアのチャイムを押した。
海斗が、走っていきドアを開けて真知子に抱きついた。
「おや、大きな赤ちゃんですね」
海斗は、照れて下を向いた。
「グランマ、来てくれてありがとう」
「いいのよ、遠慮しないで家族なんだから」
「夕ご飯まだでしょ。お稲荷さん持ってきたの」
「やったー。お腹ペコペコ、早く食べよう」
「海斗ったら、調子いいわね」
梨花は真知子が来てくれて、安心したのか急に涙が出てきた。
梨花は3年生になり、もうすぐ17歳になるから大人だと思っていた。
でも、今回の件でまだ一人では何もできない事を痛切に感じた。
「梨花も、早く食べなさい」
真知子はテーブルに並べた、稲荷寿司を梨花に薦めた。
梨花は海斗が見ているので、泣くのを必死に我慢した。
「はい、お姉ちゃんの分。おいしいから、食べて」
海斗は手に持った稲荷寿司のお皿を、梨花の目の前に差し出した。
「なんで、泣いてるの?せっかくグランマが作ってくれたのに」
「泣いてないよ、いっぱい食べるからね」
梨花は稲荷寿司を頬張ったが、涙が混じって少し苦かった。
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