第48話 夢の拠点暮らし
あれから魔法の国の領土はこの国とその隣国、農業が盛んな国が二つに分割しそれぞれ領地とした。元々そこまで土地は広くなかったため特に揉めることもなく粛々と手続きが進んだ。火山活動のある地域は現在封鎖中。もう一つ土地の問題が。揉めてはいないが魔族の領地分配には各国頭を悩ませている。かなり広大な土地なため、この国と農業の国で分け合うと世界とのバランスが崩れてしまうのではと懸念する声がちらほら出ている。過去、強大に成長した国家があり、散々世界を荒らした後結局は滅び、爪痕だけ残したという事があった。大きくなるほどコントロールが難しくなる。特に今は魔族を倒し人類の共通の敵はいない状態。人間生きているとどうしても問題は出てくる。それは国同士も同じ。気に入らないと争いが起きる可能性はある。過去何度も繰り返してきたこと。人の歴史は争いの歴史でもある。異世界でも現実世界でもそこは変わらないんだな。
「火山はタイミングが良かったという話もある」
魔法の国が魔族の土地を手に入れていた可能性があった。そうなっていたら無理にでも魔法の国と争わないといけなくなるところだった。彼らが力をつけてしまうと危険。隕石が落ちたため地上に変化が起きたのではと考察する地質学者がいた。俺のせいかもしれないが悪さをしていた魔法の国には謝る必要はないか。どちらにせよ土地はかなり荒れているので修繕しながら、有効な活用法が見つかるまでは保留しようと各国の話し合いで決まる。
「農業の国ですか、一度は行ってみたい国ですね」
農業の国は肥沃な大地、作物を作るには適した気候を有し、世界にも穀物等を輸出をしている農業大国。加えて畜産も盛ん。加工品も豊富で酒、チーズ等もこの国産の品物が全国に売られていて数々のブランド品を持っている。食べ物は当然美味しいとのこと。ということは旅行するには悪くない国だな。皆と相談して農業の国へ観光しに行くことに。
「わー、大きな風車ですね」
馬車に揺られながら農業の国へ。大きな風車がゆっくり回っている。畑、動物、森。牧歌的な雰囲気の国。のどかに流れていく時間を感じながら旅をする。
「旅の冒険者か、ここの食い物は美味いぞ」
ギルドに寄り農業の国の冒険者と話をする。ギルド内の作りはほぼ同じ。旅先にコンビニがあったりすると落ち着く。知らないところばかりだと緊張してしまう。人によっては台無しだと思う人もいそうだが。宿を取り、高そうなところで食事をする。
「第二回! ハジメPT慰安旅行!」
「乾杯!」
聞いていたとおりかなり美味い。旅先だからハメを外しすぎないようにしないとな。
「美味しいです!」
相変わらずたくさん食べるエル。最近際どい服装が多いな。彼女と別れて心境の変化があったのだろうか。なかなか目のやり場に困るぜ!
(ハジメには有効な作戦、エル、やるじゃない)
農業の国の観光を楽しみ国に帰る。
「そういえばお金がかなりあるんだっけ」
「ああ、鍛冶はほぼ手がかからなくなったしな。使い道を考えたいところだ」
「拠点はどう?」
拠点かー、いいね。リーナが錬金術用の部屋が欲しいって言っていたな。二人にも要望があれば言ってきてくれと話す。俺も考えておくかな。お土産を持ってパインの元へ。
「そろそろここを引き払おうと思ってね」
元々旅の団、一箇所に居続けても物珍しさが無くなり客が来なくなる。タイミングを見て移動しないといけない。魔王の件が解決したからここに居座る理由もないからなおさら。外では団の皆で片付けをしている、寂しくなるな。
「なーに、今生の別れってわけじゃないんだ、また会えるさ」
アイネはまた規模を拡大したようだった。芸事が得意ではない子もいるから助かるとパイン。彼女の話をしていると、住まいの話に。
「拠点ね、ああ、引き払う場所で丁度いいところがあるかな」
パインについて行き物件を見学。部屋数は多め、これから人が増えたりやりたいことが出来ても対応できる。周りに住んでいるのはアイネが手配した子達。変な人はいないし住みやすそうだ。こうしてトントン拍子に拠点が決まった。
「寂しくなるね、まあいつか出ていくのはいつものことだけどさ」
悲しむ宿屋の女将さん。最後の宿、気合の入った料理が俺達の前に並ぶ。一泊しお別れ、最後は笑顔で。拠点に入り荷物を部屋へ。
「あー夢だったんだ、自分の部屋、自分の錬金術工房」
鼻歌を歌いながら調合をするリーナ。部屋のレンタル料は結構かかるからね。道具も買ってきたからこれからは作り放題。
「この形いいね」
店で家具を見る。買って持ち帰り、椅子とテーブルを並べ、小物置き用の棚を置く。調理場は広め、調理道具を買いに行く。うーん、いいね。自分達の家を持つってのは。個人ではないから現代で言うところのシェアハウスだな。庭でバーベキューをする。周りに住んでいる子達も集まってきて一緒に食事をする。
「うまー!」
「もっと肉焼くぞー」
自分の家で仲間と食べるバーベキューは格別だ。
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