第20話 いでよ! 最強生物!

「ハジメ、ちょっといいか」


話があるとガウスさんから声をかけられ家の中へ。


「召喚士イデオを知っておるか? あやつから招待状来ての、悪いが付き合ってもらえんか」


イデオさん、確かお金持ちの。招待状には夢が叶い皆さんをご招待したいといった内容が書かれていた。美味しいものがたくさん食べられそうだな。あれ、でもケチな性格だった気が。


「うむ、それもあって実は黒い噂があるんじゃ。それで念の為にお主に護衛を頼みたいわけじゃよ」


よくない話が出てきているという。それは何故か、今までパーティなど開いたことがなかったからだ。おかけで様々な憶測を生んでいる。中には世界を滅ぼすなんておかしなことを言う人もいるとか。まあケチで付き合いとかしてこなかったわけだけど流石にひどい。


「どれくらいの規模なんですかね」

「かなりの人を誘ったが多数に相手にされなかったようじゃ」


ガウスさん以外にも多数の人を招待したようだ。なんとこの国の王様まで。急な招待なのと、特に付き合いがない人だからとほとんどの人は招待を断ったようだ。ガウスさんは悪い噂が万が一にも当たってしまった場合動くために行く。大丈夫だとは思うけど。


「服が欲しいか」


パーティ用の服は持っていない。当日サシャが服屋へ連れていってくれた。今回は服をレンタルする。今後欲しくなるからとオーダーメイドのお店へ。そういえばサシャとリーナはドレスを持っていると言っていたな。俺も欲しかった、ありがたい。


「いらっしゃいませ」


服のことは全くわからない。お店の人にお任せしよう。採寸をしてあとは制作。レンタルの服を着て、サシャと別れ馬車乗り場で馬車に乗り、ガウスさんを迎えに行く。ガウスさんが乗り、パーティの会場へ。イデオさんは大きな家を持っていない。場所を借りてのパーティのようだ。普段は小さな家に暮らしているそう。徹底してるな。会場に到着、建物の中へ入る。


「ガウス様、ハジメ様ですね。こちらへ」


白いテーブルクロスに円形のテーブル、上に俺達二人の名前。座って主役を待つ。聞いていたとおり人は少ない。しかし皆さん高級そうなお召し物を身にまとっている。いずれも身分が高いか強い冒険者かといった人達だ。


「おまたせしました皆さん、イデオ様のご登場です」


司会が合図すると暗幕が上がる。イデオさんが中央ステージ、贅を凝らした椅子に座っている。彼の両サイドには豪華な刺繍が施された布をかけた何かがある。この二つが見せたいものなのだろうか。いつもと違いお金をかけているのがわかる。夢がかなったというくらいだ、余程の物なんだろうな。グラスを片手に椅子から立ち上がる。


「突然の招待にもかかわらず集まっていただいた皆さん、誠にありがとうございます。まずは乾杯しましょう」


乾杯し酒を飲む。美味しい、これは高い酒だな。


「遠慮せず料理を楽しみながらお聞きください」


料理が運ばれてくる。普段は食べられないような豪華な料理。遠慮なく食べる。うまい。やっぱり高かろううまかろうだよね。持ち帰ってサシャとリーナにも食べさせてあげたいくらいだ。


「ではイデオ様のここまでの経緯を」


彼の過去から現在までのことが語られる。召喚術士を引退後、起業して金をため続けたイデオさん。そしてその目的とは。


「私はレアスキルを持ってまして。その能力は「なんでも召喚」。文字通りなんでも召喚できるとてつもないものなんです」

「ではみなさん、素晴らしいものをお見せしますよ」


舞台左側の布が取り払われる。まばゆいばかりの黄金が山のように積み重ねられている。客席から思わず声が上がる。すげー、あんな量の金始めて見た。よく見ると下に記号のようなものが描かれているな。ゲームでよく見る召喚陣ってやつか。


「黄金を代償に何でも召喚できます。そして私の目的は世界を滅ぼすことです」

「イデオ様!?」


唐突にとんでもないことを言い出すイデオさん。打ち合わせにないといったの様子の司会者。構わず話を続ける。


「始まりは裏切りからだった」


己に起きた過去を語り出す。裏切られたのかな、悲しい過去があったのかなと思って聞いていたがどうもそうではない。彼の行動が原因でそうなってしまった、いわゆる自業自得というやつ。そういった内容をいくつか話すイデオ。この人は危険な人だ。


「私は世界に対し復讐をしようと考えた。そしてその答えが魔神王だ」


魔神王、魔人達が崇める神。世界を滅ぼす力があるとか。一説には世界でも最強の存在とされる。どうやら本当に世界を滅ぼそうと考えているようだ。まさか当てた人がいるなんてな。嬉しくない、誰も得をしない当たりだけど。


「くくく、世界よ滅びたまえ! いでよ、魔神王!」


召喚が始まる。現場は悲鳴と叫び声が飛び交う。驚き戸惑いながら逃げる人たち。戦える者はその場に残る。従業員が危険を察知し、預けてあった武器や防具を持ってきてくれた。実際魔神王が召喚されてしまったらこの国が、いや世界が滅ぶかもしれない。冷や汗が背中を伝う。そして黄金が消え、代わりに煙が発生。徐々に晴れ召喚陣についに魔神王が!


「骨?」

「頭か」


そこには大きな頭の骨が。当然動かない。スケルトンとかそういったたぐいではないようだ。召喚失敗? 皆相当身構えていた。そうして出た物は頭の骨。気が抜け驚かすなよと笑い声が起こる。


「ぬぬぬ、バカにしおって! もしもの場合のためにもう一つ用意したのよ」


右側の布が取り払われる。そこには先程よりも多い黄金が積まれていた。


「いでよ! 世界最強の者よ!」


世界最強、この召喚もどうなるかわからない。魔神王よりも危険な生物が現れる可能性がある。今回は凄まじい量の煙があたりに立ち込める。俺まで煙に飲み込まれた。今回は本当にヤバそうだ、一体どうなってしまうんだ。煙が晴れてくる。周りが見えるようになってきた。世界を滅ぼす者が召喚陣に!


「あれ?」

「少年が召喚されただけだと?」


召喚陣の場所に俺が立っている。うーん、スキル的に強いが最強なのかな? 客席から笑い声が起こる。力なくその場に崩れ落ちるイデオ。そしてこちらを睨んでいる。怖い。


「だーっはっは、あの子が最強だとよ!」

(あながち間違いとは言えんのぉ)

「お騒がせなやつだ」


駆けつけた兵に取り押さえられるイデオ。俺達は軽く事情聴取の後、帰された。馬車に乗り帰り道、先程の召喚を思い出していた。魔神王がすでに死んでいるとしたら、失敗召喚ではないかも。過去すでに退治されているとか。ガウスさんの話だと魔神王は過去何処かに封印されたとのこと。そのまま信じれば生きている魔神王が現ることになる。うーん、わからん。イデオは世間を騒がせたとして牢獄に放り込まれた。


「なめおって、この世界の住人ども、そしてあのガキ」

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