前のエピソード――第51話　頂上決戦！

いけない、考る時間をできるだけ与えないようにしなくては。スキルの謎を解かれるとこちらが負ける可能性が出てくる。

「神印掌！」

放ったスキルを軽々と避けるサーク。一発当たれば倒せそうだが逆に言えば当たらなければ倒せない。これだけ速いとかすらせるのも難しい。黄金体撃を使い障害物など関係なしに破壊しながら追撃するが追いつけない。

（凄まじい破壊力だ。だが速さはこちらが上、これなら勝てる）

一瞬見失い、彼に背後を取られてしまう。ナイフを背中に突き立てようと攻撃。

「もらった！」

サークのナイフが空を切る。高速でその場から逃げ出す、クイックステップを使った。追いかけてくるが加速し引き剥がす。

（そんな馬鹿な、速度が上がった、しかも俺よりも速い！？）

このスキルなら彼よりも速く動ける。これでこちらの勝ちだな。接近し短剣で攻撃を仕掛けてくるサーク。

「乱れ突き、疾風迅雷！」

スキルを繰り出すがすべて見える。上半身を反らしながら攻撃をその場でかわす。一旦引くサーク、こちらは魔法のアイススピアを発射。かわしきれず脚にダメージを負う。

（魔法だと、しかも超巨大な！）

間髪入れず俺はそのまま追いかけ急接近。

「くっ！」

苦し紛れに両手で短剣を突き出す。彼の両腕をキャッチ、力を入れ握ると苦悶の表情になり短剣を落とした。勝負あったと思われたがこれは彼の策だった。

「お前に接する方法を考えていたんだよ！　もらった、レベルバニッシュ！」

彼の手が怪しく光る。俺の腕を触りスキルを発動。これはレアスキル、レベルバニッシュだ。レベル１にしてしまう恐るべきスキル。スキル発動後、足で器用にナイフを操り、俺の腕に切りつけそれを交わすため手を離し、彼は後方へ下がる。

（くく、レベルバニッシュは嘘、本当の能力は相手の経験値を吸い取るエクスイーター。そうやって相手の経験値を吸い取り強くなってきた。そして今、奴の膨大な経験値を吸い取り、俺は最強の戦士に！）

ふぅ、危ない。今日仕事前にラックアップをしておいてよかった。気になるスキルがあってそれをゲットして変えるの忘れて、まあいいかということでそのまま、クラスが変わってレベル１のクラスになっているんだよね。三年間修行して高レベルになった騎士で戦っていたらしばらくは立ち直れなかったな。

「悪いな、このスキルだけは使いたくなかったが。大人しく負けを認めろ。体が重いだろう？」

彼の前で元気に動いて見せる。

「なんだとっ！？　（経験値を吸ったが身体に変化がない、なっ、俺のステが変わっていない、ということは吸った経験値がゼロ！？）」

「決着だ！」

サークに突っ込む、突いてきた短剣をかわし、彼の顔の前に拳を。

「……参った、俺の負けだ」

ナイフを投げ捨て降参する。

「さて、国に伝えてくるとするか、負けましたってな」

負けた割にはどこか嬉しそうなサーク。背を向け手を振りこの場を去る。恐ろしく強かった、トータルライズでは敵わないほどに。後日大きな出来事が発生。次男の王子が現王が世界に攻め入る意思ありと弾効、失脚させ王の交代劇が起こった。世界に知られると問題なため、一連の出来事は全て秘密裏に行われた。表向きには病気で退くという形になっている。王につく人間はかなり少なかったと聞く。平和を願う人が多くてよかった。

「しかしサークさんの実力なら次男を押しのけ長男王体制でいけたのでは？」

「サークさんは全く動かなかったそうだ。おそらくお前と戦ってみたかっただけだろうな」

そして今は次男についている。国としても従うのならとサークさんを今まで通りの扱いでいく方針。彼と争っても国を滅ぼされてしまうからな。そのくらいの力を持っている。本当に気分屋な人だ、危なっかしい。