第32話 しつこい人です
その後は襲われることなく平和に過ごせた。そして街への帰り道、宿場街に寄り宿を探していると身なりが汚く胡散臭そうな男が寄ってくる。また殺し屋か? あの街から離れたから襲わせているのか、帰りも頼むんだったな。身構えるが襲ってこない男、辺りを頻繁に見渡す。
「いた!」
男はターゲットを見つけたかのごとく急に動き出した。家族連れに向かって走っていいく。親御さんに体当たりをし、子供を奪い取り半分持ち上げて連れて歩きこちらに近づく。
「おい坊主、ガキを殺されたくなければ大人しくしろ」
ナイフを子供の首元に当て俺達を脅してきた。なりふり構わずってか。関係ない人達を巻き込むことになるとはな、考えが甘かったか。構えを解き武器を捨て戦う意志がないことをアピールしながら機をうかがう。
「へへ、腰に面白いものぶら下げてるじゃねーか。そいつを口の中に突っ込んで撃つんだ。さもないとこのガキが死ぬことになる」
魔法銃のことか。男の言う通り銃を口の中に入れ、後は撃つだけ。ほんの少し隙間を開けてある。指先に力を入れ、弾丸を発射。
「あーっはっは、やりやがった。正義の味方は辛いね」
弾丸は銃口を出ると急激に曲がり、口から飛び出していく。物理の法則を無視しながら飛んでいく弾丸。安全も考慮し、直接狙わず弾は男の側面に飛ばす。そしてナイフの根本に命中、弧を描き回転しながら飛んでいき地面に刺さる。呆気にとられる男。
「えっ、なにが」
三人は男に向かってダッシュ。子供を確保し、すぐさま男を押さえつける。ボーっとしていたから制しやすかった。常識では考えられない現象だから幻惑効果があるかもな。街の衛兵が駆けつけ男を連れて行った。
「ありがとうございました」
子供の親が礼を。巻き込んでしまったわけだから非常に申し訳ない気持ちになった。
「相変わらずわけがわからない軌道、なんて冗談言ってる場合じゃないか」
このままではまたいつ襲ってくるかわからない。二人と相談し、冒険者ギルドで護衛を雇うことに決めた。依頼専用の受付へ。護衛の依頼を。
「こちらが金額の早見表になります」
当然だが高レベル、人数が多いほどお値段が高い。基本的に護衛は結構お金がかかる。だけど背に腹は代えられない。依頼を出し、強めの冒険者を多数雇う。
「なるほど、暗殺者に狙われてるわけか。任せとけ」
総勢10人。こうして街まで無事に帰ることが出来た。戻ると即ルーラーさんのところへ。
「そんなことが、イデオが牢から逃げ出して話題になっていたがまさかお前達を付け狙っていたとはな」
子供を人質にとってまで殺そうとしてきたからな。これからもっとエスカレートするかもしれない。
「わかった、お前には世話になっているからな。俺から裏社会の方へ話をしてみよう。それから身の安全が保証されるまでは俺の家にいるといい」
こうしてルーラーさんの家で過ごすことに。その後強そうな冒険者達が迎えに来てくれた。彼らは昔ルーラーさんと一緒に冒険者をしていた仲間。大金を稼ぎ半引退状態とのこと。ルーラーさんはやりたかった情報屋を始め多忙な毎日に。一緒に馬車に乗りルーラーさん宅へ。高い壁に囲まれた場所に到着。囲いの距離がかなりある、これはかなりの豪邸かな。中に入ると広い土地の割には中央に普通の一軒家がぽつんと建っているだけ。大きな屋敷は建設費が高くて維持費もかかる。執事やメイドさんを雇うことになるから大変な金額に。それに庶民の出の俺達には暮らしづらいと普通の家を建てたとか。広い土地を買ったのはこうすると侵入者を見つけやすいため。財産を守るためには都合の良い作りになっている。
「職業柄、見張りやすい方が落ち着くのよ。それに物騒な世の中だからね、金持ってると狙われるんだ」
詳しくは教えてもらえなかったがかなり持ってそうな雰囲気だった。ルーラーさんはこのように元仲間たちと一緒に暮らしている。ここなら安全だな。その日は気が緩み疲れがどっと出る。ベッドに入ると安心感から深い眠りに。それから五日、ルーラーさんが家に。
「話はついた。だが、しばらく待って欲しい。すでにイデオの居場所は把握済み。今後は隠し財産、仲間を調べ徹底的にヤツの力を奪う。時間がかかる」
「わかりました」
どうやら裏社会の人を動かすことに成功したようだ。そもそもイデオが危険な人間ということで有名だから話はしやすかったとか。表側の人間もこちらに味方してくれている。ふぅ、なんとかなりそうだな。ガウスさんが自分の依頼から巻き込んでしまったと心配していたようだ。大丈夫ですよと伝えてもらうことに。こうして十五日が経過。
「お、リーダーが戻ってきたぞ。良い報告かな?」
ルーラーさんが家に帰ってくる。こころなしか顔色が悪いようだが。仲間と話すと彼らは驚き真剣な表情になり持ち場へ。誰かが来るのかな。ルーラーさんの仲間が見張りながらオープンテラスで会話を。妙に物々しい雰囲気だ。
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