第50話 最強剣士
「あっという間だったな」
レベル上げを始めて三年が経過、修業を終える。一番苦しかったのは食事だった。ドラゴン肉と野の食材は美味かったがそれだけだと流石に飽きた。たまに抜け出して食べに行っていた。他の冒険者達も食事だけはといったところ。
「人外の力を手に入れることになるなんて」
みなぎる力、充実する精神力。硬い金属を含む岩石をサシャが軽く斬る、岩はバターのように切り裂かれ、一瞬で粉々に。俺達は一般の冒険者では一生かかっても到達できないレベルまで上がってしまっていた。ここから先はロミカがいても簡単には上がらない。通常のレベル上げは今後はしない方向で。
「楽しい時間をありがとうございました。一旦私は国に帰りますね。また戦えるとしても暫く先になると思います」
最低一年は国の仕事をしないと、と話すロミカ。彼女は王女、本来は多忙だが無理やり時間を作ってここへ修行に来ていた。これから王継承戦が始まるとか。世界で彼女に勝てる人間はどれだけいるかってところまで来ている、優勝して王になれるのではないか。無限の森を離れ街に入り皆と打ち上げパーティーをする。白狼の国が本気を出しての宴会、豪華な酒と食事が並ぶ。
「おいしー!」
料理と酒に舌鼓を打ちつつ今後のことについて話をする。
「魔剣が完成したんだったね」
「取りに行かないと」
魔剣完成の連絡が30日ほど前に届いていた。実に六年の歳月がかかった。情報屋に動いてもらって同じ金属を探しているが見つかってないのでこの一本でとりあえず終了かな。隕石自体はいくつかあったようだが、特殊な金属だから簡単には見つからない。
「剣の国でもうじき十年に一度の大会が開かれるって」
剣に覚えのある者が集まる、剣の祭典。大会にはオニギリが参加するようだ。その強さはついにラング、ガウスを越え、国一番になったと無限の森にいながら聞こえてきた。私も参加したいとサシャ。剣を受け取ったら剣の国に行くとするか。
「こんなところかな」
「飲むぞー!」
「おー!」
楽しい宴、朝まで堪能、夜まで眠る。
「それではまた」
「またねー」
ロミカが自国へ帰国。俺達もいつもの街に帰った。魔剣を受け取りに鍛冶地区のマリウの元へ。
「久しぶりだな、おお、精悍な顔つきになった」
「もう大人ですよ」
二十歳を超えて体も大人に。マリウが奥から魔剣を持ってくる。三人の大男の鍛冶師達が声を掛け合いながら運んでくる。かなりの重量のようだ。隕石は重くなかった、叩いていくうちに変化したという。剣の色に合わせ炎をイメージしながら作ったというという鞘、炎の力強さを備えた装飾が施されている。片手で軽く持ち上げ鍛冶師達を驚かせるサシャ。ふふ、彼女もこちら側に立ったようだ、人外の道にようこそ! 試し切りをしてみたいとガウスさんのところへ。
「久しぶりじゃな。ほぉ、お主の魔剣か」
「剣を抜いてみろ」
鞘から剣を抜く。宝石のように深紅の輝きを放つ剣身。その美しさに思わず声が漏れる。
「こ、これは!」
凄まじい攻撃力になったと話すサシャ。隕石の中でも更に特殊な金属、他の魔剣と比べてもぶっちぎりの攻撃力の高さを有しているようだ。マリウがアダマンの金属球をサシャに投げる。水平切りで、一刀両断、空中にある間にアダマンの玉を切り刻む。地面に落ちたアダマンは刺し身の切り身のようになっている。バリすらない、凄まじい切れ味だ。
「問題はここからだ、どんな能力を持っているかは試してみないとわからない」
魔法効果を持つ魔剣は見た目でわかるから判別がしやすい。この魔剣は身につけても変化はない。俺が手にしてみる、特に変化はない。攻撃力を上げる特殊効果かな? いやそれなら彼女のレアスキル効果でもっと攻撃力が上がるはず。他の剣と比べてみる。剣を振ってもらったが速さは同じか。
「全く見えん、笑うしかないのぉ」
ほっほっと笑うガウスさん、その姿はどこか嬉しそうだ。残りはスキル。サシャのスキルはかなり強大になったためできれば使いたくなかったが試して確認をしておきたい。魔剣を持ち構える。先ほどとは闘気が明らかに変わった。サシャが巨大に見える、それほどまでに強烈な闘気を放つ。彼女の周りの空間が歪んでいる。危険を察知しトータルライズを発動、ガウスさんを持ち上げ飛んで逃げる。
「フルスラッシュ!」
放たれた剣技は地面を裂き湖を大きく分断し突き進んでいった。その剣圧で周りのものが吹き飛ぶ。あきらかに俺のフルスラッシュを越えている。俺でも地面に跡が付く程度。彼女の技はまるで斧技のように地面を切り裂いた。どうやら剣の特殊能力は剣のスキルの強化、そしてサシャのレアスキルにより強化されたようだ。スキル威力強化で俺のスキルに近い威力、サシャのレアスキルで俺のスキルを越えたといったところか。
「ここに最強の剣士の誕生だな」
皆拍手、照れくさそうにするサシャ。ただガウスさんの家まで吹き飛ばしてしまった。後で建て直しますね!
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