第18話 戦争と家族

 3年生が終わる2月末に、予期しないことが起きた。

  ロシアによるウクライナ侵攻だ。

  人々は口々に、ロシアを非難した。

  梨花達は、アリーナの事を心配して、カフェテリアで彼女を励ました。

「胸が張り裂けそうなのよ。両親の働くバレエ団には、両方の国の人がいるの。皆心を痛めているわ」

 梨花は、慰める言葉が浮かばなかった。

 

「アリーナ、大丈夫よ。すぐに、戦争は終わるわ」

 マリアは励ますように言葉をかけた。

 

「でも、どっちが勝っても両親は喜ぶことはできない」

  

「そうね。両方ともアリーナの祖国だから、どちらも大切よね」

  どんなに慰めてもアリーナの暗い表情は変わらずに、気持ちは晴れないようだった。

 

  その後も、アリーナの気持ちとは裏腹に戦争は、ますます激しくなっていったた。

  ロシアが非難されても、ウクライナが有利に戦うことを聞いても、アリーナは嬉しくなかった。

 悲しいことにアリーナに心無い言葉を浴びせる生徒もいて、次第に学校も休みがちなった。

梨花はアリーナのことを両親に相談した。


「そうだ、お祖父さんの家にアリーナの家族を招待しよう。今はいい季節だし、気分転換にもなる。ママ、頼んでくれないか?」


「いいけど、理由は?」

  沙羅は、真の考えていることが理解できなかった。


「グランパは日系2世だから戦時下の大変な時、どうやって乗り越えたかよく分かっているからさ」


「そうか。お父さん達ならきっと、彼達の気持ちが分かるわね。早速、聞いてみるわ」

  沙羅は早速携帯から、祖父の家に電話を掛けた。

  祖父達は、快くアリーナの家族を招待してくれることになった。

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