第27話 救出作戦
ルーラーさんから呼び出される。
「救出作戦を決行することになった」
「あれから結構経ってますね、まだ終わってなかったんですね」
「調べたら様々なことが発覚したんだ。詳しく話す」
俺が調査してからかなりの時間がかかった。もう終わっていてただ俺に声がかからなかっただけだと思っていた。秘密裏に準備をしてすぐにでも救出部隊を出せる状態にしていたにも関わらずだ。それは何故か、答えは簡単。
「もう一つ魔人砦が見つかった」
俺の情報と砦を見張る者からの情報から、あきらかに人数が少ないことがわかった。約半数ほどがいない、では彼らはどこへ? 魔人は意外と奴隷を大事にする。無闇に殺す可能性は少ない。なら魔人本国へ? 当時はその可能性が高いと考えられていた。そうなると彼らの救出は不可能、諦めて救出作戦の準備を進めていた。
「悪徒の街、行方不明者の件で進展があった」
悪徒の街付近、森の中で作業をしていた冒険者が悪徒の街から出てくる参加者を見かける。彼は悪徒の街に詳しかった。トボトボと帰る様子を見て敗者だろうということに気がつく。しばらく歩いていると、馬車が敗者の男に近づいていく。馬車が止まると中から悪徒の街運営職員の服を着た男性が現れ、敗者の男と話し馬車に迎え入れそのまま走り去っていった。このときに違和感を覚える。参加者に送り迎えはないはず。そもそも走っていく方向が変だ、そっちに街はない。決定的だったのが馬車。オンボロで、人さらいが走らせていたのを見かけたことがあった。こうして馬車を追跡することに。彼は高レベルで斥候が出来る、そして馬車が到着した先には。
「ほぼ完成した魔人の砦があった」
見た目は完成している。稀に奴隷が見え隠れする。ここも人間領から近い。救出作戦は一旦中止し、こちらの砦の情報を収集することに。結果、悪徒の街の約半数がこちらにいることがわかった。今まで見つからなかったのはもうじき完成だからこれ以上の人員が不要だったから人の流れがなかったため。今回の奴隷の追加、追跡できる冒険者、たまたま敗者を見かけた等偶然が重なり砦が発見された。
「もう一つの砦の詳しい情報がわかった」
完成後、奴隷をもう一つの砦に移動。そちらも完成したら国を襲う計画が立てられていた。こうして魔人が砦に集められる、その数200。魔獣も多数連れて行く。砦には魔獣を置く場所があった。世界の魔人の総数はわからないがかなりの数が集められているのはわかる。全面戦争になりそうだ。魔人に対抗するため、水面下でこちらも砦を作ることを計画する。近くにそのまま作ると計画が相手に伝わり先手を打たれる可能性がある。そこで国側は新規の村を作るふりをしながら、砦を作るための物資を村へ搬入。決戦直前で一気に仕上げる予定。
「今回も悪いがやってもらいたいことがあってな」
攻め込む前に宴を開くという。主に人殺しのショーを。奴隷を少し残し彼らをショーの主役にするようだ。俺の仕事はそのショーに出演すること。始まる前に救出部隊により人間達を救出する。同時に俺も潜入、俺と演者以外は砦から脱出。ある程度時間を稼いだら演者を助け逃げてくれとの話。そのくらいならやれそうかな、わかりましたと返答する。作戦書を見せてもらう。日時、時間、場所まで事細かに記されている。
「それにしてもこんな細かいところまでよくわかりましたね」
「国も本気だということだ。今回は国が滅ぶ可能性すらある。切り札を切ってきたんだろう」
ふむ、とんでもない組織、もしくは人物がいるってことだな。同時にもう一つの砦も救出作戦を行う。こちらは数が多く人を逃がすために時間がかかるからもしかしたら戦闘に間に合うかもしれない。よかったら応援に行ってあげてくれとルーラーさん。あの強化魔人は強敵だろう、こちらが終わったら行ってみるか。
「頼んだぞ」
五日後、救出作戦当日、俺は砦へ移動。見えてきた、現在大急ぎで建設中。作戦が始まる頃には完成しているだろう。国の騎士団、冒険者達が多数集結。これから戦争だ、現場はピリピリとした雰囲気に包まれている。砦が完成、戦士達は持ち場につく。そして俺は魔人砦に向かう。
「大変な役割だな、しっかり頼むよ」
「大丈夫です、逃げ足には自信があるんですよ」
救出部隊の人と会話。総勢三〇人。砦が見えてきた、森の中にあるから接近しやすい。時間を確認、作戦開始。
(いくぞ!)
砦に忍び寄る。中からは魔人達の声が聞こえる。予定通りなら今頃内部の闘技場観客席で盛り上がっているわけだ。砦に潜入成功。奴隷にされた人達は二箇所にわけられている。救出部隊を二手に分けた。砦内部には魔人は居ない、皆ショーへ行ったのだろう。おかげで作戦はスムーズに進む。そしてショー参加者奴隷控室へ、中には血の気を失った人達が多数いた。
(さあこちらへ!)
奴隷達を逃がしていく。
「おい奴隷共、まずは生贄をひとり出すんだ。じっくり話すと良い。どうせ皆死ぬがな、はーっはっは!」
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