第23話 魔剣! 赤熱の剣

久しぶりに二人とPTを組み狩りをする。最近は彼女達から離れて活動することが多かった。


「忙しかったね、体調はどう?」

「この食べ物滋養強壮に効くんだって」


くー、心配してくれる人がいる幸せ。彼女達を大切にしないとね。内容がハードだったのもあるけど、一人活動は結構精神にきた。そのお陰で大金が手に入った。何に使おうかな、そうだ、ルーラーさんなら良い金の使い道を知っているだろう。現在お金はルーラーさんが管理している。新人冒険者が大金を持ち歩いたり、預かり所に大金を置いておくと狙われることがあるとか。お金預ける所でも信用できないことがあるのは怖い。今日一日の予定を終えルーラーさんがいつもいるお店へ向かう。店員さんが確認後部屋に通してくれた。


「どうした、用事か」

「お金の使い道を相談したくて」


そうだなとゆっくりお酒を飲みながら考えるルーラーさん。


「魔装なんかいいんじゃないか」


魔装の値段はピンキリ。一番安いものなら買える。それでも一般的な装備と比べると異常に高い。それから魔装を持っていると狙われないか心配する俺。


「そのままだとな。偽装して使うんだ」


鞘はもちろん、剣身以外を一般的な武器と同じ物に変えてしまう。剣身は塗装して使う。そこまですることで目をつけられなくなるとか。金持ちや貴族の子供の冒険者がよくやる方法。魔装か、ガウスさんの立ち回りを思い出す、格好良かったな、いいかも。魔剣を買えばレアスキルもあることだしサシャが一気にパワーアップする。魔剣を買っちゃおう! そうなると品物を見ておきたい。置いてある店を探すとするか。そのくらいならルーラーさんの力を借りるまでもないな。


「実物を見てきます」

「欲しい物が見つかったら言ってくれ。俺が買って渡そう」

「助かります」


宿に戻り、一夜明けお金の使い方を相談。ルーラーさんのアドバイスを話すとサシャが食いついた。


「魔剣欲しい!」

「いいんじゃないかな」


興奮気味に話すサシャ、リーナも納得。魔剣を買うことが決定した。ということで朝から店探し、三人別れて魔剣を置いてある店を探す。昼になり一旦料理店に集合、途中経過を発表する。


「今のところなし」

「こちらも」


魔剣を見学できる場所の捜索は想像以上に大変だった。半日経過したが一つも見つからない。二人も同じく成果なし。食後捜索再開するもやはりみつからない。もう駄目かと夕方ごろ諦めかけていたときに入った店は、魔剣を見ることが可能な店だった。慌ただしく片付けをしている。今日はもうじき店仕舞いということで明日改めて店へ。


「楽しみだなー」


嬉しそうに話すサシャ。次の日店へ。見学可能な店はかなり大きな店、武装した強そうな警備員がいる。店に入り魔装のコーナーへ。なかなか見ることができないからか、お客さんが多数いる。俺達くらいの初級冒険者達が多い。皆目を輝かせながら見学している。そうだな、三人が一日中探してここだけだったからな。魔装を見てこれを目標に頑張るぞと仲間内で盛り上がり士気も上がる。置いてある魔装は一番安いと言われている魔装達。炎や氷といった弱めの魔法効果がついている。剣や斧など武器の種類は一通り、防具、装飾品もかなりの数の魔装を置いてある。これだけの数があると盗難は怖いだろうな。警備員はかなりの数いる。俺達は魔剣が置いてある場所へ。


「鎖より中へは入らないようお願いします」


興奮気味の冒険者が身を乗り出し注意されていた。入れないように立入禁止チェーンがあり、ガラスケースに飾られている剣達。いくつか見たところで一つの剣がサシャの目にとまる。


「赤熱の剣か」


黒い鞘に黒い剣身、熱を発する剣。炎の魔法効果が得られ、更にスライム等物理に強い魔獣を倒すことが出来る。じっとこの剣を見つめるサシャ。気に入ったようだ。買うのは赤熱の剣に決定かな。ルーラーさんに話して購入の流れ。その後はウインドウショッピングを楽しみ、そのまま三人でのんびり過ごした。


「いってくる」


夜に店へ向かう。大通りから近道になる小道へ。剣探しのおかげもあり、この地区の道はかなり詳しくなった。思わぬ副産物というやつ。小道にある隠れ家的な飲み屋って風情があっていいんだよね。ハズレも多いけど。そういえばこの道は昼間通ったな、この先に魔装を置いている武器屋がある。大きい店だけど小道沿いにあるんだよね。今の時間人通りがまるで無い。店が見えてきた、あれ、もう閉店しているはずだけど明かりがついている。人がいる、昼間見た警備員さん達だ。魔装を運び出している。そうか、商品の移動か。それにしても、こそこそしている、あれではまるで盗み出しているかのようだ。


「くふふ、これで俺達は」

「おしゃべりは後だ」


胸騒ぎを覚える、まさかね、とっさに身を隠す。こちらに気づいた様子はない、荷車に魔装を乗せ店の明かりを消し移動を開始。俺も彼らの後をつける。商品の移動なら問題はない、見届けてそのままルーラーさんのところへ行くだけだ。周りを気にしながら明かりもつけずに街から出ていく冒険者達、怪しくなってきた。森に入り、しばらく進むと大きな建物が見えてきた。痛みが激しい、本来は捨てられた廃屋だろう。


「お頭、魔装かっぱらってきましたぜ」

「よくやった、これで俺達は大金持ちだ」

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