第53話 剣の大会

「賑やかだな」


街中お祭り騒ぎ、今日は大会に出る剣士達の壮行会。オニギリとこの国の代表達がパレードをしている。街の人達から熱烈な歓声が飛ぶ、相変わらずの人気だ。パレードが終わりコロシアムへ入っていくオニギリ達。壮行会の一環として街のコロシアムで剣術大会がおこなわれる。上位陣は旅費が無料になる、すでに大会に出場が決まっている選手は参加しない。日時や移動の方法、休む宿など細かく決まっていて俺達とは別行動になってしまうためサシャは街の大会に参加するのを見送った。ここから距離があるからな、仲間と観光しながらの方が良い。


「いけー!」

「倒せー!」


現在決勝、食べ物と酒を手にし観戦している。VIP席にはオニギリ達。ラングさんはそろそろ歳だから若手に譲るということで大会には参加しない。


「ハッ!」

「グッ、参った」


相手選手の剣を弾き飛ばし残心、勝負あり。優勝者が決まった。司会が勝利者インタビューをした後、オニギリとラングさんが手合わせ。二人がコロシアム中央に出てくる。湧く観客、お互い向かい合い構える。


「はじめっ!」


力を確かめ合うように剣を交える二人。次第に熱を帯び、まるで実戦のようにお互い強烈な攻撃を撃ち込む。その戦闘に観客は言葉を失い、彼らの戦いを見守る。時間になり戦闘終了。観客席から大歓声が上がる。戦いを真剣に見ているサシャ、しかしいつもと様子が違う気がした。体調が悪いのか、俺の気のせいなのか。帰りに街に戻ってきている宵闇の団のところに寄ってパインと話をする。


「私も見たよ、表の連中もなかなか強いね。私? 大会には出ないよ、仕事が忙しいからね」


パインも大会を見ていた。楽しそうに語る彼女、彼女は人外側、その力は二人を軽く凌駕している。我流だから負けるかもと話すパイン。技術の差は結構大きいからなんとも言えないな。


「そうだ、サシャ、大会に出るんだよな、手合わせしてみないか? 裏の壮行会をやろうじゃないか」


頷くサシャ。ガウスさんの土地を借りる。屋根と壁が吹き飛んだ家が残っていた。これから建て直しの予定。もう壊せるものはないから本気でやってもいいぞと半分やけくそ気味のガウスさん。力を開放し吸血鬼化するパイン、戦闘開始。力まかせに斬りつけるパイン、一般的な剣士ならこれだけで押し潰されてしまうがサシャは余裕で受け止める。逆に力任せに押し返す。後方に飛ばされたが翼を使いふわりと地上に降り立つ。


「やるじゃないか」


突き斬り、攻撃を仕掛けるが全てをかわし受け止める。ステは圧倒的にサシャ、そして技術も。最後に凄まじい速度の打ち上げの斬撃を放ち剣を弾いてパインは負けを認める。


「聞いてはいたがここまでとは。最後の攻撃は全く見えなかった。本当に世界一なんじゃないかね」


サシャの壮行会が始まる、皆と酒を飲む。さすがは芸人さん達、賑やかしはお手の物。とても楽しい宴となる。


「頑張っておいで」


パインとその仲間達、アイネの仲間達が応援してくれた。二日後、オニギリ達が多くの民衆に見送られ、馬車に乗り出発。あれ、妙に人数が少ないな、そうだ大会上位者達がいない、別の時間に出発かな?


「ああ彼らなら」


二人の戦いを見て上位勝者の大会参加者が皆棄権するというトラブルが発生していたようだ。確かに大会と二人の実力に差がかなりあったからな、心が折られてしまったか、残念なところだ。俺達も出発、海を越え剣の国へ向かう。馬車に乗り長旅。


「みんな剣の国目的かなー?」


途中同じような旅の人達と会う。かなりの人達が剣の国に向かっているようだ。十年に一度の祭典、剣士はもちろん観光客もかなり来る。あまりの混み具合に宿を取れず途中野宿することになる。外で寝るのは久しぶりだな、困ったものだと言いながらリーナが活き活きしている。周りを見渡すと同じように野宿の旅人たちがいた。こうして旅を続け剣の国に到着。


「人がいっぱいですね」


世界中から剣士が集まっている、それから観光客も。なんとか宿を取れた、ここまで来て野宿はちょっと辛いからね。国側もわかっているようで仮設の宿がかなり多いのがわかる。地図を入手、剣の聖地だけあって剣の道場が多数ある。大会がおこなわれる闘技場を見つけそこへ。


「剣の大会、一般参加の方はこちらから」


受付を見つける。列に並びサインをし大会に参加したサシャ、番号をもらいこちらへ。予想通り、かなりの数の参加者のようだ。皆腕に自信がありそうな人ばかり。


「参加者の方、参加資格試験がありますので移動してください」


サシャが参加者達の中へ。まずは足切り試験、実力のない者は容赦なく落とす。地面に突き刺した鉄製の棒を鉄の剣で斬りつけぶった斬る事ができなければ失格。他いくつか審査があり全て一般公開され、大会前から客が楽しめるようになっている。会場に移動、彼女の出番を待つ。


「くそっ、失敗だ」

「不合格」


鉄の棒に斬りつける参加者達。細めの棒だが、鉄を鉄で斬るのは非常に難しい。かなりの数の参加者が落ちていく。修行を積んだ中級冒険者でもギリギリといったところか。番号が呼ばれ、いよいよサシャの番。構えてから超高速の水平斬り。ほとんどの人には見えていない剣の速さ。剣は右から左に移動しているが誰も気がついていない。そして棒はくっついたまま。あれ、もしかして失敗?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る