第49話 時は過ぎ

三年の年月が過ぎる。俺は魔獣を大量に倒した影響で高レベル冒険者の仲間入り、ギルドランクは七にまで上がっている。三人は中級者後半。平和になりレベル上げに集中できていた。たまにルーラーさんから特殊な依頼がはいってきていた。おかげでお金には余裕がある。


「皆いい装備になったね」


皆魔銀防具を身に着けている。これ以上となると魔装か、市販品ではレア金属、アダマン、オリハルコンで作られた装備品くらい。アダマンは固く重い、オリハルコンは軽く魔法と相性がいいとそれぞれ特性がある。武器はあれから変わっていない。


「魔剣はどう?」

「制作中」


魔剣はまだ完成していない。どうしても時間がかかるからな、こればかりは仕方がない。早めに作ってもらって正解だったな。拠点に戻り食事をする。


「お肉焼けたよー」


楽しい生活を送ってきた。アイネの仲間もあれから増えている。かなりの勢力の会社になっているようだ。拠点に情報屋さんが来て言伝を。ルーラーさんからの呼び出しだ。


「まだ四人PTだったよな、紹介したい人物がいるんだが」


今回も特殊なケースのようだ。レアスキル関連で秘密にしてもらいたいという。皆と相談し、もう一人入れても問題ないという結論に。会ってみようということになった。


「白狼族の王女、ロミカ様だ」

「ロミカです、よろしくお願いします」


白狼族は白髪の人狼。王女というだけあって気品のある佇まい、落ち着いた雰囲気、清楚なお召し物。さすが王族、オーラが違うな、ちょっと緊張する。ここからは踏み込んだ話、他言は無用ということで彼女と会話を。俺達よりも年下、クラスは格闘家、戦闘経験は浅い。しかしレベルは俺よりも遥かに上、それは彼女のレアスキルが関係している。


「王女は経験値アップという特殊なスキルを持っている」


このスキルのお陰で俺達よりもレベルが高い。スキルを知っているのはごくわずか。家族にも話をしていないとか。王女はまとまった時間が出来たためレベル上げをしようと考えている。そこで白狼の国とも付き合いがあるルーラーさんの知恵を借りようと話をしたとか。経験値アップか、願ったりかなったりだな。この世界で強くなるならやはりレベル上げ、非常に強力なスキルだ。ラックアップを使ってないけど幸運が舞い込んできた。皆と相談、満場一致でPTに迎え入れることに。


「ふふ、ありがとうございます」


上品に笑う王女。こうして王女ロミカ様が仲間に。これから三年という長期間一緒にレベル上げをすることになった。報酬が凄まじい、報酬の一部でマリウの鍛冶代の問題は解決。装備は最高峰の品に変えることに。防具はアダマン、オリハルコン装備、一部魔装、武器は属性系最強の魔装を購入。国家の力を使い装備を整える。これがお金の暴力ってやつか。


「これは皆さんへの報酬と考えてくださって構いません」


中でも炎の剣、「白炎の剣」はサシャの能力も加わって更に高温の青い炎を宿している。


「それがサシャのレアスキルなんですね」


装備を揃えたところで彼女に力を見せる。トータルライズを使うと驚く彼女。はは、これは慣れてもらうしかないな。魔人戦争や魔法の国の件では偶然にしては出来すぎな点がいくつかあったがそういうことかと理解してくれた。かなり強引な情報操作があったようだ。全部俺のためにしてくれたことだけど。軽く戦闘をする。戦闘経験が浅いとは思えない動き、良い師匠に見てもらったか。そして極めつけは経験値。


「これは!?」


本来なら全然経験値が入らない相手だというのに凄まじい量の経験値を入手した。これなら俺よりもレベルが高いのは納得だ。王女に力を見せ街に戻り拠点へ。


「ここともお別れか」

「楽しい思い出が詰まってるね」


三年間街から出て狩りをするため拠点は手放す。アイネに相談、全てを任せることにした。事業拡大中だから住む場所はいくらでも欲しいようだ。準備が整い後はレベル上げの地へ行くだけ。親交を深めようと一緒に食事、お酒を飲むことに。


「長い期間ですからこれからは敬語は使わないようおねがいします。私はこの話し方に慣れてしまっているからこのままで」


一緒にお酒を楽しく飲む。それにしても言葉遣いも顔色も変わらない、凄まじい酒豪のようだ。服装もなかなか大胆、先ほど一緒に戦ったが格闘家だから近くで戦うから気になっちゃうんだよね!


(また始まった)


帰り道、拠点に戻ろうとすると酔っ払いに絡まれた。ロミカにからもうとする男。俺は前に出て追い払おうとした。


「うへへ、ねーちゃんおれっっ」


胸元を掴み強引に投げるロミカ。倒れた男の顔の横の地面に拳を叩きつける。あまりの威力に地面がえぐれている。


「このロミカを舐めるんじゃねえ」

「すみませんでした!」


睨みつけ牙むき出し血管が浮き上がるロミカ。謝り走って逃げ出す酔っ払い。陸上選手のようにしっかりとしたフォームで本気の走り。余程怖かったのだろう。


「ああ、言い忘れていた、白狼族は短気だから喧嘩は売らないようにな」

「気をつけます!」


翌日出発。船旅馬車の旅をして目的地へ向かう。魔獣最強と呼ばれている「インフィニティドラゴン」が出現する地域でレベル上げをする。無限に湧くという意味でこの名がついたようだ。高レベル者は以降、効率を考えるならこのドラゴンだけを狩り続けることになる。そしてこの無限の森はとんでもなく広大。世界中から高レベルの者が狩りに来るが、狩り場は余裕で空いていて混み合うことはない。地図を広げる、この国の三分の二は無限の森となっている。


「もっと効率の良い魔獣がいればよかったんですけどね」


これ以上経験値を持っている魔獣は存在しない。レベルが上がれば必要経験値は容赦なく上がる。そのためこの世界ではレベル上げは限界がある。レベル上げはある程度のところで切り上げて、金策や他の仕事をする冒険者が多い。


「ここが無限の森か」


狩り場まで移動。森の入口にはたくさんの高レベル冒険者達がいた。


「どうぞお入りください。ドラゴンは凶暴です、お気をつけて」


守衛に冒険者カードを見せ無限の森に入場。巨大な大木が立ち並ぶ森、枝が広く張り巡っている。ドラゴンは木に登れないため枝の上を通ることで安全に移動できる。枝には家が何軒も建っている。上で休んで地上に降りて狩りを、さほど移動せず狩り続けることができる。家は無料で借りることができる。各国が連携し、高レベルの人間を一人でも多く育成しようと協力。家を使う時は札に代表者の名前を書き、いることをアピールする。俺達のレアスキルは特殊なため人目のつかないところまで移動することに。


「ここがいいんじゃない」


森の奥地まで移動。建っている家が周りを見渡してもここくらい、決まりだな。内部に入ると埃っぽかった、まずは掃除から。片付けをして荷物を入れここを本拠地に。水は大木に突き刺さったパイプがあり、先端から水道のように水が出る。粘性の少ない樹液のようだ、いい香りがする。燃やす木材はそのあたりに大量に落ちていて料理やお風呂も問題なし。食料はドラゴン、美味であるとか。そして心強い仲間がひとりいる。


「この野草はエルフの国にもあるね。えーっと、変わったきのこだ、食べられるようだよ」


図鑑を片手に食料を探すリーナ。彼女のお陰で食料には苦労しないだろう。うまく立ち回れば樹上のここだけで食いつなげるくらいには野草の宝庫だとか。それからドラゴンを持ち帰ってくれるサービスが有る。これである程度お金を得ることができる。準備完了、下に降りドラゴンを狩る。ドラゴンだけあって炎を吐く。だが、こちらは攻撃力がかなり高いため炎を出す前にほとんどのドラゴンを倒せる。そして取得経験値が莫大。これは強くなるぞ。

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