第41話 真夜中の戦い
「それが代々伝わる魔王の話だ。宵闇の団初代は彼女を手にかけた後、気力を失うが、彼女の言葉を思い出し、活動を続けることに」
魔王にそんな過去が。その後レアスキルとして復活。操られてしまうがこの時も宵闇の団の長、吸血鬼が彼女を殺す。魔法の国はすでにその時から世界制覇を狙っていたが彼女の死により彼らの野望は国を手に入れる程度にとどまる。
「結局は力だ。魔法の国から守り切る力が貴様にあるのか、試してやる!」
力を開放するパイン。まさか、まだ強くなるのか。彼女は剣士。剣は魔剣だろう、禍々しく輝いている。彼女が飛びかかってくる、フルスラッシュを発動。俺はこれをかわす。注目すべきはその威力、剣筋が40メートルはある。その力はラングさんを軽く越えている。続けて突き、切り払いと攻めるパイン。その速さ、威力は上位の冒険者を遥かに凌駕する。パインが渾身のオーラスラストを放つ。
「!! 何故避けない!?」
攻撃が腹部に命中、金属を突き刺したような音が辺りに轟く。
「ま、まさか無傷!?」
飛び退くパイン。先端が突き刺さらず、剣の進行は筋肉によって阻まれている。先ほどかすったときにノーダメージだったから試してみたがどうやら突きも0ダメのようだ。動揺し動かなくなる彼女。サシャから借りてきた剣を握る。飛びかかリ攻撃。
「くっ!!」
覚悟を決めたのか目を見開き俺に向かってくる。俺は彼女を越えフルスラッシュを発動。剣閃は森を切り開き、川に合流、そのまま切り裂きながら登っていく。
「くくく、そうか。付近を気にしていると思ったらこんな威力の剣技を持っていたのか。ハナから勝負になってなかったとはね。お笑いだ」
剣を捨て降参するパイン。雨が激しくなる。顔を上げ雨を浴びる彼女。
「この雨は魔法の国に翻弄された人達の涙だ。貴様なら止められるか?」
勢いをつけ空に飛び上がる俺。フレイムバレットを雲に数発打ち込む。全てはなくならなかったが俺達がいる場所は雨が止む。驚くパイン。
(そういう意味ではなかったんだが、本当に雨を止めてしまうとはな、こいつは規格外だ)
彼女は笑い出す。戻ろうと、皆がいる墓地へ。エルは縄を解かれ俺達のところへ戻ってきた。
「すまなかったな、試すような真似をして」
「構わないさ」
予想通りパインは俺達が魔王を守る力があるかどうかを見極めようとしていたようだった。
「それにしてもいかれた力だな」
「ああ、だから今後は俺達が守ってやる」
魔王に握手を求める手を出す。彼女は俺の手を取る。
「う、うん」
(あっ)
パインが団員達に何やら話している。彼女が俺の前に立つと全員整列、片膝をつく。
「ハジメ殿、今後は我々宵闇の団はあなたにつき従います。何なりとご命令を」
「ちょ、ちょっとまって」
力はあっても知力はない。人を動かすってのは正直苦手だ。下につくよりも協力するということで彼女は納得してくれた。それから俺の力は秘密にしてもらった。頷くパイン。
(脳筋だなぁ)
(そこがハジメの可愛いところではあるけど)
色々あったが心強い仲間ができた。後日、パインと今後のことについて話す。まずは魔法国の裏事情から。
「魔法の国ではレアスキル持ちを調べ管理している」
国主導でクラス水晶を指導、管理している。本来は個人のレアスキルは知り得ないが、レアスキルの催眠術を使い個人のスキルを聞き出しているようだ。時代によってやり方が変わるとか。最初だけ、催眠術で調べる。聞き出していることが他国に知られないために自国民だけに施す。戦士になるつもりがない一般人にも水晶を飲ませレアスキルを探している。国家権力使い放題だな。この件を知っているのはパインとその情報をもたらした人だけ。世に訴え出ようとしたところで捕まり殺されそうになったところを助けた。不死身の人が演技をして同じ格好をして爆死。死んだことになっている。
「偶然なのだが他人を操るレアスキル持ちをうちで保護している」
レアスキルは全く同じ内容のスキルが二つ以上世の中に存在することはないとされる。つまり魔法の国の計画はうまくいかないことが決定している。しかし他のレアスキルで魔王を操ればいいだけ。または人質を取るなどしてそのようにしむけるか。油断はできない。それにしてもどうやって彼女が魔王だとわかったのだろう。そこに関しては教えてもらえなかっった。魔人の砦をあれだけ細かく調べられる人がいるくらいだ、そのレベルの人がいるのだろうな。彼女が吸血鬼ということで気になっていたことを聞いた。
「ああ、基本人間と同じ食事だ。血も必要だが動物なら何でも」
人間の血は吸わないようだ。中には血の料理なんてものがあるからね。ほぼ一般人と変わらない。ただ昼間はレベル1になるという弱点があるようだ。強さの代償なわけだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます