第44話 真炎の木

鍛冶場の準備を進める。年単位で借りられるところを借り道具を揃える。準備は整ったが予定通り一年分の鍛冶費用で、残金はほぼゼロ。


「では儀式を行う」


これから儀式をして本格的に魔剣作成の作業が始まる。魔法陣のように描かれた地面に金属を置く。同調の金槌で金属を叩き呪文を唱えると、彼女が薄っすらと光る。精霊が降りたようだ。金属を炉に入れ熱処理、しばらく中にいれる。長時間熱しているのに変色しない、そのままの状態が続く。


「失敗だ」


どうやら火力が足りないようだ。上位の金属を融解させることができる火力があるが隕石は全く変わりなし。なかなか厄介な金属だな。今日は諦め翌日また鍛冶場へ。調べたところ、エルフの森に生えている真炎の木なら熱して加工ができる可能性があるという。昔その真炎の木を巡ってエルフとドワーフが争いを起こしていた。最終的にほぼ無くなり、ドワーフ側が新たな燃料を探しにエルフの地を去る。そんな状態ならもう真炎の木は残ってないかもしれないな。


「大量にあるよ。ただ場所が場所だけに取りに行くのが大変だけど」


過去真炎の木が生えていた場所は、森が覆い尽くし、簡単には入れない場所になっていた。エルフの森の奥地、迷いの森、現在はそこに生えている。誰も使わなくなったため、現在では復活し大量にある。今は様々な燃料があり解かせているためわざわざ入手困難な真炎の木を使う必要がない。売っていてもかなり高い。当時人気があったのはその辺に生えていて安価だったからってのもあるようだ。徐々に減っていきドワーフに助言したが聞く耳持たず、いつしか争いに発展。


「今度取りに行こうよ」


迷いの森は攻略法を知らないと森から追い出されてしまう。リーナはすでに攻略法を知っている。それどころか庭だとか、やはり野生。素材採集当日、リーナを待っていると、湖から頭を出したワニがこちらへ泳いで近づいてくる。魔獣ではないが強い野生の獣だ、武器を持ち構える。そして浅瀬まで来ると急激にワニが立ち上がった。


「あ、これワニ頭ね。迷いの森攻略に必要なんだ」


リーナだったか。人数分持ってきていた。それにしても生き生きとしている。やはり森が好きなんだな。


「みんな袋は持ったね」


大きな袋を背負い込みこれから真炎の木を入手するため森へ。珍しい錬金術の素材もいくつか採集する予定。真炎の木伐採ビジネスが頭をよぎったが持ち帰ってもいい量が決まっているようだった。駄目か、そんなに甘くないか。


「この先は迷いの森だ、気を付けてな」


入口にエルフの兵がいた。稀に入り込んでしまう人間がいるとか。迷いの森は優しく、入口に戻してくれる。迷いの森に侵入。ある程度進んだところですでに自分がどこを歩いているかわからない。周りを見ても似たような風景。一人だと確実に迷っていたな。おや、蛇だ。飛びかかってきそうだな、枝で叩き落とすか。噛みついてきたところを横からリーナがヘビに噛みつく。


「大丈夫?」

「あ、ああ」


ヘビの頭を食いちぎり、上にあげ血を飲むリーナ。野生化が進んでいるようだ。皆引き気味だ。途中川があり、そこをワニ頭を付け登っていく。人間の姿で進むと入口に戻されるてしまう。こうして迷いの森を攻略していく。途中錬金術の素材も採集しながら真炎の木までたどり着いた。色は真っ赤な木。付近に落ちている乾燥したきを試しに燃やしてみる。火が付く、通常の炎と色が違う、温度が高そうだ。試しに鉄を熱してみるとあっという間に溶け液状に。超高火力なため取り扱い注意。いくつか切り倒して持ち帰りマリウに渡す。


「美しい木だな。よし、準備してやってみよう」


炉に真炎の木を投入、その中へ隕石を入れると今度は赤く変色し加工ができる状態に。取り出し金槌で打ち付ける。同調したときの音、これが強くなった音が辺りに響く。叩き続け特殊な液体や灰をかけながら不純物を取り除いていく。徐々に金属の塊に変化していく。これを伸ばし、中心部に切込みを入れ折り重ね、また打ち続ける。後はこれの繰り返し。鍛冶を終え皆で飲みに行く。マリウは上機嫌にお酒を飲む。鍛冶は一段落かな。パインと話をする機会があり魔装の話を。


「秘密裏に作っている魔装があるんだ、見てみるか?」


誰にも知られないように作っている魔装ってなんだろう、気になる。パインの後についていき魔装の工房へ。彼女が一本の杖を取り出す。


「これは魔法の威力を落とす杖だ」


装備していると魔法が弱くなる。対魔法の国用に量産しているとか。兵の杖に紛れ込ませ戦力ダウンを狙っている。なるほど、偽装が施されている。他様々な準備をしているようだ。それも何世代にわたって。弱体化の杖か、ああ、面白いことを思いついた。


「一本借りていい?」

「構わないぞ」


杖を持ち街の外へ。俺のスキルに対応しているか試す。もし弱くなるなら普段からも使えるのでは。期待に胸踊らせ盗賊が使っていた廃屋に。また使われると厄介だから破壊してくれてもいいとルーラーさんから聞いていた。魔法の試し撃ちで使わせてもらう。使う魔法はアイススピア。俺が使う魔法の中ではサイズが控えめで比べやすい。まずは普通に撃ってみる。廃屋の半分を貫き破壊。杖を持ち魔法を撃って家が残れば弱くなっているわけだ。魔法を撃つ、残り半分も貫き破壊する。だめかー、どうやら俺のスキルには干渉しないようだ。

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