第25話 アスレチック

依頼掲示板の前に立ち依頼を見ながらどれを受けようか相談中。おっと、ギルド職員の人が張り紙を貼りたそうだな、よけておこう。


「ごめんなさいね」


掲示板に依頼紙を貼る、中には赤色の依頼紙があった。赤い紙は緊急の依頼、他の依頼よりも報酬が良い傾向がある。緊急の依頼はできるだけ高レベル、自信のある者に任せたほうがいい、失敗できないからだ。今の俺達は受けない方がいい、ということで見ずにスルー。依頼紙をいくつか剥ぎ取り狩りへ。こうして一日が終わる。それから3日経過。


「ふあーあ」


あくびをしながら宿屋の食堂のテーブルに付く。


「リーナに渡しといてくれ」


女将さんから手紙を預かる。起きてきたリーナに手紙を渡した。


「これは……」


手紙を読むリーナ、様子がおかしい、何かあったのかな。


「悪いけどハジメ、ついてきて。弟が病にかかってしまって」


いつもは快活な性格の彼女だが元気がない。エルフの村に到着、リーナの家へ。


「よく来てくれた。実はお願いがあってな」


うなされながら苦しそうに眠っているリーナの弟。タチの悪い病にかかってしまい、その病気を治すには特殊な薬草が必要。薬草を入手するのが大変で、高レベルの自己強化できるクラスにしか攻略できない場所にあるという。


「試練の洞窟という場所なんだが」


誰かが作ったとしか思えないような作りの洞窟が存在、中はアスレチックのようになっている。依頼を出していたが丁度攻略できる者がおらず、このままでは病に冒され死んでしまうので、俺に薬草を取りに行ってもらいたいとの話だった。そうか、あの依頼はエリックさんが出したものだったのか。ちらりとでも見ておけばよかったな。


「お願いハジメ」

「もちろん受けますよ」

「ありがとう。君なら大丈夫だろうが一応試験を」


今回入る試練の洞窟、第一の試練は攻略法がすでにある。その情報通り動けば攻略は可能。しかし必要とする能力値が非常に高いため攻略できる人間はかなり限られる。格闘家、付与術士のスキルを使える俺なら攻略可能。場所を移動、湖へ。


「まずは泳ぎを見せてもらう」


最初の関門は魔獣が襲ってくる湖。ある程度の速さなら追いつかれることなくクリアできる。トーラルライズを使い大男に変身。エリックさんが大きく口を開け驚いている、そういえば見せるのは初めてだな。すでに俺の力は魔人戦で知っているから見せても問題はない。湖に入り泳ぐ。


「うおお!」


バタ足で水柱を上げながら高速で泳ぐ俺。一瞬で対岸に到着。


「ご、合格」


帰りは水の上を走って帰ってきた。


「そっちでもいいよ」

「相変わらずで無茶苦茶な力だな」


次は逆針山。天井から針のように金属の棒が突き出ていて、そこに滑る液体が流れている。下は底なしの穴、棒を握りなが進まなくてはならない。かなりの握力が必要。実践に近いものを用意するエリックさん、鉄の棒に油を塗っている。これも問題なくクリア。三つ目は大玉押し。坂になっているところで大きな金属の玉を押す。最後までたどり着くと右側に扉が見える、そこへ入ればクリア。これも難なく攻略。残り二つの試練も無事クリア、よし、これならいけそうだ。細かい情報を聞いているとエリックさんの部下が慌てた様子でこちらへ。


「薬草が手に入りました!」

「ええっ!?」


家に戻ると小包に入った薬草が届いていた。煎じて飲ませると途端に顔色が良くなる、効いたようだ。


「それにしても誰が」

「それが匿名希望の方が攻略したようで」


情報屋が薬草を持ってきたそう。守秘義務ということで誰かは教えてもらえなかった。最も知らないがなと言っていたようだが。力を持っていることを知られたくない人だろうとエリックさん。確かに目立って有名になると動きづらくなるからね。それにしてもまだ見ぬ強者がいるということだな。


「そうだな、せっかくだから試練を攻略してみてはどうだ」


ふむ、覚えたことだし、やってみるか。試練の洞窟へ。中に入ると天井に生えている光る苔が辺りを照らしていた。暗闇の洞窟でもしっかり見える。試練は簡単に攻略、ゴールに辿り着く。この場には届けられた薬草が生えていた。さて、力試しが終わったことだし帰るか。ここから出るには激流のウォータースライダーに乗るだけ。一気に滑って外へ。こいつは楽しいな。崖から排出され、湖に落下。エルフの村に帰り報告。家にはガウスさんが来ていた。


「第二の試練までは攻略法が存在する。また余裕があるときにやってみるといい」


第三以降もあるようだがそこから先は誰も攻略した者がいない前人未到の地とされる。もしくはクリアしたが戻ってこれないとか。一、二のように出口があるとは限らないからな。


「アイツは結局帰ってこなかったのぉ」


その昔、ガウスさんの仲間が第三試練に挑み、以降連絡が取れなくなった。死んだかと言うガウスさんはどこか寂しそうだった。

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