第24話 盗賊

盗み出したことが確定、話しぶりから彼らは盗賊のようだ。隠れながら彼らの会話を聞く、数年前から計画していたと話を。一般人の感覚だと働けるならそのまま仕事をしていた方が良かったのではと心のなかで思わず突っ込む。まあ犯罪者の考えることはよくわからない。それよりも見過ごせないな。奴らが眠るのを待ち魔装を取り返し、盗賊達を捕らえるとしよう。


「飲むぜー!!」


酒盛りを始める盗賊達、好都合だ、判断が鈍る。外からわかるのは二階建てということくらい。普通の民家にしては大きい。昔宿屋だったとか。夜が更け、盗賊達もお休みの時間。


「さらった女には手を出すんじゃねえぞ」

「わかりましたカシラ」


人さらいまでしていたのか。仕事が増えたな。見張りを残し眠りにつく盗賊。さて、どうやって侵入しようか。ん?


「ぐごー」


見張りを任された盗賊はすぐに夢の世界へ。酒を飲みすぎたか。手間が省けて助かる。顔に布を巻き準備万端。音を立てないように歩き、建物の中へ。慣れたものだな、経験が生きている。もしかしたらコイツラよりうまく盗めるんじゃないか? 盗賊やる気はないけど。部屋が多数ある、どの部屋も扉がない。壊れたのか逃げやすいように壊したのかはわからないが、こちらとしては中を確認したいから好都合だ。一部屋ずつ中を見ていく。空き部屋が多い。調べていくと盗賊が寝ている部屋を発見、いくつかの部屋は盗賊が寝ている、贅沢に一人一部屋か。今のところ五人。一階は残すところ一部屋と倉庫。部屋を捜索するとそこには三人の女性が。どうやって逃がすかを考えながら倉庫を調べる。


(あった)


魔装を積んだ荷車が置かれていた。倉庫には大扉があり、そこから出ると見張りに見つかってしまう。しかし彼は今眠っている、チャンスだ。三人を助け出し、荷車の上に乗せ布を被せる。仲間が助けに来るけど驚かないでくれと話す。あの姿を見たら大声を出してしまいそうだからな。扉を開け、外に出て変身、再度中に入る。荷車を持ち上げ外に脱出、扉を閉めて廃屋から逃げ出した。ここからならガウスさんの家が近い、森を駆け抜け家に到着。


「何事じゃ、ふわーあ、ってんえっ!?」


ガウスさんが家から出てきて俺の姿を見て一瞬驚くがすぐ気がついてくれた。まったく心臓に悪いわいと怒られてしまった。説明し彼女達をお願いする。


「わかった、任せておけ」


盗賊のアジトに戻る、気が付かれてないな、再度侵入。念の為さらわれた女性がもういないか確認。部屋が暗くて見づらかったから見逃しの可能性があった。


「お頭はあー言ってたけど我慢できるわけ無いだろ。しかし暗くて見えねえ、ここか?」

「んー!」

「筋肉質だな、へへ、いいじゃねえか」

「んふ」

(何だ、自分から抱きついてきた、好き者だなお前。俺の身体をすっぽり包むなんてでかいな、声が出せねえ。ちょ、ちょっと、力が強い、ほぎゅっ!)


力を入れ抱きしめる、骨が軋む音とカエルが潰れたような声が聞こえた。男は失神し床に転がる。びっくりした、急に入ってくるなよ。それにお頭からは手を出すなと言われていただろ。この部屋は閉じ込めるのに適している。男を縛り上げ部屋に置いておく。次は二階を調べよう。一階と比べると部屋が少ない、いるのは盗賊の頭だけだった。よーし、全員ふん縛るか。まずは一階の盗賊の部屋へ。寝ている盗賊に当身。更に深い眠りへ。あっ、ちょっと強かったかな、まあ死んでなければいいか。縛って先程の部屋に放り込む。見張りも更に深い眠りにいざない確保。あとはお頭だけ。部屋に入ると罠が作動、槍が俺に襲いかかってきた。音がしたため盗賊の頭は目を覚ます。


「侵入者か? だ、誰だテメエは!?」


当然槍は効かない。しかし罠か、用心深いな。こういったものを見抜く力を身に着けていかないと。まあ今回はこのまま力押しで終わりにしてしまうが。


「ひ、ひぃっ、近づくんじゃねえ!」


弓で応戦、矢が身体に当たるがただ弾かれるだけ。近づき怯える男の顔を掴むと、体ごと壁に叩きつけた。壁を突き抜けてすっ飛んでいく男。


「んがが」


そのまま失神。こうして盗賊達を全員倒した。起き上がって逃げられても困るから外から大岩を拾ってきて部屋を封じる。ガウスさんには知り合いが助けた、もう街から離れたということで話を合わせてもらう。翌日、事件が発覚する前に解決したことをガウスさんに告げてもらう。その夜、ルーラーさんのところへ。


「聞いたぞ、お疲れさん」


ガウスさんから聞いたようだ。店と国から感謝状といくらかの金銭を頂いたとのこと。お金は全部俺に、届いたらルーラーさんに預けるという話になっていた。それから欲しい魔装を伝える。


「赤熱の剣をお願いします」

「わかった、偽装してそちらに送ろう」


五日後、宿屋に剣が届く。見た目は鋼の剣、中身は魔剣。赤熱の剣の実際の能力は本体が鋼の剣並、魔法効果で総合力は魔銀の剣と同等。サシャのレアスキルをいれると魔銀以上。しばらく使っていける武器だ。他装備も全て青銅シリーズに変更。買い物を終え外に出て試し切り。サシャが赤熱の剣を抜く。熱を発生しているのがわかる。


「やあっ!」


今まで一撃で倒せなかった魔獣を一刀両断、即死だ。スライムも倒せるようになった。一気にサシャが強くなったな、攻撃力だけなら中級冒険者並。仲間の成長は嬉しいね。

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