第26話 美味い
レベルが上がりそろそろ狩り場の変更をと資料室へ行き魔獣を調べる。
「ちょっとこれ見て、肉が美味の魔獣だって」
次回狙う魔獣の中に非常に美味しい魔獣がいるようだ。その肉質は霜降り、臭みがなくとろけるような肉だとか。戦う前からよだれが。旨い肉か、食べてみたい。名前はスマイルビースト。他の魔獣も調べ、依頼掲示板へ。探すがスマイルビーストの依頼はなさそう。どの魔獣も何枚かは貼ってあるものだけど。隣りにいたベテラン冒険者に聞く。
「ああ、かなり数が減っちまってな。今では出会っただけでも運が良い魔獣よ。だから依頼されることはなくなった」
それほど美味しいという。人間の食への執念は凄まじいものがある、ほぼ絶滅まで追い込んでるからな。全魔獣が美味かったら世界は平和になっていたかも。狩るのは難しいか、食べてみたかったな。
「はは、スマイルビーストは難しいが特殊で美味い食い物が重なっている時期ではある。よーしとっておきの情報をやろう」
テーブルにつきアドバイスを貰う。今までやってこなかった採集、見た目が特徴的な木から酒の実という特殊な食材が取れる。他にも貝やカニといった食材があるという。儲からないから休暇がてらに狙うのはありだとか。効率良く回れるルートも教えてもらう。食欲には勝てなかった、早速翌日からチャレンジ。採集の依頼を受け街から出る。まずは森に入り酒の実を探す。採集場所近くまで来るとお酒の匂いがしてきた。何人か冒険者がいるが、皆ほろ酔い状態だ。朝から飲むなんて余程好きなんだな。
「俺達いつからいる?」
「三日前から飲んでたような」
健康には気をつけてね! 奥に進むと教えてもらった珍しい模様の木を発見、枝の先端に大きな木の実が成っていた。見つけた、酒の実だ。見た目はメロンのような形。採集しようと近づく、いい匂いだ、すぐにでも飲みたいが後回し。実を取り道具袋へ。いくつか取って次の食材へ。今度はチーズの味がするどんぐり、熟成どんぐり。細菌により実が分解されチーズになるそうだ。お酒と非常に相性がいい、ベテラン冒険者さんいいところをついてくる。湖に行き貝、カニ、エビをゲット。他食材も入手して回っていると見覚えがある魔獣が遠くに。
「いた!」
まさかのスマイルビーストとの遭遇。食の魔力に取り憑かれた俺達にあっという間に狩られる。運が良かったな。
「やったー!」
皆とハイタッチをする。依頼分をギルドに渡し、残った分を持ち帰って食べる。リーナの家にお邪魔して料理を作ってもらう。すでに昨日了承を取ってあった。
「息子の件もあるから腕を振るうよ!」
俺が薬草を持ってきたわけではなかったが途中まではお願いしてたからとはりきっているリーナのお母さん。弟はもう元気そうだ。サシャとリーナは調理場へ。いい匂いがこちらに流れてくる。まずは酒とチーズが出される。
「うまい」
熟成された酒、同じく熟成されたチーズ。口の中で絡み合いさらなる高みへといざなう。店にもあったな、高級食材でものすごく高かった。今度は貝の酒蒸し、エビのスープ。どれも酒に合う。そしてカニ鍋が出された後、いよいよ本命の料理が。
「スマイルビーストのステーキだよ」
せっかくだからと皆揃って食べることに。匂いから良い、いただきます!
「うまー!」
口の中で一瞬にして溶ける肉、肉汁が弾け、口の中は洪水に。あっという間に完食。その後も食べて飲んで、いつの間にか寝ていた。あたた、二日酔いだ、飲みすぎた。二日酔いに効くというスープを作ってくれた。いやあ最高の晩餐だった。また今度開くのもありだな。
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