第54話 予選

「あれ、もう斬りつけた? えーっと、斬れてないからふご……」


鉄の棒に近づき先端を持って持ち上げると斬れていることがわかった。切れ味が見事すぎて鉄の棒が倒れなかったようだ。サシャ、おそるべし。


「よく練習したのもある」


体がブレないよう斬りつける練習をしていたとか。次は剣士用試験、フルスラッシュを撃ち長さを計測を、足切りラインは5メートルといったところ。会場の後ろ側は岩山になっている、これなら大丈夫だな。


「良い記録が出ました!」


15メートルといったところ、かなりの腕前の剣士だな、腕自慢が集まっているだけある。サシャの出番、スキル、フルフラッシュを放つ。剣線が伸び、50メートル先の岩山まで到達、勢いは止まらず豪快に岩壁を破壊しながら衝撃が突き進む。


「……岩が崩れていたかな、と、とにかく合格、合格です!」


静まり返る観客。なんだ崖崩れかとということで皆落ち着いた様子。この後も順調に合格し続ける。そして試験最終日、これも見事合格。ついに出場の権利を勝ち取る。


「それでもまだまだ人がいるね」


これから予選、現在残った参加選手は二百人以上いる。最終的に十六人のトーナメント戦。予選は選手を十六ブロックに分け、各ブロックでバトルロイヤルがおこなわれる。シード選手、オニギリと皇下五剣はここから。予選は俺達もサポート役ということで彼女についていくことができる。手続きをしてサポート者のカードを手に入れる。大会まではゆっくりしようと観光などをして英気を養うことに。


「いよいよか」


大会当日、闘技場へ向かう。選手の控室へ。周りにはこれから戦う選手がいる、全員強そうだ。


「はぁ、ついてないな」

「予選敗退確実かぁ」


ため息とともに愚痴が聞こえてきた、戦う前から弱音とは。気になって参加選手の名簿を見る。


「皇下五剣の一人、氷山のグレイヤ。氷の魔剣を操り、氷を纏う防御面に突出したレアスキルを所持。攻防一体の独自の剣術を使う。五剣の中で二位の実力、今ならもしかしたら一位かも」


強敵が紛れ込んでいたな。参加者が落胆するのも無理はない。


「皆さんお待たせしました! 十年に一度の剣の祭典がやって参りましたよ!」


盛り上がる会場、大会が始まった。サシャ達の番は二番目、出番は近い。


「決まりました! 第一ブロックはオニギリ選手が勝利しました!」


大歓声が上がる。勝ち抜けはオニギリ、ということはここで勝つとオニギリと戦うことになるのか、楽しみだな。第二ブロックの選手は移動、闘技場へ。内部には大きなステージが一つ、そこで皆が戦う。全員で動き回っても余裕がある広さ。選手は闘技場ステージへ。


「続きまして第二ブロック。注目はやはりグレイヤ選手でしょうか」

「優勝候補です。間違いなく勝ち上がるでしょう」


解説者から早くも勝ち上がり宣言。かなりの実力者ではあるがなかなか乱暴な意見だ。


「第二ブロック、開始っ!」


鐘の音が鳴り戦いが始まる。選手は広いステージの上に別れて一人ずつ。近くの相手を警戒しながら襲ってくる相手と戦うといったところ。サシャを見守る。どこから敵が襲ってくるかわからないのは怖いところがあるがドキドキして楽しい面もある。


「一人の選手が中央に向かって、いや一人ではないですね」


ここで動きが、サシャとグレイヤ以外の選手達が中央に集まっていく。しかし戦う様子はない、こいつはもしや。


「あーっと、これはいけません。グレイヤ選手を倒すために選手達が結託していたようです!」

「反則ではありません。目立つ選手が狙われるのは仕方がありませんね」


皆グレイヤに向かって構える。ジリジリと近づきグレイヤを囲んだ。会場からは大ブーイング。そんなんで勝って嬉しいかと野次まで飛んでいる。


「へへっ、アンタさえ倒してしまえば十六人の中に入れるんだ。俺達にとってはそれだけでも名誉のこと、一生飯が食える」

「ふふ、志が低いですね。優勝するくらい言わないと」


囲まれているが余裕のグレイヤ。やっちまえと襲いかかる選手達、絶体絶命に見えるが。


「クリスタルフローズン!」


彼の周りに多数の氷が生成される。大きな氷が彼を包む、飛び込んだ剣士が氷に剣を叩きつけるも割れない。着地したところで氷に足を取られ動けなくなる。周りの選手も全員、氷によって動けなくなっていた。


「ま、参った」

「やはり強いですね、グレイヤ選手」

「彼の氷は攻防一体、どうやれば倒せるのか想像がつきません」


ステージから降りていく選手達。だが、一人だけ残った選手が居た、サシャだ。彼女にも氷が迫ったが飛んで後方にかわし様子見をしていた。グレイヤの前に立つサシャ、一騎打ちだ。


「白熱の第二ブロック、残るは二人です!」


向き合いお互い構える。グレイヤは始めからレアスキルを発動している。


「その身のこなし、只者ではありませんね。ではこれではどうでしょう!」

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