第51話 頂上決戦!
「悪いが仕事を頼みたいのだが」
ルーラーさんからの仕事依頼。剣の国の大会はまだ先、時間に余裕がある。仕事を受けることに。
「悪徒の街跡地を破壊してもらいたいんだ」
まだ残っていたんだな。そこそこ大きな街だから潰すのにもかなりのお金と時間がかかる。俺が一気に破壊してしまえばお金も時間も浮く。業者に頼むよりも安く済むかも。
「住んでる奴らは追い出してくれ。皆盗賊だがな」
盗賊の住処になってしまったことも俺に依頼した理由のようだ。一般の業者では対応できない。彼らを片付けてから街の破壊をする仕事というわけだ。
「懐かしいな」
悪徒の街の前へ。あれから結構時間が経つ、そして街を破壊することになるとは。トータルライズを使い街の中に入っていく。いくつかの建物が崩れている。さっさと片付けてしまおう。
「誰だ、って魔獣か!?」
早速盗賊とエンカウント、続々と建物の中から出てくる。かなりの人数がここにいるようだ。さっさと捕獲して国に渡すとしよう。襲ってくる盗賊を片っ端から方片付けていく。二層の壁、一層の壁を破壊し中を見ていく。もういないかな? 一応最終勧告をしておこう。壁を登り、声が通りやすそうなところで大声を発する。
「これから街を破壊する。隠れていると巻き込まれて死ぬことになるぞ。とっとと出てこい」
「ひっ、ひいっ」
数名の盗賊が悲鳴を上げながら逃げ出していく。ったく、手間かけさせるなよな。彼らを縛り上げ外に出す。まとめて外に放り投げる。国の兵士が連れて行ってくれている。後はこの街の破壊だけ、誰もいなくなった街は静かだ。
「この闘気は!?」
その静寂を破る者がいる。強大な闘気を発しながらこちらに近づいてくる。魔人砦で感じた闘気だ。この前と違うのはまっすぐに俺に向かってきていること。そのままの速度で俺に突っ込んでくる。飛んでかわし、その強者と距離を取る。前回と違い姿は隠していない。
「挨拶代わりだが余裕でかわしてくれたか。うれしいねえ」
サークさんだ。異様な速さ、人間のそれではない。ルーラーさん宅の出来事を思い出す。そうか、あの時彼は単純にステータスが高く小細工せず速さで忍び込んだんだ。彼はすでにレアスキルを持っている。となると考えられる答えとしては、サークさんは俺達と同じように人外のレベルに達しているということだ。どうやってそこまで上げたかはわからないが、俺達のように特殊な方法でレベル上げをしたのだろう。そして以前と違うことがある。彼はこちらに殺気を向けている。
「探したぞ、筋肉の化け物。お前の命をいただきに来た」
魔人の時は大人しく去っていった、味方だと思っていたが。できれば戦いたくはない。
「俺にはアンタと争う理由がない」
「お前になくてもこちらにはあるんだ。王が交代したのを知っているな?」
俺達が修行中に王が亡くなり息子で長男の王子が戴冠し王に。平和を愛する前王とは違い、現王は野望を抱いているようだ。世界を取る足がかりとして魔族の領地を手中に収めようとしている。国の力を強めて隣国農業の国に攻め込む。農業の国の戦力はかなり弱い。魔人戦争では送った兵はわずか、代わりに物資を大量に届けている。もし戦いになれば圧勝だろう。大陸の覇権はこの国のものに。物資を大量生産できる国と、戦力があるこの国が合体すればかなりの強国になるだろう。そしていつかは世界制覇を。
「世界制服にはお前が邪魔なんだ。その力があれば国を潰すなんて容易い。俺もそうだ。いわば代理戦争なんだよ、俺達の戦いは。世界対この国のな」
大きな話になってきたが実感がいまいち沸かない。よく考えると魔人を全滅させたり、隕石で世界が滅びそうになったりしてきたから、大分感覚が麻痺してしまっているようだ。嬉しそうに笑っているサークさん。言葉が止まらない。
「国も良い舞台を用意してくれたよな。世界の明暗を分ける戦いを俺達に任せるなんてわかっているじゃないか。人外の者同士の頂上決戦だ。ああ、ぞくぞくする。お前も楽しいよな!?」
「くだらんな」
動きが止まる。つい本音が出てしまった。俺は殺し合いをしたいわけじゃない、特に人間同士と。強くなるのは生き残るため、遊びじゃない。まあ力比べなら楽しめるがな。世界が絡んだ戦いなんて本当はしたくないさ。短剣を抜き俺を睨み不気味に笑う。
「さあ始めよう。その余裕、いつまで持つかな!」
こちらに走って突っ込んでくる、速い、やはり俺よりも速い。盾を構え攻撃に備える。
「ハッ、そんな盾なぞ薄紙と変わらん、喰らえ、疾風迅雷!」
短剣スキルの高速突きを繰り出す技。速すぎて見えない、パイルガードを発動、お願いガードだ。金属を音を発しサークの攻撃を弾いた、ふぅ、ヒヤッとした。弾かれたことで驚くサーク。距離を取り、様子見をする。
(どういうことだ、奴は格闘家なはず。あそこまで強固なパイルガードが出せるなんて。レアスキルを持っていてそいつが作用しているのか?)
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