第45話 魔人戦争

「魔人達は魔獣を集め一気に攻め込むつもりだ」


魔人の最新情報。人類との戦いに向け戦争の準備をしていたようだ。やはりあれぐらいでは奴らは諦めない。魔獣大量放出の日時は10日後とすでに決まっている。こちらも迎え撃つ準備を進める。俺達も準備の手伝いをする。


「水が流れるぞ、巻き込まれるなよ」


魔人の平地の地面を堀った場所に水を流している。うまくいったようで森の前面に川ができた。こうすることで奴らの進行を鈍らせることができる。川からあがったところを遠距離攻撃で仕掛ける。ずっと交代で1日中穴を掘って工事をしていたから何を作っているのかと思えば、まさか川を作っていたとは。


「皆さんのご協力をお待ちしております」


冒険者ギルドに戦争参加の呼びかけが。報酬はかなり良い。なにより魔人が攻めてくるわけだ、ここで参加しないのならいつ戦うんだといった雰囲気。国が滅んだら終わりだからな、当然といえば当然。俺達も参加することに。前線と砦には高レベル冒険者、各国の精鋭の戦士達が配置。砦前に俺達中級者、初級の冒険者。もれた魔獣が街に来ないよう倒す役割。


(いや、待てよ。日時がわかっているのなら)


やりたいことができたため俺は依頼を受けるのをやめる。三人に説明、理解してもらえた。ここから別行動。彼女達は配置に、俺は休暇を取る。そして当日。俺は川を越え人間側からは見えないほどの遠い場所の平地に移動していた。


「今の俺の力を見ておきたい」


スキルをいくつか手に入れたが威力が高すぎてなかなか試せていない。広い平地のここなら被害が少なく済む。持ってきた荷物を広げる。すぐ使えるように武器を地面に突き刺す。トータルライズを発動、盾を腕に張り付け両手に武器の二刀流という恐ろしいほど不格好な姿に。いいか、誰も見てないし! 遠くから魔獣達の足音が聞こえてくる、そろそろだな。音は徐々に大きくなる。そして魔獣の大群が見えてきた。前方は見渡す限り魔獣、壮観だね。大地が揺れ魔獣達は咆哮を上げている。


「なんだありゃぁ?」

「構わねえ、轢き殺しちまえ!」


魔獣を操る魔人も結構な数いる。彼らもまとめて倒してしまおう。さてと、まずは挨拶からだな。一発派手なやつをお見舞いするか、杖を構え魔法を放つ。


「シャインエクスプロージョン!」


杖が指した先に光線が集まっていく。圧縮された光が一瞬小さな点になる。光だけでなく周囲も圧縮しているような見た目。そして光の玉が爆発。魔獣や魔人が光りに包まれながら爆死していく。草木は一瞬にして消滅、地面を深くえぐる。先頭に居た魔獣達は壊滅状態、ついでに魔人も死亡。やはり魔法は強いな、一撃でかなりの数の魔獣を倒した。そしてレベルが上がりまくる。魔獣は経験値があるからな。それでも魔獣達の勢いは止まらない、すぐに後続が流れ込んでくる。今度は召喚魔法。


「いでよ! 世界を焼き尽くす者、スルト!」


全身から炎が吹き出していて、巨大な剣を持った巨人が召喚される。手に持つ炎の剣を振り上げ魔獣達に向かって叩きつける。


「ギェーー!」


斬られながら焼け死ぬ魔獣達。しかし生き残る魔獣がいた。フルスラッシュの方が強いか。威力、範囲ともに魔法、剣と比べるとそこまで強くはない。化け物のように強い召喚士は居ないというわけだ。フェンリルを召喚しようと思ったがやめておこう。素早い魔獣がこちらに駆け寄ってくる。杖を地面に突き刺し槍を手に取る。


「ヴォルテックススピアー!」


槍を前に突き出し飛び上がり、回転しながら敵を蹴散らす大技。近寄った魔獣を貫き、凄まじい回転により血肉を撒き散らし、地面もえぐる。威力、速度共に申し分ないが範囲が狭い。相手が少数か単体向けか。魔獣の集団に前線を抜かれてしまった。時間を止め下がり、炎の魔法で焼き払い前線を押し戻す。もう少し付き合ってもらうぞ。その後いくつかスキルを試す。クラスの強い弱いがはっきりしてきた。良い情報収集になったな。後方の少し残った魔人と魔獣は尻尾を巻いて逃げていく。まずは平地の戦いに勝利だ。レベルを見る、あれだけの魔獣を倒したのだから当然ではあるがレベルがかなり上った。一気に中級の仲間入り。


「さてと、残すは魔人達の住処だけか」


山脈に囲まれている難攻不落の魔人の本拠地。こちらにもすでに調べが入っている。このまま攻め滅ぼしたかったが奴隷として使われている人達がいる。まずは彼らの救出が先だ。


「このままやらせてください」


救出作戦に挙手、ルーラーさんを通して国に力を借りることに。救出は至極簡単、魔人本国に侵入し魔人をぶっ飛ばして連れ帰る得意の力押し。砦まで距離があるため、送り届けるのは流石に大変ということで、簡易の砦を作ることに。


「こいつはひどい、さぞ熾烈な戦いがあったんだろうな」


えぐれ、焦げ、死臭がただよい、地形が変形した土地を見て絶句する協力者達。でしょうねと返す俺。ほぼ俺のスキルなんだけどね。拉致された人を魔人から取り返し砦へ。そこから人間領へ連れて行ってもらう。こうして奴隷がゼロとなる。そして彼ら協力者には人間領に戻ってもらった。実はもう一つ試しておきたいことがあった。ここにいると非常に危険なのである。


「隕石を落とす最強魔法「メテオフォール」を使ってみたい」

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